ラクロス

この春の苦境を乗り越え、慶應女子ラクロスは再び輝けるか

早稲田に負けたあと、涙をこらえながら慶應サイドの観客席にあいさつする荒井主将

早慶戦 大学戦女子(第27回定期戦)

5月19日@慶應義塾大学日吉陸上競技場
慶應義塾大 3-5 早稲田大
(早大の6勝20敗1分)

今年で27回目を迎えたラクロスの早慶戦。大学戦女子は、3連勝を狙った慶應が早稲田に屈した。早稲田サイドが歓喜に沸いたのに対し、慶應の選手たちはがっくり。主将の荒井理沙(4年、慶應女子)は涙をこらえ、声を震わせながら、応援してくれた人たちへあいさつした。

ルール変更で試行錯誤

慶應は第1クオーター(Q)の6分、溝口友梨奈(3年、慶應女子)のシュートで先制。その直後にもチャンスをつくり、立ち上がりはよかった。しかし11分、早稲田の山邊七菜子(2年、日本女子)にフリーシュートを決められ、同点。第2Qには2点を失い、1-3で前半を終えた。

第3Qの7分、慶應は日野美咲(3年、慶應女子)のゴールで1点差に詰めたが、第4Qに入ると早々に失点し、2-4。井上ゆり子(3年、慶應湘南藤沢)の得点で再び追い上げたが、終盤に再び2点差にされた。敗戦後、大久保宣浩ヘッドコーチ(HC)は渋い表情で言った。「技術的にまだもろいところが課題です。そこにちゃんと向き合わないと、チーム力は上がっていかない。結果がついてこない要因は技術不足です」

秋の関東リーグ戦で2連覇中の慶應だが、この春の足取りは決して順調ではない。その要因の一つが今年1月から施行された新ルールだ。昨年までの慶應は中盤のディフェンスを強みとしてきた。だが今シーズンより、女子のラクロスは12人制から10人制に変更。戦略を変えざる得なくなり、慶應のストロングポイントが生かせなくなった。今春の六大学リーグでも早稲田に6-7で破れていた。リベンジはならなかった。

早稲田の堅守の前に、慶應が攻め手を欠くシーンもあった

チームの新たなよりどころをどこに見出すべきか、主将の荒井の心は晴れない。「いろいろ考えて実戦で試してはいるんですけど、それが一番いいのかどうかは分からないし、早慶戦でも『これで攻めよう』って思った攻撃が結局、得点につながらなかった。そこはしっかり受け止めなきゃいけないです」

慶應女子高校でもラクロス部に入っていた荒井は、慶大のラクロスにあこがれがあり、入部を決めた。昨年は副将を務め、大学ラストイヤーとなる今年から主将になった。だが戦いの方向性を見出せず、チームとしての自信をつかめない現状に、不安だけがつのる。「もっとみんなが楽しめるラクロスをしたいのに……」。荒井の言葉からは、なかなか理想に近づけない無念が伝わってきた。

常勝軍団との意識が、着実な一歩をかき消した

荒井が入部してから、慶應は常勝軍団であり続けた。それゆえ新チームになって初の公式戦だった六大学リーグでも、負けられない思いが強かった。反面その意識に引っ張られてしまい、チーム力を見定めきれなかった。「六大戦はルール変更に伴っていろいろ試して、できるところ、できないところをはっきり区別したかったんですけど、勝ち続けてきた慶應っていう意識もあって、やりたいことができなかったんです。今後の練習試合ではしっかり、できるところ、できないところを区別しないと」。荒井は自分に言い聞かせるように話した。

慶應を再び常勝軍団にするため、主将の荒井(中央)はチームを奮い立たせる

大久保HCが指摘する技術不足についても責任を感じている。AT(アタッカー)である荒井の特徴は、シュートやドリブルで得点に絡めるところ。その持ち味を早慶戦では十分に発揮できなかった。個の技術を高めつつ、チーム力も引き上げる道のりは険しいまま。「私の力不足です」。浮かない表情でそう言った新井だが、このままでは終わらない、との思いも強い。

「いまは成功体験がなくて自信を失ってるという状況です。それでも常に上を目指していく姿勢を見せなきゃいけないし、私が一番自信を失っちゃいけない。そこはちゃんとしようと思ってます。そのためにも自分が一番練習しなくちゃいけないし、どんなときも、自分が勝ちに導けた、と言えるくらいの選手にならなきゃとは思ってます」

ラストイヤーで「絶対に日本一はとりたい」

大学ラストイヤーでの目標を荒井に尋ねると、即座に「いい結果を出して終わりたいです」という返事が戻ってきた。昨年はかなわなかった日本一。これを実現することが自分の役目だと、荒井自身は思っている。

アタッカーとして主将として、荒井(中央、18番)はチームを引っ張れる存在を目指す

「絶対に日本一はとりたいです。でもまだ全然技術が足りない。とにかく練習です。ルール変更を悪く思うんじゃなくて、それをうまく自分たちのものにして勝利を積み重ねていけたらいいなって思ってます。それで日本一をとれたらベストなんですけど、そのためには個々が練習しなくちゃいけないです」

早慶戦での悔しさを糧に、再び歩を前に進める慶大女子ラクロス部。そこには誰よりも責任感に満ちた、キャプテン荒井の姿がある。

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