陸上・駅伝

駒大陸上部・原嶋渓 走りで引っ張れなくても、心で引っ張る主将 

原嶋(写真左前)は積極的に後輩に声をかけるようにしているという(すべて撮影・藤井みさ)

駅伝シーズンを前に、各大学は夏合宿に取り組んでいます。駒澤大学は8月16日から22日まで、野尻湖で全体の1次合宿を開催しました。4years.編集部はこの合宿を取材し、陸上部のみなさんに話を聞きました。主将としてチームをまとめる4年生の原嶋渓(刈谷)の声をお届けします。

駅伝に向け、手応えつかんだトラックシーズン

「自分だけがやっていこうというより、みんながしっかり、上級生の力だけじゃなく全体で戦っていく、ということをミーティングでもずっと言ってます」。キャプテンになって、はや8カ月。原嶋は穏やかな口調で話し始めた。「力のある1年生が入ったということもありますけど、前半のトラックシーズンは自己ベストを出す者もいました。関(東イン)カレはいままでポイントを取れていなかったのが、今年はそれなりにポイントも取れました。三大駅伝で上を目指していくにはまだ物足りない結果ではありますが、手応えは感じられてるんじゃないかと思います」。前半シーズンをそう振り返った。

三大駅伝に無縁だったからこそ、わかること

今年1月2、3日の箱根駅伝が終わり、新体制となったタイミングで主将に指名された。まったく予想もしていなかった指名に驚いた。中学時代はサッカー部でキャプテンだったが、高校から始めた陸上で役職がついたことはなかった。経験も浅く、トップレベルの選手でもない自分が駒大のキャプテンなんて大丈夫だろうか。どうやってやっていけばいいんだろうと、最初は不安を覚えたという。

キャプテンの指名には「まさか」と思ったという

原嶋は3年生まで1度も学生三大駅伝のメンバーに入ったことがなく、いまもトップチームには入っていない。だからこそわかる、心がけることがある。「いままでの先輩は力で引っ張っていくタイプが多かったですけど、自分はいまBチームで、そういうタイプじゃないです。駅伝主将として大聖(中村、4年、埼玉栄)がいるので、練習は彼に引っ張ってもらってます。自分はけがが多くて、とくに1、2年のころはうまくいってないこともありました。そういう経験から、下の選手を底上げしていきたいと思って積極的に声かけをしてます」。チーム全体で取り組もう、と言っていてもどうしてもチーム内で意識の差は出てきてしまう。「意識の高低をなくして、みんなが高い意識で取り組めるように心配りをしてます」

キャプテンの立場になるまでは、自分のことで精一杯でチーム全体を見る余裕はなかった。「この立場になって、視野が広がりました」と言う。「やらなきゃいけないという覚悟をしたら、自分の競技にもいい影響が出てきました。けがをせずに練習を継続できてます」。3年生のときは箱根駅伝の前にけがをしてしまい、主将になったときもけがからのスタートだった。「最初は思うように気持ちと走りが合わなくて、練習はできても本番で走れなかったりといったことが続きました。先月ぐらいから走れるようになってきました。いまは余裕を持って練習を引っ張っていけてると思います」

ラストイヤー、走りでもチームに貢献したいという気持ちは大きい

自分の走りでもチームに貢献を

夏合宿のあとは駅伝シーズンへと突入していく。チームの目標は三大駅伝3位以内だが、「あわよくばどこかで優勝できれば」と原嶋は言う。みんなが目標に向かって練習できている、いい雰囲気を感じている。そして個人でも、ラストイヤーにかける思いがある。「せっかく走ってるんだから、キャプテンという立場だけでなく、走りでもチームに貢献したいです」。三大駅伝には出たい? 「もちろんです。とくに箱根駅伝に。短い距離は苦手なので、長い距離で勝負したいです。最後まで頑張って、チーム内の競争に入れればと思ってます」

「お笑いが好き」という原嶋。リラックスタイムには撮りためた録画を見たりする

普段の生活で心がけているのは「その日の疲労をためないこと」だという。小さい積み重ねを意識して生活しているそうだ。自分に対しても、チームに対しても、小さい積み重ねを怠らない原嶋。現在のチームのいい雰囲気はキャプテンによるところが大きいのでは? と聞いてみると「そんなことはないです」と謙遜した。「みんなが意識を持ってくれているのが大きいです。僕だけでなく、ほかの4年生も引っ張ってくれて、それにしっかり後輩が応えてくれて、ついてきてくれる。それがいまの駒澤です」

成功ばかりを経験してきていないからこそ、チームのみんなに伝えられることがある。本人は謙遜したが、やはり原嶋が自分なりのキャプテンとして影響力を及ぼしているからこそ、駒澤はチームとしてまとまれているのだろう。

in Additionあわせて読みたい