大学アメフト

東大生が初めてアメフト日本代表入り 新主将の唐松星悦はハングリー精神の塊

この鋭い目で、東大ウォリアーズの変わるべき姿を見すえる(すべて撮影・北川直樹)

アメフトの日本代表とTHE SPRING LEAGUE選抜との国際試合が3月1日、アメリカのテキサス州フリスコ市で開催される。2015年以来となる日本代表をつくるためのトライアウトで55人の代表候補が選ばれ、練習を経て45人の代表メンバーが決まった。社会人Xリーグの選手が42人、無所属が1人、大学生が2人だ。初めてフル代表に東大生が選ばれた。OL(オフェンスライン)の唐松星悦(からまつ・しんえ、新4年、浅野)。東大では新たな主将に決まっている。

 186cm、125kgの堂々たる体に、強い心

2月に7日間、川崎市の富士通グラウンドで、アメリカ遠征に向けた日本代表の練習があった。この練習を通じて、唐松の鋭く強いまなざしが印象的だった。「自分が代表チームの中で圧倒的に下手くそなんで、一つでも多く吸収してやろうという気持ちで取り組んでます」 

左タックルはチームで最強のOLが務めることが多い

対戦形式の練習では、Xリーグの猛者たちに必死で食らいついた。「正直、初めは力試しのつもりで、(日本代表になる)自信はなかったです。がむしゃらにベストを尽くすことにフォーカスして取り組みました。下手くそでも、ハングリー精神だけは誰にも負けない自信があります」。高校で本格的にアメフトを始めてから、体重は55kg増えた。身長186cm、体重125kgの堂々たる体の真ん中に、強い心がある。 

浅野中学校でタッチフット部に

もともと気丈だったわけではない。小学校までは運動が苦手だった。運動神経がよくて目立つ子たちの輪から外れていた自分が嫌だった。だから、受験して浅野中学校(神奈川)に進学が決まると、自分を変えるためにスポーツを始めようと考えた。「ぽっちゃり体形でスポーツ経験のない自分でもできそう」と、タッチフットボール部に入った。攻守のラインでプレーした。当初はあまり身が入らなかったが、浅野高校に上がると、先輩たちが強豪の法政二高と競った試合を目の当たりにして勝負の醍醐味を感じた。アメフトが楽しくなった。高1のとき70kgだった体重を90kgまで増やし、しっかりやりきろうと思った。 

浅野高校時代の唐松(中央の72番)。当時は攻守のラインを兼任していた

進学校の浅野高校で成績上位だったため、先生に勧められて東大を目指した。現役で合格すると、迷わずアメフト部ウォリアーズの一員になった。ポジションはずっと、OLの左タックル。右投げのQB(クォーターバック)の背中側を守る、大事なポジションだ。2年生のときにはU-19日本代表に選ばれて、この世代の世界選手権(メキシコ)に出た。同年代のトップ選手たちと練習し、試合に臨むことでいろんなことを感じ、得られるものも多かった。このとき、自分の経験をウォリアーズに還元するにはどうすればいいか、考えるようになった。 

本気で日本一を目指す集団に変えたい

昨秋のリーグ戦で、リードブロッカーとして走路を切り開く

東大は昨秋のシーズン、初めて関東大学リーグ1部のTOP8で戦ったが、15敗に終わった。上位校に競り負けた試合も多くて収穫もあったが、甲子園ボウルは遠かった。「詰めの甘さを突かれて負けました」。勝つためには、チームを根本から変えなければ。自分がチームを変えようと思い、主将に立候補した。新主将に関する部内の意見は、唐松かDB(ディフェンスバック)の助川左門(さもん、新4年、開成)かで分かれた。最終的に唐松の覚悟の強さを感じた助川が「お前に任すわ」と言った。 

日本代表の練習では社会人の選手たちに食らいついていった

日本代表のトライアウトに参加したのは「世界レベルのスタンダードを東大に持ち帰りたい」との気持ちからだ。「去年もチームは日本一を目指してたんですけど、どうしても口だけの部分があった。それを、自分がどうやって本気で日本一を目指せる集団に変えていくかが大事だと思ってます」。秋本番の勝負に臨んだとき、最後は気持ちの面でギアをどれだけ上げられるかにかかっている。唐松はそう考えている。 

まずはアメリカで、でっかい男たちを相手に唐松自身の「本気」をぶつける。

東大生がフル代表のメンバーに選ばれたのは初めてだ