関東インカレ10000m競歩 東洋大勢7連覇を決めた池田向希「悔しさしかない」
関東インカレの10000m競歩は「競歩王国」の東洋大勢が昨年まで6連覇していた。今回は今秋のドーハ世界選手権20km競歩代表の池田向希(こうき、3年、浜松日体)が早々に先頭に立ち、1度も首位を譲ることなくゴール。東洋大勢の連覇を7に伸ばした。しかし、池田の表情は晴れなかった。「ほかの選手に申し訳ない気持ちで、悔しさしか残ってません」
ライバルは続々と失格、ひとり旅でタイム伸びず
池田は自身の2連覇はもちろん、38分40秒の自己ベスト更新、それも38分台前半を狙っていた。普段の練習では酒井俊幸監督、そして元競歩選手で酒井監督の妻である瑞穂コーチから指導を受けている。池田は自分の中で歩きの感覚がよくなっているのを実感し、いい状態で関東インカレのスタートラインに立てた。
レースは池田を先頭に、東洋大同期の川野将虎(御殿場南)と古賀友太(明治大2年、大牟田)の3人が飛び出した。2000m付近で古賀が失格となり、池田と川野の優勝争いになった。3000~4000mは予定通りのペースを刻んだ。池田自身、後半の歩きを課題にして臨んだにも関わらず、5000mからどんどんペースが落ち、苦しげな表情に変わった。池田の後ろを歩いていた川野も失格となった。池田はひとり、ゴールを目指した。終わってみれば、39分18秒03の優勝タイムは池田の目標より1分近く遅かった。
世界選手権へ向けてやり直し
「今日のようなレースでは絶対に世界では通用しないと思うので、世界選手権に向けてもう1度やり直すだけです」。レースを終えた池田の口から厳しい言葉が飛び出した。池田は今年2月の日本選手権20km競歩でトップと1秒差で2位、さらに3月の全日本競歩能美大会20kmでも、1秒差で川野に敗れていた。その経験があったからこそ、関東インカレでは思い描いた通りの優勝をつかみたかったのだろう。
池田は今シーズン、7月にイタリア・ナポリで開かれるユニバ―シアードと9月の世界選手権に照準を合わせている。ともに距離は20km。目指すのも、ともに金メダルだ。5月、6月は両大会に向けての暑さ対策や時差調整に取り組んでいる。「当日の状態が一番いい人が勝つと思うので、そこに至るまでの過程を大切にして、準備していこうと思ってます」
日々の大学での練習から切磋琢磨してきた川野の失格に対して意見を求められ、池田は言った。「川野は能美の20kmと輪島の50kmで学生記録を上回る記録を出して、疲労もある中、なんとか間に合わせてくれました。ギリギリの状態にも関わらず、合わせてくれたことに感謝をしてます。ブロック全体で課題も見つかったと思うので、もう1度、全体で取り組んでいきたいと思ってます」。東洋大の連覇記録が続いたことについては「それだけがよかった点ですね」と語った。
池田はこうも言った。「ここで悔しい思いをしたから6月は頑張れるな、と考えた方が得るものは大きいと思います。練習から勝つ気持ちでやっていきたいです」
最後まで険しい表情は崩さなかった。そこに池田の覚悟を見た。