大学野球

連載:いけ!! 理系アスリート

中学時代は父と二人三脚、京大野球部の新主将は反骨の男 農学部・北野嘉一(上)

北野高校の北野君は、高3の夏から猛勉強して京大に入った(すべて撮影・安本夏望)

連載「いけ!! 理系アスリート」の第25弾は、京都大学農学部食料・環境経済学科3回生で硬式野球部の北野嘉一(よしかつ、北野)です。北野は昨秋の関西学生野球リーグ戦で首位打者とベストナインに輝き、1982年の新リーグ発足以降で最高のリーグ4位に貢献しました。4回生となって迎える新シーズンは、主将としてチームを率います。2回の連載の前編は、高校までの野球人生と京大進学の話。どちらも、紙に書いてから行動に移すという共通の取り組みがありました。 

硬式のチームやめ、中学3年間は父と猛練習

小学1年生で野球を始めた。野球好きの父と、野球をしていた2学年上の兄の影響で、大阪府茨木市にある地元の少年野球クラブに入った。ショートとサードを守った。好きで始めたわけではない。「練習が嫌で……。周りのみんなが遊んでるのにバットを振らされてる。ひたすら『やらされてる』って思ってました」。北野の父はチームの指導者でもあった。ほかの子よりも叱られることが多く、泣かされることもあったという。それが、高学年になると楽しくなってきた。中学に入学すると硬式のチームに入ったが、雰囲気が合わない気がして、すぐにやめてしまう。 

中学時代は父と二人三脚で野球道にいそしんだ

中学の部活動で軟式を続けることも考えた。サッカーやボクシングといった新しいスポーツを始めることも頭にはあった。最後は、父の提案を受けて二人三脚で歩むことにした。そこからは父と猛練習の毎日。日の出前の朝5時からティーバッティング。真っ暗なところで、ひたすら振り続けた。わざわざ足場の悪い河川敷で守備練習。もちろん、練習だけで試合はない。モチベーションは「野球がうまくなりたい」という思いだけだった。 

北野は当時を振り返って語る。「あのときの自分がすごいなと思います。毎日、素振りや何km走る、筋トレをするとかやることを紙に書いて、学校に帰ってからやってました。何でそこまでできたのかは、分からないです。いま考えたらよくやってたと思います」。父の知り合いの元プロ野球選手の野球塾に行くこともあったが、ほぼ独学だ。練習メニューは自ら考えて、紙に書き記した。「このときに自分で考えてやるってことが身についたと思います」。父とともに歩んだ野球漬けの日々が、北野の糧となっている。 

北野高校3年の担任「頭がさびてしもたな」

「何でも一番になりたい」という性格から、大阪屈指の進学校である府立北野高校に進んだ。高校は野球部に入った。「やっと野球ができるっていう感覚だったと思います。勉強ができる高校の弱い野球部を、自分で強くしたいと思ってワクワクしてました」。仲間と白球を追う中学時代を過ごさなかった北野にとって、それは夢の世界だった。実戦経験の少なさから戸惑いもあったが、すぐに対応できた。守備だけをとれば、ボコボコの河川敷で練習していただけあって、チームメイトよりも上手だったという。守備力が買われ、高2の春にはレギュラーとして定着した。 

北野高校から京大で野球を続けた大先輩に「農学部っぽい」と言われた

京大への進学を真剣に考え始めたのは高2の秋だ。進路相談会に野球部の先輩で京大野球部に入り、ベストナインにも輝いた上田遥(はるか)さんが来た。上田さんの話を聞いてみて「京大で野球するのも、おもろそう」と興味を持った。上田さんは、説明会後に野球部の練習にも参加してくれた。北野は上田さんに、京大工学部を目指そうとしていると伝えた。すると「農学部っぽいけどな」と上田さん。「何でですか?」と聞いてみると、上田さんは「分からん」とだけ。このやりとりで、京大農学部を目指すことに決めた。

それなのに、高3の夏に野球部を引退するまで本気で勉強してこなかった。当時を振り返り「欠点ギリギリで耐えて、耐えてきてました」。高3の夏にあった校内の模試では、地理の点数が学年最下位。夏休み明けにあった三者面談では「京大は無理ですね」とはっきり言われた。高1と同じ担任の先生だったこともあり、「才能はあったと思うけど、頭がさびてしもたな」とまで酷評された。 

昨秋、京大の選手として8年ぶりに首位打者に輝いた

野球も勉強も、やると決めたらやる

さあ、ここからだ。1日14時間にわたる猛勉強。「とにかく面談で言われたことが悔しかった。量よりも質と言われたけど、考えてる暇もなく、とりあえず量をやろうと思いました。毎日、紙に予定を書くようにしてました」。模試の判定が悪くても、志望校を変えることなく、京大を目指し続けた。その努力が報われ、京大農学部に合格。第一志望だった学科ではないが、食料・環境経済学科への進学が決まった。「めちゃくちゃうれしかったです。無理やと言われてたけど、見返しました。目標をぶらさなかったのがよかったと思います」 

やると決めたら、やる。野球と勉強の両方で反骨心が身についた。「文武両道」という言葉がつきまとう京大野球部で、その反骨心が生かされることになる。

昨秋のリーグ戦で仲間に祝福され、喜ぶ北野

いけ!! 理系アスリート

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