大学アメフト

日大アメフト宮川泰介 感謝を胸に立った、あの日以来のフィールド

リーグ戦も残り2試合となって、宮川(91番)がフィールドに戻ってきた(すべて撮影・北川直樹)

関東大学リーグ1部BIG8 第6節

11月17日@東京・アミノバイタルフィールド
日大(6勝)41-3 横浜国立大(4勝2敗)

日大アメリカンフットボール部の“悪質タックル”問題で、傷害容疑で告訴されて書類送検されていた内田正人・前監督(64)と井上奨(つとむ)・元コーチ(30)、タックルをしたDLの宮川泰介(4年、日大豊山)の3人について、東京地検立川支部は1115日、不起訴処分にすると発表した。これを受けて、今シーズンこれまで出場を自粛していた宮川が17日の横浜国大戦にスターターで登場。1試合を通じてディフェンスの最前線で躍動した。日大は全勝を守り、最終節の12月1日に5勝1敗の桜美林大と対戦。勝てば来シーズンの1部TOP8昇格が決まる。負ければ昇格をかけてTOP8の7位校と入れ替え戦で対戦する。

体が大きいから、というだけではない迫力

試合前に報道陣に配られるスターター表に宮川の名前があった。昨年5月6日以来のことだ。あの日、関西学院大との定期戦の舞台と同じ東京・アミノバイタルフィールドで、日大の91番がフィールドに戻ってきた。日大の試合前の恒例行事である「メンバー」。主将の贄田(にえだ)時矢(4年、日大鶴ケ丘)はスターターのメンバーを読み上げるとき、宮川の名前だけ、叫んだ。そして「戻ってきたぞ、やっと全員そろったぞ」と大声で言った。

試合が始まると、宮川は守備の最前列に4人並ぶDLの左端か右端にセットし、横浜国大のOLとの当たりを繰り返した。DLの勲章であるQBサックはなかったが、OLのブロックを外し、走ってきたRBやQBをタックルした。まだ一連の動きにスピードが足りず、追いタックルになっていた。

それでも宮川には、最近の日大の選手にはない圧倒的な迫力があった。試合に出られない間も筋力トレーニングに励み、体重は15kg増えた。ただ、その迫力は身長184cm、体重105kgの堂々たる体格だけから感じたのではない。絶対に前には進ませないというディフェンスの選手としての本能、チームを勝たせるという気持ちが、真っ赤な91番のユニフォームから発散されているように感じた。


ヒットでは相手のOLを圧倒していた

宮川はこの試合後、橋詰功監督とともに記者会見に臨んだ。
最初に、けがをした関学の選手、家族、関学アメフト部、日本のアメフト界全体に対し「多大なるご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます」と言って、頭を下げた。

昨年5月6日以来となった試合でのプレーについては「自分のプレーどうこうは全然。まだ未熟なので、日々の練習で取り組んでいくだけだと思います」と話した。リーグ戦最終盤での復帰になったことについて聞かれると、「すべては自分のしてしまったことなので、試合ににたとえ出られなかったとしても、チームのために少しでもプラスになればと思ってやってきました。自分が試合に出られるか出られないかは、そこまで大きな問題ではないです。自分のしてしまったことがなくなる訳ではないので、手放しで『うれしい』とは言えないです」と返した。

あの日と同じ試合会場で、宮川は戦列に復帰した

仲間に対してあまりにも無責任、とチームに戻った

1度は「自分にはフットボールを続ける資格はない」とチームを離れたが、また仲間のもとへ戻ってきた。その心の動きについても質問が飛んだ。
「絶対にしてはいけないことをしてしまった訳で、多大なる迷惑をかけたので、自分にはフットボールをやる資格がないと考えました。それで1度は『やめる』と言ったんですが、あんな大きなことをしてしまって、チームを立て直そうとするチームメイトたちに対して、自分がいなくなることが正解なのか。あまりにも無責任なんじゃないかと思って、戻ることにしました」。かみしめるように、宮川は答えた。

記者会見で橋詰監督(右)が宮川のことを「筋トレ大好きなんです。試合の当日もやってますから」と言った。このときだけ、91番が笑った

周りを見たら絶対に仲間がいる

後半が始まる前、宮川は仲間たちに声をかけた。「試合に出てる出てないとか、オフェンスかディフェンスかに関係なく、周りを見たら絶対に仲間がいる。一つになって戦おう」と。チームメイトにこれまで助けてもらった部分が大きく、その感謝を込めた言葉だという。

リーグ最終戦に向けては「目の前の練習に取り組んで、試合にそれを出すだけなので、日々目の前のことだけに集中して一歩一歩やって、試合に臨むだけだと思います」と語った。

2年前の甲子園ボウルで活躍して、27年ぶりの大学日本一に輝いたときには、当たり前だが、こんな最後は考えられなかった。すべてを真っ向から受け止め、宮川は仲間たちと2週間後のリーグ最終戦に臨む。フェニックスでの4年間の最後として、臨む。

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