アメフト

「テープ回したらあきませんよ」最終年の関学アメフト鳥内秀晃監督大いに語る

何より人を笑わせるのが大好きな鳥内監督(すべて撮影・安本夏望)

学生アメフト界の名将が大いに語った。2019-20年シーズンをもって退任する関西学院大学ファイターズの鳥内秀晃監督(60)と小野宏(ひろむ)ディレクター(58)が7月28日、兵庫県川西市で講演会を開いた。二人での開催は初めてで、360人のファンが集まった。

監督の現役時代の映像に「おーっ」

題して「名将・鳥内監督が語り尽くす ファイターズのすべて」。元朝日新聞記者の小野ディレクターが聞き手に回り、鳥内監督が応じるインタビュー形式で進んだ。講演の冒頭、小野さんが「ぶっちゃけトークで話がどこにいくか分かりません」と前置きすると、すかさず鳥内監督は「テープ回したらあきませんよ」と、大阪の有名企業を意識した時事ネタで笑いをとった。

前半は鳥内監督の現役時代について。大阪府立摂津高校のサッカー部で全国大会にも出場した。関学サッカー部の監督は、1浪して合格した鳥内監督が入部してくれると思っていたそうだ。しかし鳥内監督は父の昭人さん(故人)がかつてファイターズの監督だったこともあり「日本一になりたい」とアメフトに転向した。現役時はDB(ディフェンスバック)やキッカーとして活躍。小野さんが「鳥内さんはディフェンスの選手なのに、ボールを持ってるシーンが多いんですよ」と、現役時代の映像を披露した。そこには、相手のパスを奪い、颯爽(さっそう)と走る鳥内監督の姿が。会場のファンは「お〜っ!」と沸き上がり、拍手。監督は「こんなときもあったんよ」と、照れくさそうに笑った。

長らく鳥内監督と一緒にやってきた小野ディレクター

後半になると、「教育者」鳥内秀晃の一面が見られた。卒業後、アメリカへのコーチ留学から帰り、1986年からアシスタントヘッドコーチ兼守備コーディネーターとして指導陣に加わった。「最初の3、4年は上から目線でやりすぎた」。一つの転機となったのは教員免許取得だという。コーチになってからの目標の一つだった。40歳の年に、通信教育を利用して必要な単位を修得した。「地理歴史科でインド仏教やらなんやらいろいろ勉強して、1年半で取れましたわ」と鳥内監督。教育実習にも行った。自分よりも若い先生が担当だった。そもそも教員免許の取得は、実際に先生になるためではなく、アメフトの指導者として自分のやってきたことが正しいかどうか確かめるためだった。「(そのころから)先生がサラリーマン化してた。ずーっと黒板の方を向いてしゃべってるだけ。担任が「人づくり」をするのには限界がある。これが現実やと。課外活動してたら、その指導者に相談できたらいい、と」

シーズンの最後に、こんな笑顔が見られるだろうか

学生と面談し、男と男の約束をつくる

そうして始めたのが個人面談だ。新チームが動き出すと、鳥内監督と選手が1対1で面談する。「男と男の約束をつくっていこ、と。当初はテープに録ってましたよ。「お前、こう言うたやろ」言うて。テープから文字に起こして、配って共有させてましたね」。そこで小野ディレクターが言った。「面談のテープを、OBはいまでも持ってるんですよ。結構、泣かされてて。だから、就活で圧迫面接を受けても監督の面接よりはマシ、と言ってました」と笑いを誘った。個人面談を録音するのは、選手に発言の責任を持たせるためだ。監督自身も現役時代に似たような体験がある。「最初のころは大人しくしとったけど、2年目になると上にボロカス言い出しましてね。でも、(上級生には)叱られませんでした。言うた分、自分もしんどいねん」。個人に責任を持たせる集団にする。そこに、ファイターズの強さを垣間見た。

2時間近くのぶっちゃけトークのあとには、ファンからの質問タイムが設けられた。「監督の後任は?」「監督を辞められたら何をされるのですか?」と、鋭い質問が飛んだ。それに対しても監督は「就職先を斡旋(あっせん)してもらえますか?」と、最後まで笑いをとることを忘れなかった。人間味あふれる鳥内流の講演は、あっという間に終わった。

関学の秋の初戦は91日。笑わせ上手の教育者、鳥内秀晃のラストシーズンが始まる。

鳥内監督と小野ディレクターの掛け合いを360人のファンが満喫した

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