同志社準硬式・下須崎太一 声を評価されてベンチ入り、努力重ねて背番号ゲット
同志社大学準硬式野球部は関西六大学連盟に所属している。部員数は71人(4回生引退後の7月24日現在)と多く、高校時代に硬式で甲子園を経験した選手たちもいる。2017年には日本一に輝いたが、昨秋はまさかのリーグ5位と、名門が辛酸をなめる結果に終わってしまった。
高度なワードセンス、「ツッコミの各駅停車」
逆襲に燃え、迎えたこの春。開幕カードは関西学院大に連敗を喫したが、追い上げを見せ、最終節は昨シーズン王者の立命館大に連勝。立命と2位で並んだ。この躍進を学生コーチとして支えた男、下須崎(しもすさき)太一(3年、清教学園)を紹介したい。
「お前の声が必要なんだ」。下須崎は春季リーグ戦開幕前、主将の佐藤唯斗(4年、花巻東)から選手ではなく学生コーチとしてのメンバー登録を打診され、引き受けた。ベンチ入りできない選手が多くいるなかで、持ち味の「声」が評価されてのメンバー入り。チームメイトから「ツッコミの各駅停車」と呼ばれるほど、明るくひょうきんな性格が生み出す高度なワードセンスは、常にチームに活気を与えた。
試合前にはアップの準備をしたり、ノックを打ったり。試合中はランナーコーチや声出し。試合が終われば、ほかのチームの偵察もした。「チームが勝った喜び、負けた悔しさをベンチで共有できるのは、すごいやりがいでした」と下須崎。普段の練習は選手として参加しているだけに、コーチ登録は「選手失格」を宣告されたようなもの。その悔しさやもどかしさを抱える一方で、自分自身にしかできない役割にやりがいを感じるようにもなっていった。
「脱コーチ」を掲げて猛練習
春のリーグ戦を2位タイで終えた同志社はプレーオフで立命に勝ち、関西選手権への出場権を得た。選手権前に下須崎は大きな決断をした。「今回もコーチ登録なら辞退しよう」と。
選手としてグラウンドに立つために「脱コーチ」を掲げて約3週間、練習に励んだ。リーグ戦を間近で見てきたからこそ、自分が活躍してチームを勝たせたいという思いが強くなっていった。自宅から大学まで2時間半もかかるのに、仲間たちと自主的に朝練。着実に力をつけた。
努力は報われた。関西選手権1回戦。下須崎は背番号4をつけてグラウンドに立った。「本当にうれしかった」。試合には出られなかったが、大きな一歩を踏み出した瞬間だった。朝練仲間で主軸を打った柴山葵(4年、中京)は「練習も人一倍頑張ってたし、チームのために声を出したり、働きかける姿勢が評価されたんだと思う」と語る。また柴山はバッティング練習で打撃投手を務めたときのことを振り返り、「あいつ(下須崎)が一番振れてました。二人で幹部にアピールしてましたね」と笑顔で話した。
同志社は関西選手権の2次トーナメントで敗れ、柴山ら4回生は引退した。チームの最上級生
となった下須崎らの目標は秋季リーグ優勝。そして日本一だ。だれよりも野球の楽しさ、勝負の厳しさ知る男が、同志社準硬の明日を担っていく。