愛知工業大・木造勇人、経験値を武器につかんだ学生個人初タイトル
全日本学生選抜卓球選手権 男子決勝
11月24日@埼玉・所沢市民体育館
木造勇人(愛知工業大2年)4-2 田中佑汰(同1年)
卓球の全日本学生選抜選手権・男子決勝は愛工大同士の顔合わせとなり、木造勇人(2年、愛工大名電)が田中佑汰(1年、同)を下し、初優勝を飾った。
世界を知る男、意外にも学生個人初タイトル
木造はカブ、ホープス、カデットと各カテゴリーで全日本選手権を制し、中学・高校時代はタイトルを総なめ。2019年全日本卓球選手権でも張本智和とのダブルスで優勝し、世界選手権にも出場しているが、意外にも学生の個人タイトルはとっていなかった。
チャンスがなかったわけではない。大学入学後初めての個人タイトルをかけた昨年の全日本大学総合選手権・個人の部(全日学)では、上位トーナメントで1回戦敗退。今年の全日学は専修大の及川瑞基(4年、青森山田)に敗れて準優勝に終わっていた。「及川さんは海外のトップ選手とどんどん試合をやってます。負けたのは実力不足です」と、完敗を認めた。
「静かに、落ち着いてやろう」
冷静なプレーぶりが光った木造だったが、この大会を迎えるまでにはさまざまな葛藤があった。「及川さんがこの大会に出場しないのは、全日学で本人から聞いてました。及川さんがいないから、負ける人はいないだろう」と自信を持って臨んでいた。一方でモチベーションを上げるのが難しかったという。「予選リーグで明治の龍崎さん(東寅、3年、帝京)と対戦した時は、相手どうこうでなく、自分としてやりづらい部分があって、どうやって戦えばいいのか本当に分からなかったです。その割にプレーはよかったので、このまま変えずにいこうかなと思いました」「全日学のときは声を出してたんですけど、今大会は静かに、落ち着いてやろうと。それが最初から最後まで続けられたのかな」
予選リーグを全勝で通過した木造は決勝トーナメントも順調に勝ち上がった。「決勝までは余裕を持って落ち着いてプレーできました」と振り返った。ただ決勝の相手が「ちょっとやりたくないな」と思っていた後輩の田中佑汰だった。「結構やりづらくて。決勝はやっぱり部外(学外)の方がいいですね。気持ちとしても向かっていけるので。ただ、コートに立てば同士打ちとか関係なく普通にプレーすることができて、内容もよかったです」
田中に追い込まれる場面もあったが、最後は木造が勝ちきった。「まあ経験値は自分の方が上かな」との言葉通り、世界選手権やワールドツアーでの経験を武器につかみ取ったタイトルだった。
プレッシャーを感じながらも勝てる、強い選手に
木造は現在、Tリーグ琉球アスティーダにも所属している。「全然違いますね。やり慣れてない選手ばかりですし、質の高い練習ができる。大学でもレベルの高い練習ができますが、最高のパフォーマンスでできるかと言われれば、ちょっと限られてしまうのではないかなと思います」。大きな刺激を受けているようだ。
今後の目標として木造は「来年1月の全日本選手権でシングルスは決勝進出、ダブルスはまた優勝を狙いたい」と口にした。そして「強い選手になりたい」とも。「強い」とは「プレッシャーを感じながらも勝てる選手」と自分なりに定義した。その強さに一歩でも近づくためにも、全日本選手権でさらなる高みを目指す。