野球

履正社-星稜再び 早大・清水と国士舘大・岡田から甲子園で戦う後輩へエール

第101回全国高校野球選手権決勝、2回に右中間二塁打で先取点を挙げた岡田。投手は清水(撮影・すべて朝日新聞社)

2020年甲子園高校野球交流試合は15日から後半に入り、第1試合は昨夏の全国選手権大会決勝と同じ履正社(大阪)-星稜(石川)が組まれた。両校は昨春の選抜大会でも対戦しており、甲子園では「3季」連続の対戦となる。履正社の左腕エースだった清水大成投手と星稜打線を引っ張った岡田大響(ひびき)外野手。早稲田大学と国士舘大学に進んだ2人が昨夏の熱闘を振り返り、再戦に臨む後輩たちへエールを送った。

第91回選抜高校野球大会1回戦

2019年3月23日@阪神甲子園球場
星 稜 100 000 101|3
履正社 000 000 000|0
【星】奥川-山瀬【履】清水、植木-野口【三塁打】有松(星)

第101回全国高校野球選手権大会決勝

2019年8月22日@阪神甲子園球場
履正社 003 000 020|5
星 稜 010 000 200|3
【履】清水、岩崎-野口【星】奥川-山瀬【本塁打】井上(奥川)【三塁打】池田(履)【二塁打】岡田、有松、山瀬(星)内倉(履)

奥川と投げ合う清水「自分も点を与えない」

春の雪辱に燃える履正社の清水は「最少失点」をテーマに夏の決勝のマウンドへ上がった。選抜大会では、奥川恭伸(現・東京ヤクルトスワローズ)から毎回の17三振を奪われ、3安打しか打てずに完封された。圧巻の投球をみせた奥川がクローズアップされたが、清水も8回を投げて被安打7の2失点。自責点は1で十分に試合を作った。

決勝で先発し7回途中まで投げた清水

履正社バッテリーが特にマークしていたのは、クリーンアップと俊足の1番打者・東海林航介(現・東海大)、打撃好調の7番打者・岡田だった。岡田は準決勝までの5試合で14打数7安打(うち二塁打2本)3打点と当たっていた。石川大会が始まる直前の練習試合で左足首をねんざしていたこともあり、石川大会5試合では10打数1安打と苦しんだ。甲子園に来て復調した要因を岡田はこう話す。

「石川大会では全然打てなくて、準決勝、決勝は終盤、交代になっていました。それが悔しくて、甲子園ではなんとしても打ってやるという思いで大会に入りました。甲子園に来てからは、最後の大会なので楽しもうという気持ちにもなれて、プレッシャーなく打席に入れたのも好調の要因だと思います」

岡田の右中間二塁打で星稜が先取点

2回の星稜の攻撃、2死二塁の場面でその岡田に打順がまわってきた。清水が「甘く入ってしまった」と悔やむ137kmの速球を岡田のバットがとらえた。打球は右中間を深々と破り、先制のタイムリーツーベースとなった。先制点に星稜ベンチは沸いたが、「正直、入った(ホームラン)と思いました。ちょっと悔しかったです」と岡田は言う。

打たれた清水はこう振り返る。「先制点を与えないようにしようと思っていたので悔しかったですけど、気持ちを切り替えて、この1点で切り抜けようと思いました」

その言葉通り、清水は続く8番・奥川をライトフライに打ち取る。3回、今度は履正社ベンチが沸く。2死一、二塁から4番・井上広大(現・阪神タイガース)のスリーランで一気に逆転した。「逆転してベンチはかなり盛り上がりましたね。自分は、これによる気の緩みはなかったです。奥川投手を相手にリードを奪えたことがうれしくて、なんとかそのリードを守ろうと思いました」(清水)

決勝の7回、二盗を決めて追い上げにつなげた岡田

3回裏以降はスコアボードにゼロが並んだ。再び試合が動いたのは7回裏。星稜は先頭の岡田が四球で出塁。岡田は続く8番・奥川のところで盗塁を成功させ二塁へ進む。1死二塁から9番・山瀬慎之助(現・読売ジャイアンツ)の左中間ツーベースで岡田が生還。1点差に詰め寄った。

履正社の清水は続く1番・東海林を空振り三振に取ったが、2番・有松和輝(現・桜美林大)には四球を与えてしまう。2死一、二塁から3番・知田爽汰(現・3年)にセカンドの頭を越される打球を浴びた。山瀬がかえり追いつかれた。

