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特集:第50回明治神宮野球大会

関大が2年ぶりの明治神宮大会へ 「努力でここまできた選手」関本英実の夢

天理大戦で関本は着実に出塁し、チームに攻撃のきっかけをもたらした

第50回明治神宮大会関西地区代表決定戦 決勝

10月28日@大阪・南港中央野球場
関西大 3-1 天理大

1、2回生が中心の若い打線が持ち味の関西大学野球部だが、数少ない4回生としてスタメン出場しているのが関本英実(4年、日高)だ。ベンチのほとんどがスポーツ推薦で入学した名門出身選手で埋まる中、関本は一般入試で関大に入学し、そしてスタメンを勝ち取ってきた。迎えた関西地区代表決定戦決勝、「最後(のシーズン)だから緊張しても仕方がない」と腹をくくった。

緊張の一戦、ヒットを重ねて着実に出塁

神宮大会出場権をかけて各リーグの優勝校がトーナメントで戦う関西地区代表決定戦で、スーパーシード権を持つ関大は決勝が初戦だった。相手は天理大。たった1勝で関西第一代表として神宮に進める権利は、有利でありながらプレッシャーでもあった。試合前、ナインの表情からは緊張感が伝わった。選手たちは天理大の松井石根(4年、大産大附)に次々と打ち取られた。そんな中でも関本は着実にヒットや相手のミスで出塁し、チームに攻撃のきっかけをもたらした。

4回には今季絶好調の坂之下晴人(2年、大阪桐蔭)が先制適時打で1点を奪った。先発投手の森翔平(4年、鳥取商)も気迫溢れるピッチングで虎の子の1点を守り抜く。

追加点を挙げたい打線と、それを許さない天理大投手陣。拮抗した試合が続く中、最終回に1-0のスコアが動いた。8番坂之下がヒットで、9番森が相手の悪送球で出塁し、無死一、二塁の絶好機。しかし1番安藤大一郎(2年、西条)がスリーバントに倒れると、塁を飛び出してしまった坂之下も刺されてツーアウトに。一気に流れが天理大に傾いたと思われたが、それを関本が許さない。左方向へのヒットで、勝利の女神をなんとか関大に留まらせた。そして3番上神雄三(1年、佐久長聖)が劇的タイムリーで2点を追加した。

関大は明治神宮大会へ2年ぶり7度目の出場をつかんだ

4打席3安打の大活躍で勝利への流れをつなぎ続けた立役者を、試合後に早瀬万豊監督も「よくやってくれた」と手放しで称賛。そのまま関大は3-1で勝利し、悲願の関西王者として神宮出場を決めた。

欲を出さず、チームメイトを思いながら

「努力でここまできた選手」と指揮官も評する関本は、関大入学前に野球部の練習会に参加した。「関大で野球がしたい」と願い、猛勉強。入学後はそうそうたる同世代選手に圧倒されながらも、2回生の春にベンチ入りを果たした。そのシーズンに果たした初打席は、東克樹(現・横浜DeNAベイスターズ)がノーヒットノーランを達成した試合だった。「そんだけ抑えられてたから、思い切って振った」という打球は、しっかり外野フライだった。

「守備が持ち味」と自身で語るように、今季途中までサードの守備堅めとしての出場がメインだった。そして秋リーグ終盤、第7節対近大2回戦でスタメンを獲得。バッティングセンスを光らせた。

関本自身も「守備が持ち味」と言う

「フォアボールでもエラーでもなんでもいいから出塁する気持ちで、欲を出さず」と、塁に出ることだけを考えて打席に立つ。試合に出られない4回生や、練習補助で毎日グラウンドに足を運んでくれる同期の思いが関本を奮わせた。「厚かましいけど、自分はその代表として出てるからみんなの分まで」と、チームメイトへの愛は強い。

チームを愛する以上に愛されている男

応援中、多くの選手が名字でコールされる中、関本だけは違う。打席に立ったり、好守を見せたりする度に、スタンドからたくさんの「ひでみ! 」と下の名前で声援が送られる。「ちょっと恥ずかしい」と、下の名前での応援されることには少し照れもあるが、関本がチームを愛する以上に、関本自身が愛されている証拠だ。

関本が活躍すると、スタンドからは「ひでみ! 」という声が飛ぶ

2年前の神宮大会では、ベンチで創価大に敗北する仲間の姿を見届けた。そして芽生えた「やっぱり自分が出たい」という思い。勝っても負けても最後となるこの舞台で、「出場するだけでは終わりたくない」と全国で勝つ意味の大きさをかみしめる。「若い子たちが出て、自分がそれをつなぐ」と、関本は自分らしい戦い方を語った。

神宮への道をつないだ男が今度は聖地で、打線も流れも勝利もすべてつないでみせる。

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