水球

練習環境は限られるも、競技再開に向け組織力を強化 立命館水球部副将・初田武駿

競技特性でもあるプールが使えない中の自粛

新型コロナウイルスの影響により、学生にとって集大成となる公式戦の延期や中止が相次いでいる。自粛期間の中、学生たちは活動再開を望み日々努力に励む。「水球はプールを使って練習をするため、練習できる環境が限られてしまいました」。複雑な心境を吐露したのは、立命館大学水泳部水球部門の初田武駿(3年、大谷)だ。

競技特有の条件下でのトレーニング

現在、水泳部水球部門は練習再開の目途が立っておらず、インカレ予選といった公式戦の予定も未定。さらに、初田は競技特有の悩みも抱えていた。

「陸上競技は各自ランニングなどの自主練を行うことができると思います。ただ、水球の場合はプールが使えないことがとても大きいんです」。競技が再開されたときのブランクは大きいが、自粛期間中も体形維持のためのトレーニングや股関節の柔軟性を鍛え、ハードな試合を戦い抜くための体づくりを怠らなかった。

痛感した全国とのレベルの差

中学まで競泳をしていた初田だが、高校入学とともに水球と出会う。「水球はマイナースポーツですが、逆にどういう競技なのか興味がありました」。そこから競技をしていく中で当時の先輩たちのプレーに感銘を受け、水球の魅力に引かれていった。尊敬する先輩たちの背中を追いかけ、初田は着実に結果を残していく。その実績が評価され、高校2年生時の2月に全日本ジュニア水球競技選手権大会(U-17)京都府代表に選出された。

そこで、「全国のレベルの差をとても痛感しました」と振り返る。高いレベルを目の当たりにして、将来についても考え方が変わった。「水球は見た目以上に運動量が多いスポーツです。1日に何試合もあるので、身を削って水球続けるのはしんどいかなと。正直、高校の3年間にかけていた思いは強かったです」と、当初は水球を離れる決意を固めていたという。

高校で水球から離れようとした気持ちを全日本が変えた

しかし、全日本を経て「3年間で成長したとしても、あのレベルまでには達しないだろうと思いました。そこで大学まで続けてもっと上の技術や戦術を学びたいと感じました」と、大学で水球を続けることを決断した。

副将としての責任感

初田が通っていた大谷高校では、立命館の部員との合同練習が実施されていた。「練習に来てくれる際に、いつも勧誘してくれました」。部員からのラブコールに加え、顧問は立命館のOBでもあった。熱心に進路相談に乗ってもらったこともあり、立命館に入学することが決まる。

立命館に入学すると1年時からレギュラーに定着。今年で3年目を迎える初田は副将としてチームを引っ張る。「試合中の声掛けは人一倍するようにしています。高校と違い練習メニューは自ら作っていくので、競技以外の面でも頭を使うことがとても多いです。時間帯も他の体育会に比べて少ないので、モチベーションを上げていくためにも練習時間を短くして内容を濃くするように心がけています」。副将としての責任感を示した。

高校3年生にとって特別な大会

今夏のインターハイは史上初の中止となった。その報道を受け、初田は戸惑いを隠せなかった。

インターハイは初田にとっても特別な大会だった

恩師である高校の顧問から部員へメッセージを送ってほしいと頼まれたが、「高校生に容易に声をかけてあげることは自分の口からはできませんでした。後輩たちはインターハイを目指して厳しい練習を積み重ねて頑張ってきた。自分が高3だったらどのように言われるのが一番いいかを考えましたが、なかなか答えが見つかりませんでした」と、当時の心境を振り返った。

一生に一度。水球に限らず多くの高校生が目指す大会であるインターハイ。何をモチベーションに残りの競技生活を送っていけばいいのか。初田は自問自答を繰り返した。

「自分にいざ降りかかってきたときは、精神的にもダメージがあるはずです。高校は3年間にかけてきた思いがとても強いので、今後のビジョンが狂ってしまうのではないかと。けれど、積み重ねてきた練習は必ずプラスになると思います」。気持ちの切り替えは困難だが、競技で得たことが将来生かされていくことを願った。

チームワークを武器に

「公式戦が未定という中で、ビジョンを定着させるのは難しいです」。競技再開のめどが立っていないため、メンタル面の負担は否めない。しかし、初田は「目標としているインカレ出場に向けて、競技が再開されたらスパンは短いですが切り替えていけるようにしたいです。練習が再開されたときにまとまっているチームがインカレに行くと思います」と、チームへ一致団結を呼びかけた。

来年度は最終学年を迎える初田。部の中心的立場としてどのようなチームにしていきたいかを問うと、「各選手が皆個性を発揮して、点が取れるようなチームにしていきたいです。主力選手が不調であるとき、他の選手が点を取ってくれたら、自分たちにとってとてもプラスになります」と応えた。

「信頼関係を大事にすれば組織も個々の力も伸びると思います。他の体育会に比べてアットホームな部活でもあり、雰囲気づくりがしやすい点は自分たちにとって強みと感じています。組織力を最大限に発揮できればもっと強いチームになると思います」

強固なチームワークを胸に、飛躍を誓う。

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