野球

特集:僕らの甲子園~100回大会の記憶

日大三・日置航 「弱い」と言われ続け、求め続けた粘り強さでベスト4

昨夏の下関国際との準々決勝、日置は8回に勝ち越しのタイムリーヒット(撮影・松本俊)

夏の甲子園が始まりました。4years.では昨夏の第100回全国高校野球選手権で活躍し、今春大学に入学した選手たちにインタビューしました。高校生活のこと、あの夏のこと、そして大学野球のこと。大いに語ってくれました。「僕らの甲子園~100回大会の記憶」と題して選手権の期間中に随時お届けしますので、去年を思い出しながら読んでいただければと思います。第4回は日大三高(東京)のキャプテンとしてベスト4まで進み、明治大でプレーする日置航です。

中越・山田叶夢 ライトから3度登板、打たれたサヨナラヒットに後悔なし

「弱い」と言われたチームが春夏連続で甲子園へ

日置が2年秋のチーム結成時は「弱い」と言われながらも、日頃の練習から粘り強さを意識して春夏連続の甲子園出場を果たした。

「自分たちの代は日大三高の歴代でもワースト3に入るぐらい弱いと言われてました。そんな感じだったんで、どこで自分たちが勝てるかって考えたら、粘り強さしかない。普段の練習から一生懸命にやっていかないと、ここ一番の粘り強さは出ないと思って、練習から一生懸命やってきました。粘り強く頑張ってきたことが結果に結びついたと思うんです」。日置が力説する粘りは、昨夏の戦いで随所に発揮された。

昨夏の西東京大会決勝、日大三は4番大塚がサヨナラホームラン(撮影・松本俊)

まず西東京大会。片倉との準々決勝は3点ビハインドの7回に代打・小沢優飛の逆転満塁ホームランが出て勝利。日大鶴ヶ丘との決勝は、同点で迎えた9回、その秋のドラフトで指名された相手エースの勝又温史(現DeNA)から、4番大塚晃平がサヨナラホームランを放った。
「最終回、サヨナラのチャンスで3番の自分が打てなかったんですけど、4番の大塚が自分を助けるかのように打ってくれました」。日置が昨日のことのように語って、笑う。

準々決勝は7回2死まで無安打も、粘り強く逆転

甲子園でも粘り強さが光った。下関国際(山口)との準々決勝は、相手のエース鶴田克樹(現・東京農業大)の力投の前に、日大三は7回2死までノーヒットに抑えられていた。ようやく5番中村奎太がチーム初安打を放つと、8回には3連続安打で2点を奪い、追いついた。さらに2死三塁から日置の放った打球はファーストのグラブをはじき、ライト前へ転がる。三塁走者がかえり、日大三が勝ち越した。「ノーヒットノーランをやられてる中でも、誰ひとりあきらめないで、相手に対して食らいついていきました。それまでの練習で培ってきたものを、すべて出したような試合になりました」

準決勝、悔いが残る最後の打席

金足農(秋田)に敗れた準決勝には、悔いが残るという。2点を追いかける8回、1死一、二塁のチャンスで自身に打順が回ってきた。カウント2-1から吉田輝星(現・日本ハム)の投じた変化球を、日置のバットはとらえた。
「まっすぐに張ってたんですけど、来たのは変化球で、合わせにいっちゃったところはありました。それでも自分は(スタンドまで)いったかなと思ったんですけど、風を見たらいつもとは逆の風で……」

昨夏の準決勝、8回の吉田輝星との対決に悔いが残っている(撮影・松本俊)

打球はレフトスタンドの手前で相手のグラブにおさまった。4番大塚のタイムリーで1点差に詰め寄ったが、あと一本が出ず、1-2で敗退となった。相手のエース吉田の球威は最後まで落ちなかった。「吉田君は三振をとるウイニングショットにまっすぐが多かったので、前日の練習では速いマシンに合わせて打ってたんですけど、それを知ってたのか、あの日は変化球が多かったんです。試合途中から切り替えたんですけど、対応しきれませんでした。小倉(全由)監督を日本一の監督にできなかったことが悔しいです」

大学日本一のチームで1年春にリーグ戦デビュー

高校卒業後は東京六大学の名門である明治大へ進学した。明治大はこの春のリーグ戦で優勝し、続く全日本大学選手権も制して38年ぶりの大学日本一に輝いた。日置はリーグ優勝を決めた対法政大2回戦に代打でリーグ戦デビューを果たし、初安打、初打点も記録。続く3回戦では7番ショートでスタメン出場している。

レベルの高い六大学でもまれ、3年後のドラフト指名を目指す(撮影・小川誠志)

「高校生と比べると大学生はピッチャーの球速もバッターの打球の速さも違います。スピードで負けてたら勝負にならないと思いますので、まずはキレと反応をよくしたいなと思ってます」

甲子園でのさまざまな思いを胸に大学野球で自分を磨き、3年後のドラフトでプロ入りを目指す。

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