大学バレー

突然の代替試合中止、春高を湧かせたルーキー・ラストイヤーにかける4年生の思いは今

開幕戦でも早稲田大学は「王者」の強さを発揮した(すべて撮影・ 一般財団法人 関東大学バレーボール連盟)

10月3日、関東男子1部秋季リーグ戦代替試合が開幕した。ようやく訪れた実戦の舞台。しかし、新型コロナウイルスの影響から関東大学バレーボール連盟は10月12日、代替試合中止を発表した。11月30日からの全日本インカレこそは無事に開催できることを願い、開幕週に取材できた選手たちの姿と声を届けたい。

早稲田がインカレ3連覇 宮浦健人がいま思う4年生が残した“財産”の意味
東海大の3年生エース・新井雄大 4年生と同じ気持ちで絶対に日本一を
春高バレー男子初Vの東山高エース高橋藍 日体大で兄に、世界に挑戦

王者・早稲田でルーキーが躍動

代替試合には感染予防の観点から観客を入れず、チームの入場人数にも制限が設けられた。それでも春から夏、本来経験できたはずの試合が一度もなかったことを考えれば、多少の辛抱はあろうと、ユニフォームを着てコートに立ち、試合ができる喜びに選手たちの目は輝いていた。

先陣を切って行われたのは、会場校にもなった早稲田大学と駒澤大学の一戦。昨年まで全日本インカレを3連覇している王者・早稲田。鎮西高校(熊本)1年生の時に春高バレーを制したエースの水町泰杜(たいと)とリベロの荒尾怜音(れおん)が、ルーキーながらスタメンで大学バレーデビューを果たした。

水町は1年生ながら存在感を示した

両者ともに緊張を感じさせない堂々としたプレーで、攻守両面で活躍。ようやく訪れた早稲田大のユニフォームを着て臨む試合に、水町は「今まで試合がなかったので、ここから1試合1試合でチームの絆、チーム力を高めることを意識したい。4年生がいいプレーをできるように、後ろからしっかり声をかけたり、盛り上げ役としてやっていきたい」と笑顔で決意を述べた。

同じく鮮烈なデビューを飾ったルーキーがもうひとり。東山高校(京都)のエースとして昨年度の春高を制した、日本体育大学の高橋藍(らん)だ。1年生ながら今夏は男子日本代表の合宿にも参加。高校時代から抜群の評価を集めるサーブレシーブだけでなく、助走からジャンプ、ボールヒットまでを瞬時に行って放つ鋭いスパイクで存在感を発揮。初戦となった東海大学との一戦は1-3で敗れたが、「大学ではこれが初めての試合だったので、どういう形になるか分からなかったし、負けてしまいましたけど、次の練習やゲームに生かせる課題をつかめた。自分が1年生の内から出させてもらえている分、出られない先輩もいるので、その思いも背負って戦いたい」と高橋は前を見据えた。

高橋のデビュー戦は黒星だったが、ポテンシャルの高さを見せつけた

日本代表の新井である前に、東海大の新井

高校時代から華々しい戦績を残したルーキーの活躍も目立つ一方、彼ら以上にこの代替試合の開幕を待ち望んでいたのは各校の4年生たちだろう。

今季、早稲田大の主将となった宮浦健人(4年、鎮西)は「久しぶりの試合で緊張した」と言いながらも開幕戦は3-0で快勝。しかし第2セットには9-7とリードした場面から攻撃が通らず、連続失点を喫して9-12と逆転を許すなど、苦戦する場面も。結果的にこのセットも終盤、水町のサービスエースや宮浦のブロックで逆転した早稲田大が制し、ストレート勝ちを収めた。それでも宮浦は「課題であるS1(セッターのサーブから始まるローテーション)が切れず、連続失点をしたのは反省点。でも最初の試合でそれが露呈したのはプラスに考えて、これからもっと精度を高めたい」と、勝利の喜び以上にまずクリアすべき課題を掲げた。

コロナ禍で各校、そろっての練習ができない日々が続く中、とくに苦しい状況に置かれていたのが東海大だ。4月7日から7月12日まで全体練習ができず、選手たちはそれぞれの自宅で個別練習。その間、4年生が軸となり家でもできるトレーニングメニューを考え、共有。中心になったのが今季から主将となった新井雄大(4年、上越総合技術)だ。

東海大の主将になった新井(1番)は、新たなチャレンジにも取り組みながら、チームのために戦う

1年生の時から試合出場の経験を重ね、日本代表候補にも選出されるなど大学バレー界では常に注目を浴びてきたが、目指した日本一のタイトルは獲得できず。今季から主将となり、小澤翔監督も「日本代表の新井である前に、東海大の新井、東海のキャプテンは何ぞや、ということをずっと説いてきた。苦しみながら、よく頑張っていると思う」と言うように、重ねた経験や意識の変化はプレーでも現れた。

これまでのセッター対角からレフトにコンバートし、サーブレシーブをしてから攻撃に入るため、負担は増える。だが自身も新たなチャレンジに「楽しい」と目を輝かせ、自らだけでなく「チームとしてもバックアタックが増え、攻撃力が上がった。まだ初戦なのでバタバタするところもあったけれど、修正して、もっとよくなっていけると思う」と手応えを示した。

「この悔しさも全日本インカレで」

ようやく始まった、バレーを存分に楽しめる季節。これまでできなかった試合を重ねることで、全日本インカレへ向け、一気にチームとしての完成度も個々のスキルも完成し、上達していく。そのはずだった。

秋季リーグの代替大会は本来ならば11月1日まで行われる予定だったが、出場校に複数の新型コロナウイルス感染が生じたことや、感染拡大予防の観点から、やむを得ず10月12日に大会の中止が決定。我慢して、我慢してやっと迎えた舞台だっただけに、突然の決定は選手にとって大きなショックであり、全日本インカレがある、と思ってもなかなか簡単に切り替えられるものではない。

だが、それでも今できることは何か。なくなった試合を嘆くのではなく、一歩でも前へ進むことだ。中止にショックを受けた4年生たちも、少しずつ気持ちを切り替え「この悔しさも全日本インカレですべて出し尽くせるように頑張る」と前を向き始めた。できることは限られているとはいえ、強くなることはできず。11月30日から開幕する全日本インカレでその雄姿が見られるよう、今は願うばかりだ。

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