東京国際大の主将・中島哲平 過去最高の目標を目指し、後悔のないラストイヤーに
昨シーズンは東京国際大学躍進の年となった。全日本大学駅伝初出場4位でシード権獲得、箱根駅伝5位でこちらも初めてのシード権。今年は出雲駅伝初出場も控えている。さらなる結果が求められる今年、主将に就任したのは中島哲平(4年、水城)だ。今のチーム、そして自身の競技、この先について聞いた。
「外せない年」へのプレッシャー
中島が主将になることは、学年の中での話し合いで決まった。高校時代にキャプテンを務め、2年生の時にも学年リーダーをしていたので、そこまで戸惑いはなかったという。だが、昨シーズンの結果で東京国際大への注目、そして周囲からの期待は格段に上がった。「今年初めて(学生)3大駅伝すべてに出場するので、本当に外せない、勝負の年だというプレッシャーは感じます」と率直な思いを口にする。
今年のスローガンは「東国疾走~巻き起こせ金色旋風」。「歴代で一番速さのあるチームになろう、とみんなで決めました」
3大駅伝の目標は出雲駅伝初出場初優勝、全日本大学駅伝と箱根駅伝は3位以上だ。かなり高い目標に思えるが、と話を向けると「昨年度は躍進しましたが、これをその年だけで終わらせてはいけないと思っています。これからチームで強くなって、『強豪校』になっていくためには、達成していかないと、と思います」。チームのこれからを見すえるからこその目標設定だ。
今年こそ3大駅伝を走りたい
中島は茨城・水城高校の出身。1学年上の先輩が東京国際大への進学を考えていた際に一緒に見学。その後、高校に松村拓希コーチが見に来てくれたりなどの縁もあり、東京国際大を選んだ。寮とグラウンドが近く、競技に集中できる恵まれた環境だと言う。「入学して、渡邊和也さん(4年、報徳学園、2011年日本選手権5000m優勝、世界陸上代表)がいたのにはすごくびっくりしました。でもすぐ打ち解けて、今は一緒にジョグをしたり、いろんな相談もできたりしてすごく頼りになります。トップレベルで戦った話はすごく刺激になります」
入学したとき、渡邊を除けば5000mのタイムは上から3番目だった中島。しかし、今まで一度も3大駅伝を走れていない。昨年は全日本大学駅伝と箱根駅伝ともにエントリーには入っていたが、当日変更で出走できなかった。「どちらも本当にレース前まで調子も良かったので、悔しかったです。でも1年生の前半に全然走れていなかったし、監督からの信頼感もなかったなと、外れた理由もわかっています。今年は1年間通して走れるような力をつけていこうと思っています」。個人として目標とするのは、3大駅伝すべてを走り、チームに貢献することだ。
昨年度の4年生は、伊藤達彦(現・ホンダ)を中心に、勢いのある学年だった。タイムだけ見ると戦力ダウンは否めないが、だからこそ中島は「チームが大きく変わるチャンス」だという。一方で課題も口にする。「達彦さんは普段のジョグもみんなより上がるのが遅かったり、ポイント練習の本数も多かったり、競技に対する姿勢が誰よりも高い方でした。それに引っ張られる選手もすごく多かった。今年は達彦さんのような『チームの核』となる選手がいないのが課題です。夏の間にそういう存在がしっかり出てこないと、と思います」
キャプテンとして「全員がチームのことを考えられるように」
昨年度を超えるという意気込みで始まった2020年だが、新型コロナウイルスの影響で前例のないシーズンとなってしまった。4月7日に緊急事態宣言が発令されたあとは、寮に残る選手と実家に帰省する選手が半々ぐらいで、その間は各自自主練を行っていたという。中島自身は1月にけがをしてしまったこともあり、その回復期としてジョグを多めにするなど、有意義に過ごすことができたという。
今はもうけがは治りましたか? と聞いてみると「毎年あまり夏は走れなくて……」と苦笑いする。「でも4年生ということもあって、一番上のチームで走れるように、練習でも引っ張るようにと心がけています。調子が良くなくても、それなりに耐えて粘る走りをしていきたいです」
練習以外の時間は好きなアイドルやアニメの話をしたりなど、学年関係なく仲がいいのが東京国際大の良さでもある。「でも、その仲の良さが練習でのゆるさに変わらないように、メリハリをつけてやりたいと思っています」。また、下の学年が萎縮しないように、寮内の掃除を全学年で取り組むなど、全員がチームのことを考えられるように、と中島は主将として心を配っている。
箱根が終わった後に、どういうチームになっていたいですか。その問いかけに中島は「全員が笑顔で終わりたいです。特に僕も含め、4年生は『後悔のない4年間を送れた』とみんなの前で言えるように、しっかりあと半年間過ごしていきたいです」と丁寧に答えてくれた。
東京国際大は今まで箱根駅伝に4回出場しているが、出場した年には必ずその年の主将が走っている。中島もこの夏を経て、正月の箱根路を駆け抜けることができるだろうか。