陸上・駅伝

皇學館大・川瀬翔矢 10000mで28分26秒と躍進、三重から狙う学生NO.1

ゴール後にガッツポーズをする川瀬(撮影・藤井みさ)

八王子ロングディスタンス2019

11月23日@法政大多摩キャンパス陸上競技場
男子10000m5組 1位 川瀬翔矢(皇學館大3年) 28分26秒37

11月23日の八王子ロングディスタンス(LD)。例年好記録の出るレースとあって、実業団選手のほか、関東だけでなく全国の大学からも実力派のランナーたちがエントリーしていた。皇學館大の川瀬翔矢(3年、近大高専)も、その一人だった。

ギアを入れ替え、あざやかなラストスパート

川瀬がエントリーしたのは、目標タイムが28分30秒に設定された男子10000mの5組。同じ組には立命館大のエース今井崇人(4年、宝塚北)と高畑祐樹(同、水口東)、創価大のエース米満怜(同、大牟田)らが名を連ねた。

雨が降り続く寒い日で、気温は11度。風はほとんどない中でレースが始まった。ペースメーカーのイェネブロ・ビヤゼン(八千代工業)がペースを刻み、縦長の集団ができる。川瀬は序盤、集団の後方でレースを進めた。4000mすぎでアクシデントがあったのか、ペースメーカーが外れてしまう。松本稜(高知工業高~トヨタ自動車)が先頭に立ち、5000mの通過は14分19秒。川瀬は次第に集団の前に出ていき、6000m付近で作田直也(順天堂大~JR東日本)とともに先頭に立った。集団は次第にばらけたが、川瀬のペースは落ちない。ラスト1周の鐘が鳴ったところで27分27秒。川瀬は猛烈にスパートし、最後の1周は59秒でカバー。28分26秒37の好タイム。この組のトップで、両腕を広げてゴールした。

ラスト1周、川瀬のギアがいっきにあがった(撮影・藤井みさ)

10000mの東海学生記録を更新。1週間前、11月17日の日体大記録会では5000mで13分36秒93の東海学生新記録を出していた。これで川瀬は今年2月の犬山ハーフマラソンで出した1時間3分54秒と合わせ、三つの東海学生記録保持者となった。

監督も笑顔の快走

川瀬に付き添っていたマネージャーに思わず「すごいですね」と話しかけると、「はい、すっごく調子がいいです!」と笑顔で返してくれた。寒い中教え子の走りを見守っていた日比勝俊監督も、教え子の快走に笑顔だった。

皇學館大は10月の出雲駅伝と11月の全日本大学駅伝に出場した。日比監督によると、出雲駅伝のときも川瀬の状態は悪くはなかったが、不完全燃焼だった。20位で襷(たすき)を受け取った川瀬は、区間7位だった。本来の走力を考えれば、確かに少し物足りない結果だった。

川瀬は伊藤と同時に襷リレーしたが、一気に離された(撮影・安本夏望)

その後の記録会で1年生以来の自己ベストとなる5000m13分49秒25を出し、いい状態で全日本大学駅伝に臨んだ。「でも、2区で伊藤達彦(東京国際大4年、浜松商)にちぎられて、これでもか! ってぐらいやられたんですよ。その悔しさがあったから、いまがあるという感じですね」と、日比監督が教えてくれた。区間11位ながら区間新記録だったが、区間賞の伊藤には47秒もの差をつけられた。

学生ナンバーワンランナーを目指したい

川瀬自身も、いまの状態に手ごたえを感じている。「昨シーズン苦しんで、成功体験、失敗体験をつなげてきて。よくも悪くも、積み重ねてきたことがこの結果につながってると思います」。全日本があったからいまがあるという監督の言葉を伝えると、「負けて楽しくなったんです。まだまだだな、って。(全日本大学駅伝前に5000mを13分)49(秒)で走って、自信を持って臨んだんですけど、負けて楽しいなって逆に燃えてきました」。まだまだ上には上がいる。だが届かない距離ではない。自分の潜在能力を信じられているからこそ、そう考えられるのだろう。

自分の走りで、東海学生駅伝に出るチームに弾みをつけたいと言っていた川瀬。いい流れのままに、12月1日の東海学生駅伝では皇學館大Aチームが優勝し、来年の出雲駅伝出場を決めた。7区間で川瀬を含む4人が区間賞、うち3人が区間新という圧倒的な強さだった。

川瀬に聞いた。さらに上を目指しますか?  もちろん答えはイエスだ。「もう一つ上を狙っていきたいです。来年は(10000m)27分台と(5000m)13分20秒台が目標です。学生ナンバーワンランナーを目指していきたいです」。頼もしい言葉が返ってきた。「地元を盛り上げたい」と三重に残ったランナーの快進撃が、大学長距離界をさらに面白くする。

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