ラグビー

青山学院大学の津久井萌 再びワールドカップで輝けるか

2大会連続W杯出場を目指す日本代表候補の津久井萌(日本ラグビー協会提供)

男子に負けていられない! 来年9月、ニュージーランドで開催されるラグビーワールドカップ(W杯)2021(女子大会)に向けて「サクラフィフティーン」こと女子ラグビー15人制日本代表の候補選手が合宿を再開した。前回大会で、17歳の高校3年生で日本代表の9番を背負い、優秀選手賞にあたる「ベスト15」に選ばれた青山学院大学のSH津久井萌(3年、東京農大二)も元気な姿を見せた。

最年少出場の17年大会はベスト15

2017年にアイルランドで開かれた女子W杯に出場した全12チームのなかでも最年少だった津久井は、身長152cmと最も小柄な選手でもあったが躍動した。

2017年W杯前、すでにキラリと光る存在だった(撮影・斉藤健仁)

サクラフィフティーンは強豪相手に勝利することはできなかったが、順位決定戦で香港代表を下し、W杯で記念すべき3勝目を挙げた。津久井は5試合すべてに先発、素早いパスさばきでチームの高速アタックをリードし、タックルでも体を張った。

その活躍が認められて大会優秀選手賞にあたる「ベスト15」に選ばれた。津久井は「(選ばれて)本当にビックリしました。チームメートのみんなから『おめでとう』と言ってもらいました。自分のいいプレーができているときは、日本代表もいいアタックができていることは自信になった」と破顔していた。

初の国際舞台を経験した津久井は「(次のW杯の)4年後、ベスト8に行くために何ができるかを考えるようになった。個人的な部分を伸ばして、チームに勢いを与えられるようにもっと経験を積んで、どんな状況でも冷静な判断ができるようになりたい」と先を見据えていた。

17年W杯後、ベスト15に選ばれた選手に贈られたユニホームを手に、高崎市長を表敬訪問した(撮影・朝日新聞社)

そんな津久井は5歳のとき、1歳上の兄の影響で群馬・高崎ラグビースクールに通って競技を始めた。花園(全国高校大会)常連の強豪校・東京農大二高では男子と一緒にプレー、高校2年時にはニュージーランド留学も経験した。高校卒業後はFL小西想羅(國學院栃木)といっしょに青山学院大に進学し、ラグビー部に所属しながら、横河武蔵野アルテミ・スターズでも研鑽を積んでいた。

自粛期間中はウェートトレーニングをしたり、近くの公園を走ったり、父や同じ群馬県出身のLO櫻井綾乃(横河武蔵野アルテミ・スターズ)とパスやキックの練習をしたりしていたという。最近になってやっと体を当てるコンタクト練習ができるようになり、現在は原則、平日はアルテミ・スターズで、日曜は青山学院大の練習に参加している。

W杯へ向けて合宿が再開

9月になり、半年ぶりに15人制ラグビーの女子日本代表候補合宿が再開された。津久井は「3月からずっと合宿がなく、先月からオンラインで(トレーニングを)やっていたが、対面でみんなが直接会って一緒に高いレベルでのラグビーできるのがすごく嬉しい」と声を弾ませた。

3年前、高校生ながら「周りに助けてもらってベストプレーができたと思います」という津久井は、来年のW杯でも、当然、中軸としての活躍が期待されている。好きな選手は、強気なプレーが津久井に重なる、男子日本代表のSH田中史朗(キヤノン)だ。南アフリカ代表SHのファフ・デクラークのプレーもおおいに参考になっているという。

ラグビーで個人的にどんな点に注力しているか聞くと、津久井は「今はフィジカル面をまず強化しようと、(コロナ禍の)自粛期間中もずっとウェートをやって、(世界の強豪相手にも)負けない体を作ってきた。ゲームの中で走り続けられるフィットネスをあげていきたい。あとは、(SHは)FWとBKのつなぎ目のポジションなので、コミュニケーションしっかりとっていきたい」と話した。苦手だった下半身のウェートトレーニングにも精を出し、高校時代は40kg台だった体重を53kgにキープしている。

再開された合宿中にオンライン取材に応じた

やはり昨年、日本で開催されたW杯は男子の日本代表の活躍に勇気をもらったという。津久井は「男子(の日本代表)がベスト8に入って、電車に乗っていてもテレビをつけてもラグビーの映像が流れて、CMでもラグビーの選手が出てきた。燃えるというか、もっと頑張らないといけないという気持ちになった」と振り返った。

また2021年に延期された東京オリンピックを目指す同年代の選手にも刺激を受けている。「同世代の子たちがセブンズ(の日本代表)で活動している選手が多いので、同じ時期にやるなら負けないように頑張りたい。仲の良いのが平野優芽と田中笑伊(ともに日本体育大学3年)。小さい頃からユースで(一緒に)やってきたので、ライバルで仲間です」(津久井)

開催不透明でも「行く準備を」

ただ新型コロナの影響で、W杯の出場権がかかるアジア予選の開催時期はまだ決まっておらず、女子日本代表の本大会出場も決まっていないのが現状である。そのため津久井は「いつでも行けるような準備をしています。アジア予選では絶対優勝して(W杯の)出場権を獲得すること、そしてW杯で一つでも多く勝つという目標は変わっていません」と意気込んでいる。

もしかしたら来年、津久井を筆頭としたサクラフィフティーンの成績次第では、近い将来、女子のW杯も日本で開催される日が来るかもしれない……。大学生となり、精神的にも成長し、選手としても進化している津久井は「私たちも男子みたいに結果を残して、ラグビーを広めていきたい」と来年、ニュージーランドの地での活躍を誓った。

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