野球

特集:僕らの甲子園~100回大会の記憶

大阪桐蔭・中川卓也 主将として「最強世代」を引っ張り、春夏連覇

春夏連覇を達成してアルプススタンドへのあいさつを終え、泣きながら引きあげる中川(左から2人目、撮影・井手さゆり)

夏の甲子園もいよいよ佳境です。4years.では昨夏の第100回全国高校野球選手権で活躍し、今春大学に入学した選手たちにインタビューしました。高校生活のこと、あの夏のこと、そして大学野球のこと。大いに語ってくれました。特集「僕らの甲子園~100回大会の記憶」最終回は、大阪桐蔭(北大阪)の「最強世代」のリーダーとして春夏連覇に貢献し、いま早稲田大でプレーする中川卓也です。

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「つらいこと、苦しいことがほとんどでした」

第100回大会決勝は、大阪桐蔭が旋風を巻き起こした金足農(秋田)を13-2で破り、春夏の甲子園を連覇した。昨年の3年生は大阪桐蔭の「最強世代」と呼ばれ、2年生の選抜大会から4季連続で甲子園に出場し、3度の全国制覇を達成。この世代の主将を務めたのが中川だ。最後の夏を制し、アルプススタンドへあいさつに向かう途中から涙が止まらなかった。

「試合が終わって整列するとき、みんなから『キャプテン、ありがとう』『ナイスキャプテン』って言葉をかけてもらって、そのときすでにちょっとやばかったんです(笑)。アルプスへあいさつに行ったとき、メンバー外の3年生や吹奏楽部の人たち、応援に来てくれた先輩の顔が見えました。大きな拍手と温かい声援を送ってもらって、1年間やってきてほんとによかったなと思って、涙をこらえきれなくなりました」

2年生の春、3年生の春夏と計3度の甲子園制覇を経験した最強世代。勝って当たり前と見られ、全国で最も注目されるチームのキャプテンを1年間務めてきた。背負ってきたものから解放された安心感からの涙でもあった。能力の高い選手たちがそろっても、それだけで勝てるわけではない。チーム内に課題が次々に出てくる。それらをクリアして選抜大会連覇を達成すると、今度は春夏連覇の期待もかけられた。
「選抜に勝ったあと、春の大阪大会でメンバーが入れ替わって、選抜に出ててもメンバーから外れた者もいました。夏が近づくにつれて、みんなの前でしゃべるときも慎重に言葉を選ばないといけないので。1年間、つらいこと、苦しいことがほとんどでした」と、大阪桐蔭でのラストイヤーを振り返る。

2年生の夏に味わった痛恨

その前年の夏、中川は悔しい経験をした。昨夏と同様に春夏連覇のかかった第99回大会だ。

3回戦の仙台育英(宮城)戦、1点リードで迎えた9回裏、2死一、二塁の場面で、仙台育英の7番若山壮樹(現・桐蔭横浜大)の打球はショートへ転がった。捕球した大阪桐蔭ショートの泉口友汰(現・青山学院大)からファーストを守っていた中川へボールが送られ、大阪桐蔭の8強進出が決まったかと思われたが、判定はセーフ。

泉口が二塁へ送球してフォースアウトをとるだろうと思い込んでいた中川は、ベースに入るのがやや遅れた。通常ファーストは右足をベースに付けたまま捕球するが、このときは捕ってから踏みにいった。そして慌てて踏み損なった(記録は失策)。微妙な判定ではあったが、これで2死満塁。続く8番馬目郁也(まのめ、現・桐蔭横浜大)がセンターオーバーの2点ツーベースを放ち、仙台育英が逆転サヨナラ勝ちをおさめた。「ベースを踏んでたつもりが、しっかり見てなくて……。気づいたときは間に合いませんでした。3年生に申し訳ないです」と中川は試合直後に号泣したあと、こう絞り出した。

2017年夏の甲子園の仙台育英戦、逆転サヨナラ負けを食らった大阪桐蔭の選手たち(撮影・柴田悠貴)

この試合、7回の守備では内野ゴロで一塁に走り込んできた相手打者の足が、捕球姿勢をとっていた中川の足に強く当たるというアクシデントもあったが、「それは(9回のエラーには)関係ないです。その影響はありませんでした」と、中川は言う。
自分のミスがきっかけで負けさせてしまった3年生の分も、あの夏の悔しさを晴らしたい。そして、今度こそ春夏連覇を達成する。強い気持ちで最後の夏に臨んでいた。。

吉田輝星は想像を超えたピッチャーだった

迎えた3年生夏の北大阪大会、履正社との準決勝では1点を追う9回、2アウトランナーなしと土俵際に追い込まれながら、逆転勝ちを収めた。苦しい試合をものにした大阪桐蔭は、決勝で大阪学院大高を23-2と大差で破り、100回大会への出場権を得た。
甲子園での6試合いずれも盤石の戦いぶりだった大阪桐蔭だったが、決勝で対峙(たいじ)した吉田輝星(現・日本ハム)のボールは想像以上の伸びだったという。「ビデオで見るよりいいピッチャーでした。まっすぐは1球見たときに『速い!』って感じて。疲れてるけど、最後なので、初回からフルでくるだろうって話はしてました。その想像を超えるピッチャーでしたね。まっすぐの球持ちがよくて、伸びてくる感じなんです」

大阪桐蔭は1回に2安打と吉田の暴投などで3点を先制。直後の2回、1死一、三塁から金足農が得意のスクイズを仕掛けてきた。打席には7番菊地彪吾。カウント2-2からの5球目に三塁ランナーが走り出した。ところが菊地は見送り、スクイズ失敗。サインミスだった。

昨年夏の決勝、5回には根尾がホームラン。金足農を圧倒した(撮影・上田潤)

「あれで一気に流れがこっちに来た感じがしました。あそこで1点取られてたら、どうなるか分からなかった。大きなポイントになったんじゃないかと思います。金足農はバントもエンドランもきっちり決めてくる、完成度の高いチームだと感じてました」。流れを手放すことなく、大差で金足農を下し、春に続く頂点に立った。

早稲田で力をつけ、4年後はプロの世界へ

根尾昂(あきら、現・中日)、藤原恭大(きょうた、現・ロッテ)ら、チームメイト4人が今年からプロ入りしたが、中川は早稲田大学への進学を選んだ。今春の東京六大学野球リーグ戦では1年生ながら全試合にフル出場。大阪桐蔭でチームメイトだった山田健太、宮崎仁斗は立教大に進んだ。2人ともすでにリーグ戦でプレーしており、4年生の秋まであと7シーズンずっと戦わなければならない。

4年後にプロに入るため、早稲田で自分を磨く(撮影・小川誠志)

「お互い刺激し合って、高め合えたらいいですね。自分も大学4年間でしっかり力をつけて、最高の状態でプロの世界へ入りたいです」。大阪桐蔭最強世代のリーダーは、次の目標をはっきりと語った。

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