大学野球

連載: プロが語る4years.

慶大4年生の秋、無理やり打った23号本塁打 元プロ野球巨人・高橋由伸さん1

リラックスした表情で大学時代を振り返ってくれた高橋さん

輝かしい舞台で躍動するプロアスリートの中には、大学での4years.で花開いた人たちがいます。そんな経験を持つ現役プロや、元プロの方々が大学時代を中心に振り返る連載「プロが語る4years.」。第5弾はプロ野球・読売ジャイアンツ(巨人)の中心選手として18年間プレーし、ベストナイン2度、ゴールデングラブ賞を7度獲得した高橋由伸さん(44)です。3シーズンに渡って監督も務め、現在は球団特別顧問。野球解説者としても活動されています。3回の連載の1回目は東京六大学野球の通算本塁打記録を塗り替えた慶應義塾大4年生の秋や、マウンドに上がった3年生の春についてです。

苦しいときはバカになって前向きに突き進め 川崎ブレイブサンダース篠山竜青・4完

新記録を達成し、ドラフト1位で巨人へ

1997年9月28日、秋の東京六大学野球リーグ、慶應義塾大-法政大の2回戦。4-2と慶應がリードして迎えた7回1アウトで、高橋さんが左打席に立った。1ボールからの2球目。安藤優也(元阪神タイガース)が投じた2球目、外角高めのストレートをとらえた。打球は神宮球場のライトスタンド上段へ飛び込んだ。東京六大学新記録となる通算23本目のホームランだ。新記録達成の場面は、鮮明に覚えているという。
「ボール気味だったんですけど、無理やり打ちにいった感じでした。あの試合は勝ってましたし、バットの届くボールには手を出そうと思ってました」

新記録の通算23号ホームランを放った高橋さん(撮影・朝日新聞社)

それまでの記録は、阪神タイガースなどでプレーした田淵幸一さんが法政大時代に放った22本だった。現在も高橋さんの23本塁打のリーグ記録は破られていない。最近では慶應の後輩である岩見雅紀(現・楽天イーグルス)が2017年に21本にまで猛追したが、届かなかった。高橋さんが振り返る。

「1本出てホッとしました。田淵さんの記録に並んだときから意識はありましたし。記録をつくったあとは、ホームランより僕の進路のことでザワザワしてて……(苦笑)。結局、秋はその1本しか打てなかったですからね」

当時のプロ野球ドラフト会議は社会人と大学生に限り、逆指名の権利が与えられていた(1、2位のみ)。大学ナンバーワンのスラッガーが入団を希望するのはどの球団なのか? 新記録達成後、メディアの注目は高橋さんの進路へと移っていった。そしてリーグ戦終了後、高橋さんは読売ジャイアンツを逆指名した。

入団1年目からレギュラーを獲得し、打率3割、19本塁打という活躍。以後、現役の18年間、ジャイアンツの中心選手として1819試合に出場し、通算1753安打。通算本塁打は321本。8度のリーグ優勝(うち4度は日本シリーズ優勝)に貢献した。

「慶應の野球は楽しかった」と高橋さん

プロをはっきり意識した2年生の秋

慶應でもルーキーの春から東京六大学のスター選手として活躍してきたが、プロをはっきりと意識したのは2年生の秋ごろだという。秋のシーズンを終えて、2学年上の高木大成さんが西武ライオンズを逆指名し、ドラフト1位で指名された。高木さんは高橋さんにとって桐蔭学園高校(神奈川)と慶應での先輩で、高木さんはいずれも最終学年でキャプテンを務めていた。

「それまでは自分がプロ野球へ行ってどれぐらいできるのか、自分でも自信があるような、ないような……、よく分からなくて。気持ちはもう7~8割、プロの方に傾いてはいたんですけど、自分がプロ野球選手になるのかな……どうなのかな……って。慶應の野球部は実力があっても卒業後は野球を続けない先輩が結構いたこともありましたし。それに、慶應の野球が楽しかったというのもありましたね。環境が変わること、先へ進むことに対する若干の現実逃避もあったかもしれないです」

気持ちを固められずにいた高橋さんに、慶應の後藤寿彦監督(当時、現・JR西日本野球部総監督)が声をかけた。「そろそろちゃんと本気で取り組まないともったいないぞ、という話をされて。それから意識が変わりましたね」

翌年、大学3年生の春のリーグ戦は、4年間で最高の成績を残した。5本のホームランを放ち、18打点、打率は5割1分2厘をマーク。本塁打王、打点王、首位打者の3冠に加え、外野手としてベストナインにも選ばれた。

「意識、取り組みが変わったことが、成績につながりました。やっただけの成果が出たんで、よかったです。そのあたりからやっぱり、取り組み方も目指すところも、だんだんプロの方に向いていったかなと思います」

今年7月、日米大学野球の第5戦で始球式に臨んだ高橋さん

3年生の春はマウンドに立って145km

このシーズン、高橋さん自身は見事な成績を残したが、チームは5位に沈んだ。同期のエース林卓史(前・慶應大野球部助監督)が5勝を挙げる活躍だったが、2番手として期待されていたピッチャーのけがなど、台所事情が苦しかった。ついに高橋さんにも出番が回ってきた。2試合で計2イニングに登板。球速145kmをマークして、神宮の観衆を沸かせた。

「この年はピッチャーが足りなかったんで(苦笑)。高校まではピッチャーもやってましたから、試合の終盤でちょっとこう、人数合わせって言ったらあれですけど、投げたりしましたね。(145kmと表示されたときは)投げたあとに球場がどよめいたんで「どうしたのかな」と思ったら、そんな数字が出てたみたいです。『久々に投げた割には意外と出るもんだなぁ』と思いましたね」

続きはこちら 運も味方につけ、慶大主将としてリーグ優勝

 

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