野球

特集:第50回明治神宮野球大会

東海大・山﨑伊織 プロ注目の最速153kmと、自画自賛の左打席に注目

東海大の山﨑は秋のリーグ戦で圧巻のピッチングを見せた(すべて撮影・佐伯航平)

第50回記念明治神宮野球大会が11月15日に神宮球場で開幕し、大学の部は11校が秋の頂点を争います。東海大(首都大学リーグ1位)は来秋のドラフト上位候補として注目を集めるエース山﨑伊織(いおり、3年、明石商)を擁し、4度目の優勝を狙います。

リーグ戦は44イニングで自責点1

この秋のリーグ戦、山﨑は5試合に登板し4勝0敗、うち二つの完封勝ち。44イニングを投げて、何と自責点は1。防御率0.20、奪三振は43。見事なピッチングで10戦全勝でのリーグ優勝に貢献し、春秋連続で最高殊勲選手に選ばれた。第1週の大東文化大2回戦では8回までノーヒットノーランを続け、被安打1で完封。15奪三振と圧巻のピッチングを披露した。

身長181cm、体重69kgと細身の体から、最速153kmの直球、鋭く曲がる変化球をテンポよく投げ込む。その姿は1990年代にプロ野球ヤクルトで活躍した伊藤智仁と重なるが、本人の目指すスタイルはやや違うところにある。
「大学に入ってからは、スピードよりコントロールを意識してます。目標にしているのは金子弌大さん(北海道日本ハムファイターズ)です」と山﨑は語る。

明治神宮大会の出場権をかけた関東地区大学選手権では、初戦と2戦目の準決勝に先発。やや調子を落としてはいたが、きっちり試合をつくってみせた。
サヨナラ勝ちした初戦の関東学院大(神奈川大学リーグ1位)戦では7回3分の1を投げ、被安打9、3失点の内容。勝てば明治神宮大会進出が決まる準決勝の大一番では、5回を投げて被安打2、無失点と好投したが、右ひじに違和感を覚えて降板した。3番手のピッチャーが2点を失ったが、7回と8回に3点ずつを奪い、東海大が6-2と快勝した。
「ちょっとだけ変な感じがしたので、大事を取りました。初戦の疲れがちょっとあったんですけど、疲れてる分、丁寧に投げられたと思います」。準決勝の試合後、山﨑は話した。

身長181cm、体重69kgの細身から最速153kmの直球を繰り出す

明石商時代、甲子園での登板機会なし

山﨑は兵庫・明石商業高校出身だ。明石商は彼の2学年上の松本航(日体大→埼玉西武ライオンズ)をはじめ、ここ数年、好投手を次々と送り出している。いま明石商2年生の中森俊介も来秋のドラフト候補として注目されている。

山﨑が高2の秋に明石商は県大会優勝、近畿大会ベスト4の成績を挙げ、翌春の選抜大会で甲子園初出場を果たした。選抜ではベスト8まで進んだが、エースの吉高壮(日本体育大3年)が3試合すべてのイニングを投げきったため、山﨑の甲子園での登板はなかった。当時から球速に関しては吉高より山﨑の方が上だったが、ピッチングの安定感は吉高の方が勝っていた。

高3の夏の兵庫大会では、右ひじを痛めていたことから登板が少なく、主に外野手として試合に出た。明石商は決勝で市尼崎に敗れ、春夏連続の甲子園出場はならなかった。

好投手を続々と出している明石商から東海大へやってきた

カットボール習得が飛躍のきっかけ

東海大進学後は2年生の春にリーグ戦にデビューし、3勝を挙げた。さらなる飛躍のきっかけになったのは、この春の沖縄キャンプでカットボールをしっかりものにしたことだった。
「それまでは変化球はスライダーばかりだったんですけど、よりストレートに近い速さの変化球があって空振りが取れたら楽になるなぁと思って、沖縄キャンプでカットボールを練習しました」

春のリーグ戦では狙い通りの活躍だった。5試合に登板し3勝を挙げ、最高殊勲選手に。東海大はリーグ戦3連覇を果たし、6月の全日本大学選手権でもベスト4まで勝ち進んだ。

この夏、山﨑は侍ジャパン大学代表に選出され、日米大学野球に出場。中継ぎで3試合、計3イニングを投げて無失点だった。ジャパンでは、苫小牧駒澤大の伊藤大海(駒大苫小牧)、東洋大の村上頌樹(智辯学園)、早稲田大の早川隆久(木更津総合)、亜細亜大の内間拓馬(宜野座)ら、同じ3年生のピッチャーから刺激を受けた。
「いいまっすぐを放るピッチャーが多かったです。僕自身、まっすぐのキレをもっとよくして、空振り、ファウルを取れたらいいなと思うんで、そういう話を聞いたりしました。村上君のコントロールのよさ、まっすぐの質の高さがすごかったです。(伊藤)ひろみさんのまっすぐも、めっちゃよかったです」
彼らとはこれから、ドラフト候補として競い合うことになる。

明治神宮大会では、いきなり難敵の東北福祉大と相まみえる

「僕、バッティングいいんですよ」

明治神宮大会初戦の相手は東北福祉大(仙台六大学リーグ1位)だ。4年生のピッチャー津森宥紀は、この秋のドラフトで福岡ソフトバンクホークスから3位指名を受けた。東北福祉大は昨年6月の全日本大学選手権で優勝を飾っている。
「厳しい戦いになると思います。入りが大事。ピッチャーとしては、まずゼロに抑えることですね。競り勝って勢いをつけないといけない。リーグ戦と違って短い期間に試合が続くので、調子を落とさずに一戦一戦大事に勝っていきたいです」。山﨑はすぐそこに迫った大会への思いを語った。

楽しみなことがもう一つある。リーグ戦と違って明治神宮大会ではDH制がないため、投手も打席に立つ。
「神宮大会で打席に立つの、楽しみなんです。僕、バッティングいいんですよ。走るのも速いです!」と、山﨑はもう一つの自分の見どころを教えてくれた。左打ちの好打者・山﨑伊織が放つ鋭い打球、ダイヤモンドを疾走する姿にも注目してもらいたい。

in Additionあわせて読みたい