水泳

特集:東京オリンピック・パラリンピック

日大・小堀倭加、常識破りの練習法「量より質」で世界へ挑む

小堀は昨年のアジア大会、女子800m自由形で自己ベストを更新し、3位をつかんだ(撮影・諫山卓弥)

2年に1度開催され、「学生のオリンピック」とも呼ばれているのがユニバーシアードです。台湾・台北が舞台だった前回、日本は37個の金メダルを獲得し、夏季大会では初めてメダル獲得ランキング1位となりました。今年は7月3日から14日まで、イタリア・ナポリで開催されます。開幕に先立ち、4years.では今大会に参加する大学生アスリートを紹介します。3回目は水泳女子自由形中長距離小堀倭加(わか、日大1年、湘南工科大附属)です。

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自由形に転向、才能が一気に開花

小堀はいまでこそ自由形の選手だが、中学時代の専門は背泳ぎだった。中学から全国の舞台を経験し、2年生のときに200m背泳ぎで全国2位の結果も残している。そんな小堀は湘南工科大学附属高校に進学したと同時に、大きなターニングポイントを迎えた。

「自由形の中長距離をやってみよう」

同校の三好智弘監督は小堀にそう話した。三好監督は1992年バルセロナオリンピックのバタフライの代表選手。三好監督からの言葉に促されるようにして自由形に転向した小堀は、その才能を一気に開花させた。

1年生のインターハイで400mと800mの自由形で2冠を果たすと、2年生では日本選手権の400mで2位。さらに1500mでも2位、800mでは3位となり、出場した3種目すべてで表彰台に上った。この日本選手権の結果で手にした世界ジュニア選手権では、400mで日本高校新記録を樹立。800mでも自己ベストを更新した。

3年生となった昨年の日本選手権では、400mと1500mで2位となり、同年夏のパンパシフィック選手権、アジア大会の代表権を射止めた。そこからが、またすごかった。

パンパシでは400m、800m、1500mのすべてで自己ベストを更新。400mと1500mでは日本高校記録を塗り替えた。パンパシから1週間後、ハードスケジュールの中で始まったアジア大会でも800mでさらに自己ベストをたたき出し、1500mと合わせて二つの銅メダルを獲得した。

「パンパシから続けて結果を残せているのは、レースに集中できてる証拠だと思います。ハードなスケジュールでやってきて、今年はいい経験ができました」。レースを終えた小堀はすがすがしい顔で言いきった。

国内中長距離界では異色の「量より質」

小堀は自身の練習についてこう話す。
「練習量自体は少ないかもしれませんけど、質が高くて、とてもキツい練習です。でも頑張ってこなせれば、試合でしっかりと結果を出せるんだ、という自信を持てるので、頑張ってます」

中長距離のトレーニングといえば、距離、時間ともに長いのが通例だ。例えば2004年のアテネオリンピックで800m自由形の金メダリストになった柴田亜衣さんは、誰よりも早くプールに入り、誰よりも遅くプールから上がるという、量を泳ぎ込む練習だった。しかし小堀が師事する三好監督の理論は、「レース全体の4分の3の距離をスピードで泳ぎきれる能力をつければ、残りの4分の1は耐えられる」という、中長距離の選手にとっては少し異色とも言えるものだ。そのため小堀の練習も、どちらかといえば量よりも質を重視したものが多い。短い時間と短い距離の中で最大限の効果を得るために編み出された練習法だ。

ただ実際、高校の25mプールで多くの部員たちと同じ練習をこなさなければならない環境だと、それも致し方ないのかもしれない。小堀ひとりだけが特別な練習をするわけにもいかず、苦肉の策とも言える。だがその限られた環境だからこそ練習に集中でき、質の高いトレーニングにも耐えられる。三好監督の信念に共感した小堀は、一つひとつの練習の意味を理解した上で日々の練習に取り組んだ。その3年間の積み重ねが、彼女をここまで成長させたのである。

「私はレースをこなして強くなるタイプ」

自由形に転向してすぐ結果を残し、一躍女子自由形中長距離期待のホープとしてその名が知れ渡った小堀は、今年4月の日本選手権で、7月に韓国・光州で開催される世界選手権の代表権を狙っていた。シニアの国際大会を初めて経験をした昨年に続いて、2020年の東京オリンピックを目指す上でも、世界選手権に出場したかった。しかし、出場した200m、400m、800m、1500mのすべてで日本水泳連盟が設定している派遣標準記録を突破できず、世界選手権代表には選ばれなかった。

小堀(右端)は今年のジャパンオープン女子400m自由形で3位だった(撮影・内田光)

それでもユニバーシアードの代表に選出され、今年も国際大会の経験を積める機会を得た。大学1年生で迎える初のユニバーシアード。納得のいかないレースが続いた日本選手権の悔しさを払拭する泳ぎに期待が高まる。

「ユニバーシアードでは国際大会だからといってビビらず、自分の持ち味であるスピードを生かして前半から攻めるレースをしていきたいです。目標は400m、800mでの表彰台。それと、1500mでは国際大会派遣標準記録(16分6秒82)を超えるタイムを出したいです。毎日レースが続くハードな日程ですけど、毎日全力でいきます」

自由形中長距離の選手として活躍して、まだ4年目。これから経験するレース一つひとつが、確実の小堀の糧となる。それは小堀自身が一番よく理解している。

「私はレースをこなすことで強くなるタイプ。だから何本も泳いで、そこで力をつけて来年につなげたいです」

ユニバーシアードは、小堀が来年飛躍できるかどうかの試金石となる。真面目にコツコツと努力を積み重ねてきた小堀だからこそ、きっとこの試練を最高の結果でクリアしてくれることだろう。

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