大学アメフト

特集:第74回甲子園ボウル

早稲田アメフト吉澤祥 優勝決めた法政戦で2タッチダウン、強い心で駆け抜ける

吉澤は法政戦の後半から出場し、二つのタッチダウンで勝ちに貢献した(すべて撮影・北川直樹)

アメフト関東大学リーグ1TOP8 第6

1110@横浜スタジアム
早稲田大(6勝)35-28 法政大(42敗)

アメリカンフットボールの関東大学1TOP8の第6節で早稲田大が法政大を逆転で下し、開幕6連勝とした。同時に1敗のチームがなくなったため、最終節を待たずに早稲田の2年連続6度目のリーグ優勝と全日本大学選手権進出が決まった。

 後半から登場、相手の勢い断ち切るラン 

早稲田は14-28と法政にリードされて試合を折り返した。後半にようやく攻守がかみ合い、試合をひっくり返した。今シーズンの早稲田にはスロースターターの傾向があるが、この日も同じ。それでも21-0だった後半の勝負強さはさすがだった。中でも、法政の勢いを断ち切ような走りを見せたRB吉澤祥(2年、成蹊)が輝いた。 

吉澤(左から4人目、25番)のこの日二つ目のタッチダウンで勝ち越した瞬間

吉澤は第3クオーター(Q4分すぎに逆転への勢いをつける20ydのタッチダウン(TD)ランを決め、第4Q10分すぎには勝ち越しのTDを挙げた。早稲田は昨シーズン、エースRBの元山伊織(現コーチ)が走りと明るさでオフェンスを引っ張っていたが、今年は絶対的なエースがいない。広川耕大(3年、早稲田実)、荒巻俊介(同、早大学院)、中野玲士(4年、同)、そして吉澤の4人がローテーションで出場している。コーチ陣からの評価も横一線で、普段の練習からスターター争いは熾烈(しれつ)だ。 

この日のスターターは広川。吉澤は後半から出始めた。前半戦をサイドラインから眺めていた吉澤は、法政の勢いあふれるディフェンスを見て、「いままでの相手より大きくて、圧力がすごい」と感じていた。加えて今シーズン初めて相手を追いかける展開になったこともあり、多少の不安もあった。 

しかし、いざ出番となると「これから逆転できる。アツい展開で試合に出ることに対するワクワク感の方が大きくなりました」と吉澤。RBコーチの中村多聞さんからは、「とにかく足をかき続けろ」と言われてフィールドに入った。ゴール前20ydで自分のランがコールされると「よし、やってやる」と思った。「相手を見すぎて一瞬足が止まってしまったんですけど、ホールが見えたのでがむしゃらに走りました」。一気にエンドゾーンまで駆け上がった。これが反撃ののろしとなる1本目のTDだ。2本目のTDは試合残り2分を切っていた。28-28の同点で、早稲田オフェンスは第3ダウンでゴールまで1ydに迫っていた。勝ち越しを託された吉澤はQBからボール手渡されると、OLDLのぶつかり合いでできた壁の上に勢いよくジャンプ。ボールをエンドゾーンにねじ込んだ。35-28。法政の反撃をしのいだ早稲田が、2年連続のTOP8優勝を決めた。

タッチダウンを決め、OLに持ち上げられる吉澤(中央上)

京大アメフト部に思い描いたバラ色の学生生活 

吉澤は、小4から高校卒業まで野球少年だった。中学までは野球に加え、サッカーや水泳、ハンドボールとさまざまなスポーツに取り組んだ結果、いろんな体の使い方が身についた。それがいま、アメフトのフィールドで生きている。バランスのいい走りを見ていると、とてもフットボールを始めて2年弱とは思えない。 

2の冬にテレビでNFLを見て衝撃を受けた。「速くて、デカくて、強い人たちが思いっきりぶつかり合ってました。それに、身体能力がものすごい。こんな究極のスポーツがあるのか、と思いました」。吉澤はアメフトに魅了され、大学からアメフトを始めると決めた。同時にこう考えた。「日本一を目指せるレベルでスポーツをしたことがなかったので、日本一を狙えるチームでやりたい」と。 

受験の第一志望は京大だった。京大のアメフト部が強いということは、親や塾の先生から聞いて知っていた。「京大に受かったらカッコいいな」という気持ちもあった。自由で、賢い人が多い。その上、自分はアメフトをやる。どんなに理想的な学生生活が送れるのかと想像していた吉澤は、笑って言う。「いま振り返ると、バカみたいな考えですね」。ともかく京大に対するあこがれは大きかったという。しかし、浪人しても京大合格はかなわなかった。結果として、近年の甲子園ボウルの常連、早稲田への進学が決まった。 

入学すると、迷わずにビッグベアーズに入った。初めはみんなが口にしているアメフト用語がまったく分からなかった。「でも、聞くとみんな教えてくれました。そういう意味でもチームメートには恵まれてます」。すぐになじんだ。ポジションを希望する際、野球やハンドボールで培ったボール感覚と、得意な走りが生かせそうなRBを希望した。春のシーズンにあった日体大との「新人戦」でそこそこ走れた感覚があり、「いいスタートになったかな」と感じたという。そして吉澤はアメフト経験者にまじり、徐々に頭角を現していく。

いまはとにかく思いっきり、前へ

自分でこじ開けて走れるランナーになりたい

 練習意識しているのは二つだそうだ。「多聞さん(中村コーチ)に指摘されたことを、毎日一つでもできるようにすること。それと、何でもとにかく思いきりやること」。そして今シーズンからRBとして試合に出られるようになった。去年のエースランナーだった元山コーチは「いまどき珍しいタイプで、真摯(しんし)なスポーツ少年という感じです。どんなにしんどい練習でも絶対に音を上げない。精神的に強いです。身体能力の高さはもちろん、メンタルの安定が試合での活躍につながってると思います」と、後輩をたたえた。

 1124日のリーグ最終戦を待たずに、優勝と全日本大学選手権出場が決まっている。121日の東日本代表決定戦で東北大に勝てば、2年連続の甲子園ボウル出場だ。

 吉澤が日本一を狙うチームのRBとして目指すのは、自分の力で勝たせられるRBになることだ。「いまはOLの先輩たちに走らせてもらってるだけです。しんどい場面であっても、自分で道をこじ開け、悪い状況を打開できるようなRBになりたいです」。いま自分にできることをやりきってビッグベアーズの勝利に貢献するのが、吉澤の生きる道だ。