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特集:東京オリンピック・パラリンピック

富樫勇樹×ベンドラメ礼生 Bリーグで戦うプロとして、学生に「自分を出してほしい」

第2節でサンロッカーズ渋谷と千葉ジェッツふなばしが対戦し、91-93、87-86の熱戦を繰り広げた(写真提供・B.LEAGUE)

10月2日、男子プロバスケットボールリーグ「Bリーグ」の2020-21シーズンが開幕した。各会場は新型コロナウイルス対策で、観客は収容人員の50%(上限は5000人)と制限はあるものの、「正直、開幕は無観客なのかなと思っていました。Bリーグが開幕できて試合ができることに喜び、幸せを感じられたし、より質の高いプレーが見せられるんじゃないかなと思います」と千葉ジェッツふなばしの富樫勇樹(27)は言う。

その千葉ジェッツと10月11~12日、1~2点差の熱戦を繰り広げたサンロッカーズ渋谷のベンドラメ礼生(27)も、「あの試合は気持ちが入った。無観客だと空回りすると思うし、観客がいるからこその試合だったと思います」と答えた。コロナ禍の中、5年目のBリーグを迎えての思い、そして学生アスリートへのメッセージをふたりに聞いた。

プレーで魅せるのがプロ、でも他にもできることはある

Bリーグは昨シーズン、無観客での試合に切り替えた後、3月27日に全試合の中止を発表した。富樫は「コロナがどのくらい危険なのか分からない状況で、全員が不安に思っている中でプレーをしていました」と当時を振り返る。だからこそ今、プレーができることが素直にうれしく、待ってくれていたファンの期待に応えるプレーを見せたいと考えている。感染予防の観点から大声での応援は禁止されているものの、「でもつい叫んじゃうと思うんですよ。だからみんな、うがいや手洗いもして気をつけてね」とベンドラメも改めて注意を促した。

昨シーズンが途中で中止になった中、新たに選手たちが始めたものもある。ベンドラメは自身のTwitterでドリブルを披露する「#ドラメの真似」を展開。「ドリブルは自分もどうせやるんだし、だったらSNSで流してみようかなって。これでどうにかして世の中を変えてやろうというほどの強い意志はなかったんですけど、暇だったし、SNSでないと人と会話する機会がなかったので楽しんでやっていました」。ふたりと同じ“93年組”の広島ドラゴンフライズの田渡凌(27)も、自身のTwitterで「エアロビチャレンジ」を投稿し、一躍話題となった。

ベンドラメ(左)がSNSで披露した「#ドラメの真似」のドリブルは、誰かのきっかけになっている(写真提供・B.LEAGUE)

プレーで魅せるのがプロという思いがある一方で、各選手のキャラクターを生かして情報発信することもまた、Bリーグを盛り上げていくひとつの方法という意識が選手たちにある。SNSに対して「僕はあまり積極的ではないかもしれない」と話す富樫も、「でもひとりの選手として注目されることはうれしいので、それを生かして何かできたらいいなとは思っています」と言葉を続けた。

プレー以外の面に関して、ベンドラメとしてはオフシーズンなどを活用してバスケクリニックができればと考えている。「毎年行われているクリニックがパッと浮かばないので。バスケがもっとうまくなりたいという子も、まだバスケに触れたことがない子にも教えてあげたい。考えただけで自分たちも面白そうだなって。自分が子どもだったら、プロの選手の話を聞いてみたいと思うだろうし」。自分をきっかけにして意識が変わる選手もいるかもしれない。だからこそ、プロとして伝えていきたいという思いがある。

富樫、年下の選手との対戦で自分も成長

特別指定選手としてBリーグに挑む学生は年々増えており、昨シーズンを振り返ると、サンロッカーズ渋谷には2シーズン続けて盛實海翔(当時は専修大4年、現・サンロッカーズ渋谷)が、千葉ジェッツには大倉颯太(現・東海大3年、北陸学院)がBリーグの舞台を経験した。東海大4年生だった時にアーリーエントリーで日立サンロッカーズ東京(現・サンロッカーズ渋谷)に入団したベンドラメは、「大学生にこういう選択肢があるのはすごくうらやましいなと思いました。今の大学生はみんなうまいですよ」と評価。とくに盛實に対しては、「(大学を卒業してから)まだ1年目だけどルーキー感もない(笑)」とその存在感を認めている。

特別指定選手を経て、盛實(左)は今シーズン、プロ1年目を迎えている(写真提供・B.LEAGUE)

富樫は高校卒業後、アーリーエントリーで当時はbjリーグだった秋田ノーザンハピネッツに入団している。そのため特別指定制度に対し、「僕はプロになるのが早かったし、自分の年齢と重ねて見てしまうところがあるんですけど、正直もっと途中からでもインパクトを残せる選手はいるんじゃないかなと思っています」と話す。特別指定選手はシーズンの途中からチームに合流し、途中で抜けてしまう難しさを思う一方で、「自分の立場とか関係なく、せっかくきたんですからひとりの選手として自分を出してほしい」とアグレッシブな姿勢を学生に求めている。

大倉(右)は昨年12月21日の横浜ビー・コルセアーズ戦で、Bリーグデビューを果たした(写真提供・B.LEAGUE)

富樫がそう話すのにはわけがある。「年上の選手とやる以上に、(年下の選手には)自分が何かを見せないといけないなと思う部分があります。そういう選手たちと対戦することは自分の成長にもつながっています」。大倉とは彼が高校生だったころから交流があり、昨シーズンはチームメートとしてマッチアップする中で、何かを感じとってほしいと思いながら接していたという。「颯太はもう、自分が何か言ってどうこうの選手ではないですし、また成長した姿を東海大学で見せてくれるといいなと思っています」と、Bリーグを経験した大倉の今シーズンに期待している。

年下の選手が増えてきた中、富樫(右)はそんな選手たちと対戦できることが自身の成長にもつながっていると話す(写真提供・B.LEAGUE)

プロを目指す学生へ「目指すところは変わっていない」

大学バスケも今年は中止・延期が続き、とくに4年生にとってはこのラストイヤーに戦える舞台が限られている。その状況下でもまずは限られた試合を楽しんでほしいとベンドラメは言うが、プロを目指している選手に対し、「試合がないことでモチベーションが上がらないのは、正直、いいわけにしか聞こえない」と苦言を呈す。「Bリーグはなくなっていないんですし、目指すところは変わっていないはずですから」

その思いは富樫も同じだ。「日本の大学についてはよく分からないですけど、置かれている状況はどのチームも一緒だと思うので、その中で自分がやれることを探してやってほしい。各選手が次のステップ、目標に向かってしっかり行動してほしいかな」

ベンドラメも富樫も、Bリーグという同じ舞台で、若い力とぶつかれることを楽しみにしている。

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