八戸学院光星・福山優希 甲子園の原点はスタンドで味わった恐ろしさ
夏の甲子園が始まります。4years.では昨夏の第100回全国高校野球選手権で活躍し、今春大学に入学した選手たちにインタビューしました。高校生活のこと、あの夏のこと、そして大学野球のこと。大いに語ってくれました。「僕らの甲子園~100回大会の記憶」と題して選手権の期間中に随時お届けしますので、去年を思い出しながら読んでいただければと思います。第1回は八戸学院光星高(青森)で昨夏の甲子園に出場し、駒澤大に進んだ福山優希です。
入学早々、駒澤大の1部残留に貢献
福山は今春の東都1部リーグで1年生ながら10試合に登板し、2勝を挙げた。専修大との1部2部入れ替え戦では、2回戦で先発して8回途中まで3失点で勝ち、連投となった3回戦は1失点で完投勝利と、駒澤大の1部残留の立役者となった。八戸学院光星3年生の夏に青森大会を勝ち抜いて第100回大会に出場し、2試合に登板した。彼の高校野球の原点は高1の夏、甲子園のスタンドから見た先輩たちの悔しい敗戦だ。
甲子園の空気が、はっきり変わった。超満員の観客の大半が、相手チームを応援している。
高校1年生の夏、福山はアルプススタンドから先輩たちに声援を送っていた。2016年の第98回大会、東邦(愛知)との2回戦。9回表の攻撃を終え、八戸学院光星は9-5とリードしていた。「序盤で点差がついてたので、正直、勝てるだろうって思いながら応援してました」
ところがこの回、東邦の先頭打者がヒットで出塁すると、甲子園の空気が一変する。9回裏の劇的な展開を期待して、甲子園の観客は東邦アルプスの応援をまねして、手に持ったタオルを回し始めた。「東邦のブラバンの『戦闘開始』っていうのが始まって、球場の空気が変わったのが分かりました。僕らはもう、びっくりしてるだけでした」
八戸学院光星にとっては完全なアウエー状態。大応援に背中を押された東邦は9回裏に6安打を集め、超がつく劇的な逆転サヨナラ勝ちをおさめた。
甲子園のグラウンドで泣き崩れる先輩たち。「信じられなかったです……。帰りのバスでもみんな泣いてて、誰もしゃべりませんでした。あの試合のあと、仲井(宗基)監督から『球場に来てる人から応援されるチームになろう』って言われて、全力疾走に始まって、野球の技術の以前にそういうことを心がけてきました」
あの試合にくらべたら、たいしたことない
昨夏、八戸学院光星は2年ぶりの選手権出場を果たした。初戦の相手は西兵庫代表の明石商。地元の学校の登場とあって、4万人を超える観衆が詰めかけた。「アウエーな感じはあったんですけど、みんなで『1年のときの東邦戦にくらべたら、たいしたことない。全然いける』って言い合ってました」
1、2回で6点を奪い、試合は序盤から八戸学院光星ペースで進んだ。先発した福山は1回に1点を失ったが、2、3回をゼロに抑える。4回に味方のエラーも絡んで4点を失った。5回を投げ、被安打8、5失点。リードを保ったまま2番手にマウンドを譲った。明石商が7回に追いつき、8-8の同点で延長にもつれ込んだが、10回に勝ち越した八戸学院光星が勝った。
2回戦の相手は初戦で甲子園通算100勝を達成して波に乗る龍谷大平安(京都)。福山は1回戦に続いて先発し、1回こそ三者凡退に抑えたが、2、3回と相手打線に捕まった。3回途中、被安打5、6失点で降板。結局チームは1-14の大敗を喫した。「調子うんぬんの前に、僕のレベルが低かったです。青森っていう小さい世界しか見てなくて、全国にはもっと上のレベルの選手がいるということを思い知らされました」
甲子園の記憶は何もかも鮮明
それでも、あこがれの舞台の記憶は鮮明に残っているという。
「甲子園はいい球場でした。超満員で応援の声がすごい反響して、まずびっくりしました。球場に着いてからの流れも全部覚えてます。アップをして、前の試合が終わるまで待機して、グラウンドに入ってベンチに荷物を置いて、キャッチボールして……。全部記憶に残ってます。鳥肌の立つ感覚もまだ、残ってます」
レベルの高い大学で自分を鍛えたいという思いから、駒澤大へ進学。早くもチームになくてはならない存在になっている。あこがれの選手は楽天の則本昂大投手だ。大学日本一と4年後のプロ入りを目指し、まっすぐにも変化球にも磨きをかける。