陸上・駅伝

陸上の個人選手権、立命館・塩見綾乃が400mと800mの2冠

800mで優勝を決めた瞬間も、塩見の表情は冴えなかった

日本学生陸上競技個人選手権

6月7~9日@Shonan BMWスタジアム平塚
塩見綾乃(立命館大2年)
女子400m 1位 55秒41
女子800m 1位 2分6秒87

塩見綾乃(立命館大2年、京都文教)の名を広く知らしめたのは、5月11、12日にあった世界リレーだろう。今大会が初開催となった男女混合2×2×400mリレーにクレイ・アーロン竜波(相洋高3年)とペアで出場し、銅メダルをつかんだ。この個人選手権には6月27日からの日本選手権への調整の場として、400mと800mに出場。3日間で予選、準決勝、決勝とそれぞれ3レースずつ走りきり、2冠を達成した。それでも塩見の表情はさえなかった。

日本選手権のため、体に疲労を覚えさせる

レース前、塩見はどちらの種目でも優勝を最低ラインに定めていた。加えて昨年800mで2位だった日本選手権に向けた刺激として、体に疲労感を覚えさせる狙いもあったという。初日の6月7日は400mの予選と準決勝を走り、56秒02と55秒73でともに組の1着で通過。翌日午後2時50分からの決勝に進んだ。その8日は午後0時20分、800mの予選から始まった。2分12秒40で組の1着で準決勝へ進むと、400mの決勝へ。55秒41で優勝するとすぐに、気持ちを800mに切り替えた。5時55分にはこの日3本目のレースとなる800m準決勝に向かい、2分9秒09の1着で駆け抜けた。

最終日の8日は本命の800m決勝だけだったが、連日のレースで体に疲労を感じていたという。それでも日本選手権へ弾みがつくようなタイムを狙っていた。思い描いていたレースは、1周目で60秒を切って入るというものだった。しかし最初の200mは29秒、1周目は61秒。レースをリードしていた塩見自身も入りが遅れてしまったと感じ、そこからはいつも以上に意識してスピードを切り替えた。最後までトップを譲ることなくゴールしたが、記録は2分6秒87に終わった。

ラスト1周、塩見(先頭)はタイムを狙って巻き返しを意識した

塩見は今シーズン、5月3日の静岡国際と6日の木南記念でともに2分04秒00をたたき出し、いい滑り出しを見せた。国内トップレベルの選手が集結する日本選手権では、最低ラインを自己記録(2分2秒57)の更新と定め、日本記録(2分0秒45)と学生記録(2分0秒92秒)を意識した2分0秒台に近づける走りで優勝を狙っている。さらに今年は、日本選手権から1週間あまりで、イタリア・ナポリでのユニバーシアードが待っている。それでも塩見は「7月の中旬までは気持ちを切らさず、日本選手権の緊張感をもったまま臨めるのは逆にいいのかな」と、厳しいスケジュールも前向きにとらえている。

昨シーズンから世界大会への出場が増えた塩見は海外遠征や試合に対して、不安よりも楽しみの方が大きいという。「日本で抱えるようなプレッシャーはなくて、チャレンジャーとして海外の方々と競り合えるかどうか。その中で自分の力を出せたらベストかなと思いながら走れてます。最初は海外に行くことに緊張感がすごいあったんですけど、いまではだいぶ慣れてきて、海外の選手を相手にしてもひくことがなくなかったのは成長かなと思います。日本人と戦うのとは展開が違うでしょうし、タイムも出しやすいと思うし。チャンスをいただいたということは、それだけの期待に応えないといけないです」
ユニバーシアードでは確実にメダルを狙いにいく。

学生同士で戦い抜いた世界リレー

銅メダルを手にした世界リレーを振り返ってもらった。男女のペアが2回ずつ交互に400mを走るという初開催のリレーに戸惑いはなかったのか? 「日本開催だったので、すごく応援の声が大きくて、その応援に応える走りができたら一番いいのかなと思って挑みました」と塩見。ペアを組んだクレイは800mで1分47秒51の日本高校記録を持つ実力者。お互い学生であることをプラスにとらえ、「学生やし、二人で賞金持って帰ろうね」と言っては、モチベーションを高めたそうだ。

塩見は1、3走を担った。1走では男子2人と同走になり、8人中6位でバトンパス。2走のクレイが4位に上げると、3走では4位を死守し、アンカーのクレイが1人を抜いて銅メダルをつかんだ。タイムはトップと1秒44差の3分38秒36だった。塩見は「世界の方たちと同等に戦えて、そこでしっかり結果を残せたことはよかったです」と話した。手にした賞金は二人で分け、塩見は自分へのご褒美として「AirPods」を買ったという。

個人選手権で2冠達成にも、塩見は満足はしていない

大学2年生の塩見に大学4年間での目標を尋ねた。「まだよく見えてないんですけど」と前置きした上で、「来年の東京オリンピックに向けては今回の日本選手権が大事になる大会ですし、その次のユニバーシアードも関わってくるので、そこでしっかりいい結果を残したいです。今年は世界陸上もあるので、そのメンバーに選ばれるよう、今後の試合の1本ずつのレースでしっかりいい結果を残していきたいです」と、力強く語った。

ドーハで9月27日に開幕する世界選手権の女子800mの参加標準記録は2分0秒60だ。この標準記録突破の先には、日本記録の更新、さらに夢の1分台がある。まずは目前に迫った日本選手権に向けてスピード練習に取り組む。「あとはもう気持ちさえあれば。気持ちをそこにもっていければ合ってくると思うので、しっかり合わせていこうと思います」。前回、北村夢(日本体育大~エディオン)に敗れて逃した優勝を、今年こそこの手でつかみたい。

in Additionあわせて読みたい