野球

特集:僕らの甲子園~100回大会の記憶

常葉大菊川の主将・奈良間大己、無我夢中で甲子園を楽しんだ本物の野球小僧

3回戦対近江、9回表1死3塁、犠牲フライで生還して喜ぶ奈良間(中央)(撮影・井手さゆり)

夏の甲子園も決勝を残すだけとなりました。4years.では昨夏の第100回全国高校野球選手権で活躍し、今春大学に入学した選手たちに取材しました。「僕らの甲子園~100回大会の記憶」と題して選手権の期間中に随時お届けしています。第11回は常葉大菊川高(静岡)のキャプテンとしてチームを引っ張り3回戦に進出、いまは立正大でプレーする奈良間大己(たいき)です。4years.野球応援団長の笠川真一朗さんが取材、執筆を担当しました。

金足農・菊地彪吾 ツーランスクイズで生還した準々決勝、スクイズ失敗の決勝

物心ついたときから100回大会を意識

「物心ついたころから100回大会を意識してました。絶対に出たいって、昔から思ってたんです」。奈良間はそう振り返る。主将として挑んだ最後の夏。静岡大会で22打数18安打の打率8割1分8厘、という強烈すぎる成績を残し、チームを甲子園に導いた。「1打席、1打席、とにかく集中してたので、打率は大会が終わるくらいに知りました。それよりもキャプテンとしてチームを甲子園に導けたことが何よりもうれしかったです」

夢にまで見た100回大会初戦の益田東戦は打撃戦となり、6-7の8回に2点を奪って逆転で制した。「とにかく楽しかったです。厳しい展開でもチーム全体で最後まで試合を楽しんで勝てました。常葉大菊川の野球は楽しむことがテーマです。それを甲子園でも実践できたのはよかったです」

初戦の益田東戦で、4回裏に奈良間は2ランホームランを放った(撮影・清水貴仁)

元気ハツラツのプレーを続け、チームを元気づける彼の姿に心をつかまれた僕は「奈良間を近くで見たい!」と、深夜から甲子園の入場列に並び、常葉大菊川ベンチの真裏の席を確保した。チームの雰囲気はほんとに最後まで明るく、見ていて気持ちがよかった。勝っても負けても価値のある野球をしているんだな、と感動させられた。

奈良間が甲子園で得たものは、楽しい思い出だけではない。悔しい経験もした。「3回戦の近江(滋賀)戦で、1打席目に林(優樹、当時2年)に三振させられたことですね。1打席目にとにかく集中してたんですけど、外に逃げるチェンジアップを振って三振してしまいました。あれは悔しかったです。初めて見た軌道でした」。結果的に常葉大菊川は4-9で敗戦。この悔しさが、いまでも奈良間の糧になっているという。

甲子園に出たことで、全国のレベルの高さを実感した。「静岡大会で負けて甲子園に出られてなかったら、気付けなかったことがたくさんあります。甲子園に出られたことで、もっと上のレベルに行きたいと思うようになりました」

近江戦後、グラウンドに一礼する常葉大菊川の選手たち(撮影・井手さゆり)

立正大で新たな野球の楽しさに気づいた

奈良間は100回大会に出て、U-18代表にも選ばれた。たくさんの選手と出会えた。そして自分を見つめ直し「まだまだダメだ、うまくなりたい」という強い思いを持って大学野球の世界に飛び込んだ。東都1部の立正大で春からメンバーに入り、リーグ戦にも出場。順調な道のりにも見える。しかし「投手のテンポとか間合いも高校とは違って駆け引きが難しかったり、試合時間も高校より長くなるので、体力もつけないといけません。苦労もたくさんあります」と、悩ましげな表情で語る。

「ただ、やっぱり野球は苦労も含めて楽しいです。高校ではある程度、能力だけで対応できました。でも大学では自分と相手のデータをしっかり分析して、いろんな引き出しを増やさないと通用しません。その分析が上手くいけば楽しいですし、うまくいかなかったらまた勉強になります。立正にきて坂田(精二郎)監督のおかげで新たな野球の楽しさに気づけました。高校野球とは違った楽しさが大学野球にはあります!」と、笑顔で大学野球の魅力を話してくれた。本当に野球を好きでやっている、これぞ本物の野球小僧だ。

野球が大好き、という気持ちが彼の言葉の全てから伝わってきた

「うまくいかないことがあっても、野球ができたらそれでいいです。泥臭く元気を出して野球を楽しむ。これから僕がどうなったとしても、これだけは絶対に続けます。マイナスの雰囲気を出して悩んでやるより、無我夢中になって楽しくやったほうが絶対にいいと思います。それがポリシーになってます」。この奈良間の思いこそが、野球の原点だと感じた。

上手な人でも下手な人でも、心の底から野球を楽しむことを忘れそうになる瞬間が誰にもある。しかし、つらくても難しくても逃げずに自分の課題と向き合い、向上心を持ち続ければその苦労さえも楽しめる日が来る。ただ、その苦労を楽しめるのは心の根底に「野球が大好きだ!」と胸を張って言える強い気持ちがあればこそ。この気持ちが何よりも大切なのだ。

最後に奈良間は、今後の目標を強い口調で語ってくれた。「大学でもチームの軸になりたいですし、4年生になったらキャプテンになりたい。そのために周りを見てみんなの気持ちを理解して、指導者の気持ちも理解できる選手になります。そしてプロ野球選手になって活躍したいです」

立正大学出身の先輩として、そしてひとりの奈良間ファンとして、その目標を応援していきたいと思います。頑張れ! 奈良間大己!

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