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特集:天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権

同点ゴールの法政MF森俊貴、天皇杯が終わっても夢はあきらめない

森(左)は右肩を脱臼しながらも、果敢に攻めるプレーを見せた(すべて撮影・佐伯航平)

天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権4回戦

9月18日@山梨中銀スタジアム
法政大 1(延長)2 ヴァンフォーレ甲府

サッカー天皇杯の4回戦(ラウンド16)があり、法政大はJ2のヴァンフォーレ甲府に延長戦の末に1-2で敗れた。勝てば1993年のJリーグ発足以降では初となる大学生チームのベスト8入りだったが、大会史を塗り替える快挙とはならなかった。

延長後半の終わりを告げるホイッスルが鳴ると、法大イレブンはがっくり肩を落とした。2回戦でJ2の東京ヴェルディ、3回戦でJ1のガンバ大阪を倒して迎えたベスト16の舞台。ここを突破すれば、大学サッカーが新境地に踏み出せた。それだけに、負けた悔しさがあふれ出た。長山一也監督は言った。「今日の内容は悪くはなかったと思うんですけど、結果が伴わないと評価されない。大学サッカーを代表して戦ってる部分もあったので、負けて悔しいというのが率直な感想です」

率直に「悔しい」と語った長山監督

右肩脱臼の森が、希望を灯す同点ゴール

法大は前半27分に先制点を献上したが、一切めげずに立ち向かった。両サイドにボールを集めてチャンスを探る中、チームに希望を灯したのが左サイドハーフとして後半14分から途中出場したMF森俊貴(としき、4年、栃木SCユース)だった。

「ビハインドの状況だったので、点を取れたいいなという思いと、攻撃があたふたしていたので落ち着かせられたらと思って入りました」と森。32分、MF紺野和也(4年、武南)からのクロスに頭で合わせて値千金の同点ゴールをたたき込んだ。「チームを応援してくれる人たちのために戦おうって決めてたので、その人たちの気持ちに応えられて最高の気持ちでした」。森はゴールが決まった次の瞬間、サッカー部の仲間たちが陣取るゴール裏へ向かい、喜びを分かち合った。

史上初のベスト8へ希望を灯すゴール。森はゴール後に笑顔で応援団とハイタッチ

しかし、延長前半3分に勝ち越しゴールを許して敗戦。「個人的には準備の段階でけがをして迷惑をかけてしまったので、自分の責任かなと思いますね」。うつむきながらそう話した森は、この試合の4日前にあった関東リーグの流通経済大戦で右肩を脱臼。天皇杯の大事な戦いへ向け、十分な準備ができなかった。それでもベンチ入りを果たし、長山監督からは試合展開次第で起用の可能性があると告げられていた。

試合後、森は右肩について「ガチガチに固めてあんまり動かないようにしてました」と話した。そんな影響を感じさせないプレーでを見せたが、「悔しいです」とつぶやいた。

夢のプロ入りを最後まで模索

森は公式戦ここ4試合で2得点。9月5日にあった総理大臣杯準決勝での決勝ゴールに続き、プロ相手にも貴重な一発。「ゴールが少なかったので、結果を出せたのは自信になりましたね」と森。一方で、自陣中央を固めつつ、隙を突くようにカウンターを繰り出してきた相手の戦い方に対応できなかったのを悔やんだ。

「ベスト16まで勝ち進めたのは自信につながったんですけど、今日のようなこれまでとは違ったJリーグチームの戦い方に対して、僕たちが順応できなかったというのが敗因だと思います。歴史を塗り替えられなかったのは悔しいですし、応援してくれた人たちに申し訳ない気持ちがありますけど、足りないところが見つかってよかったかなとも思います」

試合後、悔しさをあらわにする森(右から2番め)。だが夢は終わらない

法大に残された戦いはリーグ戦と冬のインカレのみ。最上級生である森にとって、大学サッカーで戦う日々は残り約3カ月となった。進路については、まだ答えを出していない。一般企業からの内定をもらっているが、大学入学時に抱いていたプロサッカー選手になる夢も持ち続けている。この先もプロ入りを模索するつもりで、そのためにも法政の一員として最後まで精いっぱい戦うのが大事だと森は感じている。

「僕の進路がどうなるかは見当がついてないんですけど、法政として結果を残したいと思っていて、それが自分の進路につながればいいなと感じてます。チームとして結果を残すことに全力を注げたらと思ってます」

天皇杯での貴重な経験も糧にして、森は最後まで夢を追い続ける。

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