主務から国内初のアメフト女性監督へ 関西外国語大・沢木由衣新監督
日本のアメリカンフットボール界で、初の女性監督が誕生した。沢木由衣さん(29)。学生時代に主務(チーフマネージャー)を務めた関西外国語大学アメフト部を率いる。
4部降格、決め手は使命感
監督就任の決め手は使命感に尽きる。昨年12月、母校は入れ替え戦に敗れ、関西学生リーグの4部に降格。直後に監督就任の打診を受け、快諾した。
卒業後も週末は全てアメフトでつぶれた
静岡県出身。アメフト好きの父親の影響を受けてはいたが、プレー経験はない。だが、アメフトに向ける気持ちの熱さは折り紙付きだ。卒業後は関西外国語大が所属する関西学生連盟の評議員として大会運営などを担ったほか、社会人チームのマネージャーも兼務。週末は全てアメフトでつぶれたが、辞めたいと思ったことはない。「体力的にはしんどい。でも、アメフトに携われる幸せが勝っていた」
自身が1年生マネージャーだった2009年、部は暗黒時代に突入していた。入学前に起きた不祥事で一時は廃部に。入学当時は同好会として復活していたが、大勢の退部者が出ていた。残った4年生は大学最後のリーグ戦に全てを懸けたが、大会出場に必要な人数がそろわずリーグ戦には出られなかった。泣き崩れる4年生の姿が、今も脳裏に焼き付いている。
先輩の無念を晴らしたい 思い続けた学生時代
残りの学生生活は、4年生の無念を晴らすために存在したといっても過言ではない。対戦相手の戦力分析、道具の手入れ、チーム運営上の会計……。選手の練習は週5回だが、自身は毎日、部室に通った。地域での清掃活動などが認められ、部に昇格したのは最上級生になるころ。大学から支給される補助金の額も跳ね上がり、活動の幅も広がった。後輩たちへの、ささやかな置き土産だ。
その後輩たちを自分が率いる意義は、人間力の育成にあると考えている。コロナ禍が収まり、部活動が再開できたら、「一生懸命アメフトに向き合った経験は、ずっと自分を支えてくれる」と伝えるつもりだ。
アメフトだけ女だからできないことはない
監督は無報酬。会社勤めのかたわら週末などに指導する。アメフトの国内競技人口は約1万6000人。ただし、女性となると9人だけ。それでも、「スポーツ界に女性監督はいくらでもいる。アメフトだけ女だからできないなんてことがあるはずはない」と言い切る。