清水は悔しそうにこの場面を振り返る。「決勝の中で一番思い出すのは、あの同点タイムリーを打たれた場面です。真っすぐが、ちょっと内に入りました。悔しさは今でも残っています。疲れは少なからずありましたね。球が全体的に浮いてきたなとは自分でも感じていましたし、スライダーも思うように曲がらなくなってきていました」

「最後まで投げ切りたかった」と清水

履正社の岡田龍生監督は、ここで左腕の清水から右腕の岩崎峻典(現・3年)に投手交代を命じた。「やっぱり最後まで投げ切りたかったという気持ちはあります。でもあの状況から見て、チームが勝つことが第一なので、(交代は)仕方なかったのかなと思います」(清水)

星稜の奥川も疲れを見せ始めていた。智辯和歌山との3回戦では延長14回、165球を投げた。準々決勝は登板しなかったが、準決勝でも7回87球を投げている。岡田は振り返る。「疲れもあって、奥川はあんまり本領を発揮できていないなと思いました。球が全体的に浮いている感じで、履正社打線はそこを逃さずとらえてきました。どの打順からも点が取れる抜け目のない打線なので、守っているのが怖かったです」

8回、1死三塁から8番・主将の野口海音(現・大阪ガス)の中前打で走者がかえり、履正社が再度勝ち越した。さらに、交代して9番に入った岩崎にタイムリーが出た。

岡田は再び二盗を試みたが……

星稜はその裏、1死から岡田がセンター前ヒットで出塁。この試合、岡田は4打席とも出塁している。岡田は再び二盗を試みたが、失敗に終わった。「ノーサインだったんですけど、前の打席のときに自分が盗塁を決めて1点入っていたので、1本でかえれるようにと二塁を狙いました。自分の中で少し焦りはあったのかなと思います。スタートもちょっと遅れ気味でした」と悔しそうに振り返る。岡田にとってこの試合の中で最も悔やまれる場面となった。

奥川も渾身のピッチングで9回を三者凡退に抑えて反撃を待った。その裏、星稜打線も1死一、二塁のチャンスを作るが、3番・知田の放った打球は二ゴロ併殺打となりゲームセット。履正社が第101回大会の頂点に立った。

履正社が終盤に星稜を振り切って初の全国制覇を達成した

「『優勝した!』っていう実感、試合後すぐにはあまり感じなかったんですよ。周りの方々から祝福していただいて、日に日に『優勝したんだなぁ』という気持ちが強くなっていった感じでした」と清水は話す。

敗れた岡田にとっても満足の夏だったという。「新チーム結成から全国制覇を狙っていたので負けて悔しかったんですけど、個人的には出し切った感がありました。ずっと悩みながら練習をしてきたので、甲子園で打ててうれしいという満足の気持ちがありました」

贈り物のような対戦に臨む後輩たちへ

令和最初の甲子園大会、新時代を迎えた高校野球の決勝にふさわしい好ゲームを演じた。卒業後、清水は東京六大学の早稲田大へ、岡田は東都大学の国士舘大へ進み、2人とも3年後のドラフトでのプロ入りを目標に汗を流している。不思議な縁で対戦することになった後輩たちへエールを送ってもらった。

早稲田大学へ進んだ清水(左、早大野球部提供)と国士舘大学へ進んだ岡田(国士大野球部提供)

清水から。
「3年生にとっては、最後の夏の甲子園がなくなったことは受け入れがたい現実だと思います。それでも、この状況の中、甲子園という舞台で試合ができることに感謝の気持ちを持って頑張ってほしいなと思います。履正社も星稜も、去年から主力だった選手が残っています。お互いベストな状態で試合に臨み、自分たちにできる最高のプレーを見せてほしいです」

岡田から。
「去年から出ている履正社の池田(凜=現・3年)、小深田(大地=現・3年)は奥川からヒットを打っているし、対応力が高いです。この2人は要注意ですね。でも星稜の投手陣も去年からメンバー入りしている者がいますから、実力的には劣っていないと思います。自分らは去年、最後は負けてしまったので、後輩たちにはやっぱり勝ってほしいですね」

1勝1敗で迎える対戦は午前10時にプレーボールされる。

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