野球

「ひとづくり・まちづくり」がコンセプト 2回目の大学野球オータムリーグ@静岡

普段は戦うことのない筑波大(手前)と静岡大の試合(すべて撮影・栗山司)

「大学野球オータムフレッシュリーグin静岡」が静岡市で11月22日から3日間に渡って開催された。「ひとづくり・まちづくり」をコンセプトに、今年で2回目となるイベント。東京六大学連盟の慶應義塾大、明治大、東京大、早稲田大、東都大学連盟の國學院大、首都大学連盟の筑波大、愛知大学連盟の中京大に加え、静岡県内の静岡大、東海大海洋学部、日大国際関係学部が参加。さらに静岡市内の高校チームとも試合をした。

一浪して東大に進んだ選手が、母校静岡高との試合で打席に

このリーグの大学生選手は1、2年生が主体。あくまで次世代の主力選手育成が目的となる。とくに部員数の多いチームにとっては、下級生が試合経験を積める貴重な機会となるのだ。
慶應義塾大の一員として出場した小川慶太(2年)は「オフシーズンに近づくにつれて実戦の機会が減ってくるんですが、こういう試合があることで自分の野球勘を養えたり、自分に足りない部分を確認したりできます」と感謝する。

静岡商業高は4-2で早稲田大に勝った

一方で地元静岡の大学チームにとってもメリットが大きい。静岡大の高山慎弘監督は「普段はなかなか対戦できない強豪大学さんと、リーグ戦に近い緊張感の中で試合ができる。選手のレベルアップにつながっています」と語る。
実際、この秋のプロ野球ドラフト会議で阪神に育成で指名された静岡大の奥山皓太(4年)は、昨年のオータムリーグの早稲田戦に出場し、3安打の活躍。自信をつけて飛躍のきっかけにしたという。

2回目の開催となった今年は初日こそ雨の影響で中止になったが、残る2日間は晴天に恵まれた。11月23日の早慶戦では、オールドファンがスタンドで応援歌を熱唱。また、24日の東大―静岡高戦では、静岡高から一浪で東大に入った奥田隆成(1年)が打席に立ち、大きな拍手が沸き起こった。

また、試合だけでなく、大学生による地域貢献プログラムも展開。対象を未就学児、学童、高校生と三つのカテゴリーに分けて野球教室を開き、地元の子供たちとの交流をはかった。

夏から準備を始め、11月までやりきった企画チームの学生たち

「企画チーム」が裏方で支える

すべてのイベントを陰で支えているのが「企画チーム」と呼ばれる大学生たちだ。今年は22人が夏前から準備を進めた。仕事は企画から始まり、準備、運営はもちろん、広報活動までと多岐に渡る。

「このチームで活動したことで、人間的に成長できました」
そう語るのが企画チームの一員だった静岡大4年の森田健明さん。春のシーズン限りで野球部は引退したが、「選手という立場以外でも野球に携わりたかった」と、志願して企画チームに入った。
「僕は高校時代に弱いチームだったので、去年は選手としてこのオータムリーグで強いチームと試合ができて、野球をやってきて本当によかったと感じたんです。だから今年も何かしら携わりたいと思いました」

森田さんは大学の授業やアルバイトに取り組む一方、「オータムリーグを成功させたい」との一心で動き回った。パンフレット製作の手伝い、未就学児向け野球教室の手配、球場管理者とのやり取り……。これまでの人生で経験したことがないほど、フル回転で働いた。
「昼間は学校で実験して、夕方からバイト。家に帰ってから、夜はオータムリーグの資料を作っていました。とくに野球教室は、参加していただける子どもたちの保護者の方と一人ひとりメールでやり取りをするので神経を使いました。でも、毎日が充実しているなって思いながらやってました」

企画チームは関東組と静岡組に分かれていた。全員が集まるのは月に1回だけ。森田さんは、その会議で出たアイデアや問題点を静岡に持ち帰り、行動に移す役割も担った。
「大変だったのは、いろいろな仕事を同時に受け持つことでした。こっちに集中していたら、あっちが疎かになったり……。けっこうバタバタしてしまうことがありました」

そんな忙しい毎日を送る中、確実に自分の変化を感じていた。
「もともと、人とコミュニケーションを取るのが苦手なタイプでした。卒業後の就職先も研究職だし、コミュニケーションはあまり必要ないかなと思ってました。ただ、ここ数カ月で考え方が変わりました。どんな仕事でも人との関わりがあるし、コミュニケーションが大事だと。人間的に得るのがものすごく大きい時間でした」

同じく企画チームの慶應義塾大3年、吉田龍正さんも「貴重な経験でした」と振り返る。
「僕は夏の『サマーリーグ』でも関わったんですけど、自分で何かを企画し、人を動かすことはなかなかできないことなので、この経験は今後の人生に生きるかなと思ってます」

静岡でも好評だったストラックアウト大会

吉田さんは新潟で開催された「次世代育成大学野球サマーリーグ」で、ストラックアウト大会やシートノックツアーを企画。静岡ではさらにバージョンアップさせ、参加者を喜ばせた。

まさに選手と裏方が一体となり、学生の力で築き上げられる晩秋の一大イベント。野球を通した「ひとづくり・まちづくり」が静岡の地に根付こうとしている。

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