アメフト

関西外大の沢木由衣監督、名将・鳥内秀晃さんから初の女性監督への金言

関西学院大学前監督の鳥内秀晃さん(右)と関西外国語大学の沢木由衣監督(撮影・すべて朝日新聞社)

強豪校を長年率いた名将の言葉は、新人監督にとって全てが金言だった! かつて関西学院大学ファイターズで活躍した榊原一生・朝日新聞記者が恩師に同行し様々なヒントを導く「鳥内面談」第2弾です。

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国内アメフト界初の女性監督となった関西外国語大学の沢木由衣さん(29)へ、鳥内秀晃・関西学院大学前監督(61)は「女性だからというのは関係ない。学生の成長のためにお手伝いをしようという気持ちでやればええ」などとエールを送りました。動画もあわせてお楽しみ下さい。

アメフト界初の女性監督が、関学大の鳥内前監督との〝面談〟に臨んだ

「選手出身やない、そんなん関係ないで」

関西外大の秋のリーグ戦初戦(10日)を前に、2人は大阪府枚方市のグラウンドで顔を合わせた。鳥内さんは身長148cmの小柄な沢木監督を見て、「(初の女性監督は)びっくりした。すごいなと。でも選手出身やないからとか、そんなんは関係ないで」。沢木監督はうなずきながら、「学生スポーツは学生が主役で社会に出る準備をする学びの場でもあると思います。競技を通じて彼ら、彼女らを成長させてあげたい」と返した。

グラウンドへ出るとつい熱が入る鳥内さん

沢木監督は今年2月に監督に就任し、昨季4部に降格したチームの再建を託された。現役時代はマネージャー。2013年の卒業後は関西学生アメフト連盟の評議員として運営に携わり、社会人Xリーグ2部チームのマネージャーも務めてきた。

昨年末、前任の男性監督から就任を打診された時は「なぜ私?」と戸惑ったという。それでも、「競技経験がないからこそいろんなことにフィルターをかけずに見られる。学びたいという気持ちで恐れず向き合っていこうと思った」と話す。

沢木監督の前向きな姿勢に鳥内さんは、「(選手を)やったことないから、どうやったらうまくなんのという問いかけがしやすいやん。ラインズだったら、1対1で負けてるよね。何で負けたん。相手が強い? 当たるタイミングの問題? なんぼでも突っ込めるから得やで」

監督歴28年、学生日本一を決める甲子園ボウルで12度の優勝を誇る鳥内さんは、この「突っ込み」で、学生の考える力を育んできた。18年の日本大学選手による悪質タックル問題が起きた時、日大と対比される形で、選手に自主性を促す鳥内さんの指導哲学が注目を集めた。中でも「4年生がコーチの代わりになるように」と始めた個人面談はその最たるものだった。

スタッフの役割こそ重要

練習後、2人は校舎内に移動し、まるで面談のように机を挟んで向き合った。話題は練習時の女子スタッフの役割に及んだ。鳥内さんは口を開いた。

「仕事はボールを拭いたり、笛を吹いたりするだけちゃうで。プレーする選手の足幅や手の使い方がどうなっているんか言えるやん。工夫次第でもっと参加できる」と助言すると、マネージャー出身の沢木監督は「それこそ学生の時から気をつけてきたところ。練習のテンポもスタッフが上げられるように力を入れたい」と話した。

鳥内さんは監督時代、女子スタッフとも面談を重ねてきた。「関学大でも女子スタッフが入部したら、参加を求めるし、面談でも、ただの雑用はいりませんよと言うてきた。あかんことは見逃さんといて、チームにマイナスやで、とまで言ってきた」。鳥内さんの言葉を聞きながら、沢木監督は理想のスタッフ像を思いながらも、意識変革の難しさを感じているようだった。

練習後、2人は熱く語り合った

選手らにとっては4年間と限られた学生生活。成長、自立を願う2人だからこそ、指導には熱が入る。「フットボールができる時間は決まってんねん。いつ上手なんねん。最後の試合の前の日か。それでは遅い。1回ぐらい真剣にやれや、と。人生のどっかで自分を磨かなあかんし、男の子から男にならなあかんねん。チームに子どもがおったらあかん」と鳥内さんが語ると、沢木監督も「そう思います。何か一つのことを成し遂げた、自立をして生きていく部分が大事になってくる。それを私が背中で見せて、どう伝えていくか。これから模索をしていきたいと思います」

「遠慮し過ぎはあかん」「あとはやるのみ」

対談の最後、鳥内さんは沢木監督を諭すように言った。「最初から完璧はおれへんねん。俺も監督成り立てのころは失敗もして学生にかわいそうなことをした。だんだんできてきたらええ。遠慮し過ぎたらあかんで」

沢木監督は自分に言い聞かせるように返した。「このポジションをOBや選手経験者がいる中でいただいたからにはやっていくしかない。学生のために何かをしたいと思って監督を引き受けさせてもらった。模索しながら、あとはやるのみ」

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