陸上・駅伝

特集:第96回箱根駅伝

駿河台大が12位に躍進 疑心暗鬼だった「箱根駅伝出場」が明確になった

悲願の箱根駅伝初出場に向け、気持ちを一つにして挑んだ(撮影・小野口健太)

第96回東京箱根間往復大学駅伝競走予選会

10月26日@東京・陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園
12位 駿河台大学 10時間58分44秒

箱根駅伝予選会で前回18位だった駿河台大は今年、12位に順位を上げた。10位で本戦出場をつかんだ中央大との差は1分58秒。やっと箱根駅伝が見えるところまできた。それでも徳本一善監督は「悔しさしかない。筑波がいけてうちがいけないことはないでしょ、とは思ってたんで」と口にした。

「いつか世界で戦える選手を育てたい」 駿河台大駅伝部・徳本一善監督4完

筑波大は予選会6位で26年ぶり63回目となる本戦出場を決めた。前回17位からの大躍進だった。筑波大は2011年に「筑波大学箱根駅伝復活プロジェクト」を打ち上げ、15年からは筑波大OBでもある弘山勉監督のもとで力をつけてきた。その11年に徳本さんは駿河台大のコーチとなり、12年から監督として駿河台大を強化している。過去に62回出場という実績がある筑波大に比べると、箱根駅伝初出場を掲げる駿河台大とは事情が異なる。それでも本戦出場をつかむには「筑波に勝つことが大前提」という思いが、徳本監督にはあったという。

エース2人がタイムを稼ぎ、あとは集団で押し切る

予選会では12人がハーフマラソンを走り、その上位10人の記録の合計で競われる。駿河台大の戦略はエース2人を思いっきり走らせ、そのほかのメンバーは一つの大集団で走るというものだった。

ジェームスは5km地点までは先頭集団でレースを展開した(撮影・小野口健太)

ケニアからの留学生であるブヌカ・ジェームス・ナディワ(2年)は、5月の関東インカレ男子1部5000mと10000mの2冠を達成している。そのジェームスには1時間1分で走ることを課した。もう一人のエースである吉里駿(3年、大牟田)の目標タイムは1時間3分45秒。そのほかの10人は1kmを3分5秒ペースで押し切り、全員が1時間5分で走れれば予選会を突破できると踏んでいた。夏合宿を経て、確実に力をつけていることをチームも感じていた。「残りの10人は同じ練習ができて同じ調整ができていた。だから『お前らのうち一人がいけたら全員いけるよ』という流れはできてました」と徳本監督は自信をのぞかせた。

予選会当日、ジェームスが留学生たちの先頭集団に食らいつき、8位で1時間3分26秒のタイムを刻んだ。吉里はレース前、練習を積んで万全の準備を重ねてきたものの、自分の力を出し切れるか不安があったという。しかしスタートしてすぐに体の動きのよさを実感すると、「絶対いける」と自信をもって前半から攻めた。レース後半になるころには気温がぐっと上がり、選手たちの表情も険しさを増した。吉里も14kmを過ぎて昭和記念公園に入ってから走りが苦しくなり、最後は32位で1時間4分30秒でゴールした。後半にペースが落ちたものの、コース沿いからのチームメイトの声援に励まされ、それが気持ちの支えになった。「苦しいときに助けてもらえて、最後のゴールまで1秒にこだわって走ることはできたと思う」と手応えを感じていた。

吉里は後半失速したが、徳本監督は「決めた通りに前半から攻められた」とたたえた(撮影・北川直樹)

しかし結果は12位。徳本監督は「こういう暑さはどの大学も対応できなかったと思うんですよ。そんな中でも、うちは粘った方だと思います」と選手たちをたたえた。それでも「ただ、67分かかった選手は本来だったら66分台で走れたよね、というやりきれない気持ちはあります。流れはできてましたから。そこで優劣がつくのはどういうことなのか。さらに分析して、調子を合わせて上げることが来年の課題なのかな」と悔しさをにじませた。

一番の収穫は「モチベーションの変化」

今回の予選会を振り返り、もっとも大きな収穫は「モチベーションの変化」だと徳本監督は言う。この8年間、「箱根駅伝出場」を目標にチームを強化してきた。チームには本気で箱根駅伝を目指すという目的意識の共有を徹底し、どうしたらいいのかを選手たちに問い続けてきた。しかし一からチームをつくる過程で、徳本監督自身にも「本当に箱根駅伝にいけるのか」という疑心暗鬼はあったという。その中でつかんだこの12位は、「自分たちは箱根駅伝に出る」という目線に変えてくれるきっかけになった。

それは吉里自身も感じているところだった。「15位以内というのはみんなの共通意識になってたんですけど、でも去年の結果とか自分たちの自己ベストとかを考えると、正直、まだ箱根は見えてなかったです」。そして12位という結果を受け「もっと明確に箱根を意識にできてたらいけたのかなって。そういうことを考えると悔しいです」と口にした。32位だった吉里は関東学生連合チームのメンバーに選ばれた。

「予選会においても箱根駅伝を知っている大学とそうでない大学との差は相当激しい」と徳本監督。これから1年かけて、その差を埋めていく(撮影・小野口健太)

今回の予選会では33年連続で本戦に出場していた山梨学院大が17位で出場権を逃すなど、箱根駅伝の常連校が予選会で姿を消している。今回、駿河台大はその上に立てたものの、「常連校には常連校の実績や力がありますから、すぐに分析して来年に備えてきます。初出場を狙う我々は1年を通してここで勝ち上がる流れをつくらないといけない」と徳本監督は言う。

来年の全日本大学駅伝関東地区選考会で出場権をつかみ、その流れを箱根駅伝予選会につなげる。大事にしているのは目的意識。誰一人、箱根駅伝に出ることを疑わずに突き進めるチームを、これからまたつくり上げていく。

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