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新型コロナに負けない! 京大など25大学の応援団が初めて手を組み、応援を力に

「頑張ろう日本」をテーマに、国内25大学の応援団がいま、日本にエールを送っている(写真は昨シーズンの京大応援団の様子、写真提供:京都大学応援団)

新型コロナウイルスの感染が広がる中、日本に少しでも元気を取り戻せればと、国内25大学の応援団が「全国大学応援団」として立ち上がった。本来、応援団は自分たちの大学の力になるべく力の限りを尽くし、我がチームに応援を捧げる。そのため、相手チームの応援団は基本的に敵だ。しかし、不安が広がり続ける状況を打破しようと全国の応援団が初めて手を組み、ツイッター上でエールを送り始めた。

普段は「敵」、だけど今回だけは「仲間」

企画を発案したのは第六十四代京都大学応援団団長の森谷勇志(4年、茨木)。先行き不透明な状況に多くの人々が不安を抱えているいま、応援を力に変えてきた自分たちだからこそできることがあるのではないか。そう考え、3月25日ごろからまず、直接つながりのあった大学の応援団に打診。そこから具体的にどんなことを発信していくかを詰めていき、3月29日、企画書を提示して全国の大学応援団に呼びかけた。

全国で一致団結して「頑張ろう日本」をテーマにした動画をつくる。「これができるのは大学応援団だけだろう」という森谷の声に一つ、また一つと輪が広がっていき、最終的には25校(京大、一橋大、東北工業大、大阪大、大阪府立大、熊本大、同志社大、岡山大、近畿大、大阪市立大、関大、駒澤大、立命館大、西南学院大、関西学院大、神戸大、九州大、東海大、追手門学院大、國學院大、専修大、青山学院大、筑波大、明治大、立教大)の応援団がそろうことになった。

動画は4月8日に一斉発信された。以下は京大が発信している動画だ。

各大学の応援団がどんな動画を発信するか、その日まで森谷も知らなかった。前日の7日には7都府県を対象に緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛を呼びかけられるなど、各大学の応援団ができることにも制限があった。それでも「全国の応援団が一致団結して、いまできる最高の形でやってくれていると思いました。その気持ちが伝わる内容でした」と森谷。いつもであれば「他の大学に負けない応援を」という思いがある。しかし今回に関しては、「仲間」であることを強く感じたという。

「君が応援してくれたら勝てる」

森谷自身は高校までバスケ部だった。中1のときには身長160cmという体格を生かし、レギュラーとして活躍していたが、高校ではベンチに回ることも多かった。練習には真面目に取り組んできただけに悔しさはあったが、同じように頑張ってきた仲間たちが試合で戦っている姿を見て、「応援という形でもいいから勝ちに貢献したい」という思いも湧いてきたという。

大阪・箕面市出身の森谷にとって、大阪大は最も近い大学だった。地元の友人には大阪大を目指す人も多かった。しかし、「みんなと違うことがしたい」という思いから京大を目指すようになり、京大のオープンキャンパスで「面白そう」と感じた農学部に目標を定めた。2017年の春、1浪の末に京大へ。慣れ親しんだバスケではなく、新しいことに挑戦しようと思ったとき、当時の4回生だった応援団のリーダー部長が本当にかっこよかった。

そのまま新歓イベントで硬式野球部の観戦ツアーに参加。関西学院大相手に3-1で勝利し、京大は15年秋季リーグ戦以来となる勝利を収めた。強豪ぞろいの関西学生野球で京大が勝てるということに驚き、何より、自分が応援したチームが勝利に沸いていることがうれしかった。その硬式野球部の先輩からこうも言われてしまった。「君が応援してくれたら勝てるから、ぜひ応援団に入ってくれ」。心は決まった。

「自分の行動に責任は伴うけど、それでも大きなことをしたい」と思い、森谷は応援団長になった(写真提供:京都大学応援団)

京大応援団は現在18人。新入生を加えても、例年30人いれば多い方だ。他の有名私立大の応援団に比べると、どうしても数では勝てない。だからこそ、一人ひとりの意識が大切になる。「他大学だと応援は指導部やリーダー部が中心で、チアリーダー部と吹奏楽部はサポートという位置づけになることも多いと思うんですが、我々は3部一体で応援しています。例えば楽器が使えない球場だと吹奏楽部は楽器なしで声を張って応援しますし、ユニフォームが着られないチアリーダー部員もスーツ姿でエールを送ります」。戦術や分析を駆使し、自分たちの得意な分野で勝つことを得意とする京大の各スポーツ部を、応援団も全力で支えている。

やりたいことを貫く、そんな京大生らしく応援団を

過去3年を振り返り、森谷の胸にいまも刻まれている試合がある。1回生のときの関西学生野球秋季リーグ最終節、相手は近大だった。冷たい雨が降る中、京大は7回の表で1-1と追いついた。しかしのその裏で勝ち越しを許し、連盟規定により7回雨天コールドで敗れた。「本当に心から悔しくて、これまでの人生でここまで感情が高ぶることはありませんでした」。そのときの悔しさをバネに、「私たちの力でなんとかチームを後押ししたい。雨が降ろうがどんな状況だろうが、絶対勝たせよう」という強い思いを胸に宿した。

そして昨年の秋季リーグ、京大野球部は1982年に現在の6チームで関西学生野球連盟が発足して以来、初めての4位をつかんだ。首位打者とベストナインに輝き、今シーズンの主将となった北野嘉一(よしかつ、北野)は、同じ農学部食料・環境経済学科で学ぶ友人だ。北野が活躍し始めた2回生のときより、森谷はより一層応援が楽しくなり、ますます応援にのめり込んだという。

京大硬式野球部の新主将となった北野(右端)に、森谷は友人としても、応援団長としても期待している(撮影・安本夏望)

京大という名門大学に進んだ森谷にとっては、勉強に集中する選択肢もあった。それでも、いま応援に情熱を注ぐ毎日に迷いはない。「やりたいことを貫くことは大事じゃないかなって思うんです。京大は“自由の学風”とよく言われます。自分がやりたいことは、何も学問だけじゃなくてもいいんじゃないかな。私はそれがたまたま応援団だったというわけです。そんな京大生らしく応援団をしています」。応援魂が熱くたぎる。

応援に全力を注いできた森谷に、改めていま、「全国大学応援団」として発信している思いを聞いた。

「私たちがやっている応援という行為は、自分のためじゃなく他人のためにやることです。見てくれている人にも私たちのように、ぜひ自分のためじゃなくて、人のため、全体のために行動をしてくれたらうれしいなと思います。いろんなことが自粛となり、大変な思いをされていると思います。それでも家の中でできることはありますし、いままでできなかったことをするということもできます。気持ちを切らさず、いまできる最高の形で行動していきましょう」