昨秋王者の慶應義塾大学 やれることを積み重ね、新たな開幕日を待つ
東京六大学野球連盟は4月5日、5月下旬に開幕日を延期し、1試合総当たりの方式に変更してリーグ戦開催の準備を進めると発表した。秋春連覇に挑む慶應義塾大学は、困難な状況下でどんな準備をしているのか。堀井哲也監督に話を聞いた。
ポイントになるのは投手起用
1試合総当たりの方式に変更されたが、堀井監督は「通常の勝ち点制でも1戦必勝で臨んできたので、気持ち的にはさほど変わらない」と話す。ただし「1試合の重み、1球の重みがより色濃くなる」中で、戦い方が変わってくるところもあるという。
特にポイントになるのが投手起用だ。慶應はともにドラフト候補の佐藤宏樹(大館鳳鳴)と木澤尚文(慶應義塾)の4年生左右両腕を擁すなど、投手層が厚いと言われる。豪華リレーが見られるかもしれないが、堀井監督は「リーグ戦の日程も決まっていない今の段階では、具体的な起用法のイメージは湧かない」と慎重だ。
3月末までは練習もオープン戦も予定通りに行い、本来の開幕日であった4月11日に合わせて調整していた。だが学校からの要請で4月1日からは野球部としての活動が休止になった。できるのは個人で行う最小限の自主練習のみ。こうした中で、選手は仕上がっている状態を落とさないようにしなければならない。
「ですから、部としての活動が再開した時点で、新たな開幕日を見据え、調子がいい者を見極めることも必要になると思います」
部員全員が毎日の行動を詳細に報告
野球部としての活動は休止しているが、堀井監督は部員全員の毎日の様子を把握している。選手はその日の検温の結果から、コンビニに行った時間や、必要があって接触した外部の人が誰かなど、全ての行動を詳細に報告することになっており、堀井監督は毎朝合宿所に行って、これをチェックしているという。「平時ではないので、まずは手洗い、うがいを徹底するなどして、(新型コロナウイルスに)うつらない、うつさないことが第一。その上で慶應の学生としての社会的な責任を果たしてほしいと思っています」
1日の行動報告の中には、ランニング何分、スイング何本といった自主練習の内容も含まれる。堀井監督は活動が休止になる前に、選手のモチベーションを保つために課題を与えた。「本当は全員に与えたかったんですが、(休止までの)時間的な余裕がなかったことから、約半数の50名ほどの部員に伝えました」。対面での指導はできないが、選手からスイングなどの動画を送ってもらい、リモートでの指導はしているという。
リーグ戦の試合数が減ったことで、プロ入りを目指す選手はそれだけアピールする機会が減った。だがこれについては「他の部員も条件は同じ」と考えている。
「一般企業に就職を希望している選手もOB訪問ができなかったり、会社説明会や面接が中止になっていますからね。制約がある中で、やれることを精一杯やるしかありません」
気持ちを切らさず、できることを積み重ねる。困難な状況下でも、いや困難な状況下だからこそ、昨秋王者の慶應はぶれていない。