大学陸上・駅伝

フォーム変えて躍進の中大2年生・森凪也、チームのエース候補へ名乗り

全日本大学駅伝の選考会でチームトップの走りを見せた森

6月23日に全日本大学駅伝の関東地区選考会があった。参加した20校中、本大会の出場権を獲得できるのはわずか5校という厳しい争いだ。中大は5位の中央学院大に約18秒及ばず、7大会ぶりの本大会出場はならなかった。あの日チームを引っ張ったのは、今シーズン急成長を遂げている2年生の森凪也(福岡大大濠)だった。

全日本の選考会でチームトップの走り

森は今シーズン前半、中大長距離陣にあってひときわ強い存在感を放った。関東インカレでは10000mに出場し、29分30秒台でチーム最上位の11位。全日本の選考会でもエースたちが集う最終4組に大抜擢(ばってき)され、自己ベストを更新する29分9秒台をマーク。今シーズンの10000mでは中大勢トップのタイムで、ほかの大学のエースたちとしのぎを削った。さらに、先月オーストラリアで開かれたゴールドコーストマラソンでは、ハーフ初挑戦ながら中大勢トップの1時間4分台と、長い距離にも適応を示している。

全日本の選考会で走る前、森は笑顔で声援に応じた

一躍、中大のエース候補に名乗り上げた森。しかし、入学当初はロードや長距離に対して苦手意識を持っていた。森は言う。「高校時代からロードがまったく走れなくて、『森はトラックで短いのしか走れない』というイメージができてました。トラックでも5000mまでしか走れないと、自分でも思いこんでいる部分があって、ロードや長距離に対しては走れないんじゃないかという怖さがありました」

去年の夏ごろから秋にかけて、故障で満足に走れない期間があった。森は当時を「5000mでも大学に入って自己ベストを更新できなくて、全然うまくいっていなかった」と振り返る。その期間、森は大学のフィジカルトレーナーにトレーニング方法を教えてもらいながら、自分の体と一から向き合った。

そこで取り組んだのがフォーム改造だった。「いままでは上跳ねして、ふくらはぎや自分の体の軽さを利用した走りでしたけど、いまはお尻を使った陸上選手らしい走りができるようになりました」と森。フォームの変化が、今シーズンの急成長につながった。

平成国際大記録会でつかんだ手応え

森にとって長距離に対する意識の変化があったレースがある。昨年の12月下旬、箱根駅伝直前の平成国際大記録会。そこで森は5000m14分18秒台と、高校時代の自己ベストを約10秒更新するタイムで走った。「おそらく高校時代の走り方でこのタイムを出しても、次は『13分台を出すぞ』と向く方向が違ってたと思います。ただ、あのときの14分18秒は5000mにとどまらず10000mでも戦っていけるのではないかと感じられました」。森はいままで取り組んでいたスピード強化や、体の使い方を変えたことによる新たな自身の走りに手応えをつかんだ。

平成国際大記録会の5000mで自己ベスト更新を果たした

このトラックでの走りを「駅伝に生かしたい」という思いが森にはあった。「全日本選考会の10000mを走ってチームに貢献したい」。選考会を見すえて、森は監督、コーチらスタッフと話し合い、3月の中大記録会で10000mへ初挑戦することを決意した。

その中大記録会の10000mでは、いきなり29分30秒を切った。関東インカレのA標準記録を突破する快走だった。「30分を切ろうと考えてました。そこで長距離に対して自信ができ、流れが変わりました」と森。平国大記録会でつかんだ手応えは間違っていなかった。

高校時代から舟津先輩を目指してきた

著しい成長を見せている森が中大進学を決めた理由の一つに、駅伝主将である舟津彰馬(4年、福岡大大濠)の存在がある。舟津と森は福大大濠高の先輩・後輩の間柄だ。森は「みんなが『さん』付けするなか、いまでも僕は『舟津先輩』と呼んでます。中大に誘ってくれたのも舟津先輩でした」と明かしてくれた。「勝手に先輩と自分を重ねているところはありました。高校時代の成績が自分と似ているところがあって、舟津先輩が中大に入って活躍している姿を見て、自信になったというか、自分でももしかしたら走れるんじゃないかというのはよぎりました」

中大の駅伝主将を務める舟津

1年生のときから強いリーダーシップを発揮し、チームを鼓舞し続ける舟津。その存在は森にとって、一人の陸上選手としての目標となっている。「陸上に対する姿勢とか、学ぶことが多いです」。尊敬できる先輩が身近にいるのは、森にとって最高の環境だろう。

「レースで出し切る力」も、森の走りにおける特徴の一つだ。この走りのルーツは九州で過ごした中学、高校時代にある。九州のレースでは記録より順位を狙う傾向にある。「勝負のレースは一本しかありません。そこのレースの気持ちの捧げ方というのは、大学ではあまり意識していないので、もしかしたら高校時代からわりとそういう境遇にいたのかもしれません」と森は言う。九州には福岡クロカンやゴールデンゲームズinのべおか(GGN)、金栗記念などのビッグレースが多い。勝負を常に意識する最高の場所が地元にはあった。

もっと陸上を深めて、チームに貢献したい

2年生になって、森には陸上に対する取り組みに一本の芯ができたという。ロードを苦手としていたかつての森は、先入観から距離を意識してしまう部分があったが、そこが変わったと語る。「いまは10000や5000、ハーフに取り組むというより、陸上に取り組もうという気持ちを持ってやってる分、いちいちブレないです。上辺だけではなく陸上をもっと深めたいという欲求のレベルが上がりました」

「自分の中での大きな変化はとくにありません。1月から新チームがスタートしたときに、どうしてもチームに貢献したいという気持ちが大きくて、そこで10000mにも意欲的にやっていきたいと思ったのが始まりでした。去年まではチームにまったく貢献できませんでしたが、いまは周りからの期待値もいい意味で上がってきているのは実感しますし、そこに関してはとてもうれしいです」。チームの主力となりつつある彼に自身の変化について尋ねると、謙虚にそう話してくれた。

藤原正和駅伝監督からの期待も大きい

今年の箱根駅伝でシード権獲得を逃した中大は、古豪復活に向けて予選会からの巻き返しを図る。全日本選考会でも、あと一歩のところで本大会出場を逃したが、その悔しさを力に変えてチーム全体の調子は上向いている。「去年はまったく出られるとは思ってなかった箱根が、今年は目指せる立場になりました。まずは予選会で62分台、全体30番以内を目指したいです」と森。この目標を達成できれば、チームの予選会上位突破がグッと近づくはずだ。

「今回の全日本選考会で勝てなかった同世代の選手たちが、箱根の1、2、3区あたりで出てくるならその選手たちと逃げずに戦いたいですし、そういう場所で戦おうという姿勢がチームに貢献できることじゃないかと思います」と、箱根駅伝に向けて力強く語った森。試練の夏を超え、さらなる成長を遂げた森の走りがチームの勢いを加速させる。

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