陸上

東京国際大駅伝部・大志田秀次監督 躍進のカギは4年生の「俺も俺も」にあり

創部9年目の駅伝部の指揮を執る大志田監督。チームは躍進の時をむかえている

東京国際大学が大学駅伝界にその輝きを放ち始めた。6月の全日本大学駅伝関東地区選考会では早稲田、明治を抑えてのトップ通過。駅伝ファンを驚かせた強さの理由とは? 2011年の創部以来、指導に当たり続けてきた大志田秀次監督(57)に話を聞いた。

東京国際大駅伝部エース・伊藤達彦、「継続は力なり」でつかんだ飛躍

校内放送で「駅伝部はじめます」

大志田監督は中央大で走ってホンダに進み、現役引退後はホンダと中大のコーチを兼任したこともあった。2002年から社業に専念していた大志田氏に声をかけたのは、横溝三郎総監督だった。「箱根駅伝のラジオ解説をやってるし、中大のコーチ時代にチームも優勝してるから、駅伝知らないわけじゃないよね? って(笑)。この話をもらってから、やはり陸上にまた関わりたいという気持ちが出てきましたね。でも現場を9年も離れていたので、勧誘の仕方や育成方法も自分のころとはまったく違って、最初はかなり戸惑いました」

もちろん最初は部員ゼロ。2011年4月、校内放送で「駅伝部ができたので説明会をします」と告知した。集まったのは、陸上経験者が2人と野球経験者が1人、マネージャーが1人だった。「その年はとにかく高校生のいろんな大会に足を運んで、スカウティングをしていました。おかげで翌年は27人が入部してくれました」

徐々に力のある選手が集まり、部が大きくなっていった

当初は20kmを走れる選手も少なかったそうで、まずは10ml(マイル)=約16.1kmを走れる体力をつけよう、ということから始めた。その年に箱根駅伝予選会に出場し、21位。結果を受けて選手たちが20km走に取り組むようになると、17位に。徐々に走れる選手が増えてきて13位と順位を上げ、創部5年目に「40km走を入れたい」という声が選手側から上がったという。その結果、この2015年に予選会で9位となり、初の箱根駅伝出場をつかみとった。そこからさらに4年。東京国際大は初めて全日本大学駅伝の本大会出場を決めた。「いまは初めて箱根に出たときに近い雰囲気です。選手のやる気とチームの力が合致しているのを感じます」と大志田監督。チームはまたひとつ、新しい歴史の扉を開けようとしている。

選手が自発的に行動を起こせるように

監督が普段から心がけているのは、できるだけ選手の目線に立つことだ。個々の選手の技量に合わせたトレーニングも必要だと考えている。「理想としては、それはやはり優勝したい、ということになるんでしょうけど、それよりも肝心なことは、選手が楽にその大会を迎えられることなんです。『この力を出せば通過できるよ』というラインを引いてあげる。そうすることによって、『もう少しやればもっといけるな』とおのずとわかって、意識が変わってくる。選手が自発的に行動を起こせるかどうかが重要です。考えて行動する、そうしないと強くならない。実業団に行きたいという選手がいますが、実業団でもやっていける強さをつけるためには、与えられたものをやるだけでは足りない。自己判断で体調やトレーニングの管理などができるようになれば、この先も活躍していけるチャンスがあると思います」

監督もエースと認める伊藤達彦(4年、浜松商)は、こういった自発的な練習ができているという。「達彦はもともと東海地区のインタ-ハイ予選の5000mで7、8位くらいの選手でした。浜松商業の同級生でインターハイに出た選手が本学への進学が決まってて、達彦は彼と仲がよく、大学でも陸上を一緒にやろうということで入学してきました。競技は大学で終わりにしようと思ってたみたいですね。でも記録が伸びてきて環境が変わり、少しずつ心境も変わってきました」

全日本大学駅伝関東地区予選会で力走する佐藤雄志(4年、中央の4番)と丹所健(1年、左端)(撮影・北川直樹)

伊藤への取材の中で、彼が「僕たちの代が最強だと思ってます」と言っていたことを監督に話すと「いまの4年生が入学したころは、真船(恭輔、4年、学法石川)の力が抜きん出ていたんですけど、その下の同じぐらいの力を持った選手たちの中から、伊藤が抜け出してきた。最初から走れる人がさらに走れるようになると、その下の選手たちは『もう追いつけないや』となるんですが、5番手ぐらいの選手が活躍し始めると『俺も俺も』ってなるんですよ。そうやってみんなで練習をしっかりやってきてる学年ですね」。寮の規則なども、選手同士で話し合って少しずつ変えたりしているのだという。「普通はみんながみんな同じ方向を向くのは難しくて、向いていたとしても何人かくすぶってることがあるんですが、いまの4年生にはそれがまったくありません。学生たち自身がチームを回せるようになってきてるな、と感じますね」

一つひとつ目標をクリアして

全日本大学駅伝の関東地区選考会をトップ通過したことで、東京国際大はその充実ぶりを印象づけた。選考会前に1位通過するイメージはありましたか? 「いや、なかったですね」と大志田監督。「明治、早稲田、中央学院など確実に走ってくるチームがいたので、出場権を獲得できる5位以内を目指せれば、と思ってました。本当は4年生をもっと使いたかったんですけど、関東インカレのハーフマラソンのダメージが思ったより長引いてしまって、思い切って3年生を使いました」。その起用が見事にはまり、4組に分かれて2人ずつ走った8選手は、すべて各組の20位以内と好走した。「熊谷(真澄、3年、高田)や丹所(健、1年、湘南工科大附)はいままで大きな大会に出たことがなく、不安も少しあったんですが、よく走ってくれました」。今年入学したばかりのケニア人留学生イェゴン・ヴィンセントは28分4秒55の自己ベストで快走し、全体のトップ。「まだまだ、もっともっと伸びると思います」と、大志田監督はみている。

全体の1位のタイムでゴールしたイェゴン・ヴィンセント。どこまで伸びるのか楽しみだ(撮影・北川直樹)

来年1月の箱根駅伝ではシード権獲得を目指す。「まずこの大学に来て箱根駅伝出場という目標を掲げて、それは達成できました。次は全日本大学駅伝出場、これも達成できた。次は箱根駅伝でのシード権。一つひとつクリアしていくことが大事だなと思っています。学生駅伝により多く出場して、選手を育成していく。その中で選手が強くなっていく、という流れになればいいと思います。中央学院のように、派手さはないけど気づいたら長らく学生三大駅伝を走り続けている、そういった育成をしていきたいですね」

最終的には選手が主役

大志田監督は選手に寄り添い、彼らの気持ちを大事にする指導者だというのがはっきりと伝わってきた。「最終的には選手が主役ですから。夏のテーマとしても『主役は自分自身』と掲げてます。自分が強くなかったら面白くないだろうし、主役になろうと思ってやらなかったら、それも面白くない。選手の力、思っていることをどう引き出してあげられるかが、自分の仕事ですね。あとは、選手には日ごろから『思ったら行動に移そう』と言ってます。明日からやろう、と思っていると、いつまでも踏み切れない。いまから動く、そういったことの積み重ねが競技にも生きてくると思います」

部内のベストタイムが記載されたボード。この名前は入れ替わり、チームはどんどん強くなっていく

秋の駅伝シーズンに向けて、選手たちは8月いっぱい合宿で走り込む。
良好な流れに乗った東京国際大学から目が離せない。

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