アメフト

日体大は何を目指し戦うのか、昇格なきシーズン 関東大学BIG8

青学大戦でライン際を突進する日体大のRB千代修平主将(撮影・朝日新聞社)

関東大学アメリカンフットボールBIG8(1部下位リーグ)の日本体育大学は「1年でTOP8復帰」という目標を失ったシーズンになった。1部が現行制度になった2014年以降、日体大は毎年入れ替え戦に回りながらTOP8を死守してきたが、昨季はついに、進境著しい桜美林大に6-16で屈した。巻き返しを誓ったはずの今季は、シーズン前にコロナ禍の変則日程で昇降格がないことが決まった。トライアンファントライオンが愛称のチームは何を目指すのか。

「あとは任せた」千代主将は教育実習へ

日体大は10月24日のBブロック初戦で、昨季7位の青山学院大学に29-21で何とか競り勝った。RBの千代(せんだい)修平主将(4年、日野)は「試合ができる喜びをグラウンドで表現しようと思ったが、今までと相手も違うので、少し様子をみてしまった。それでも、勝ちは勝ち、次につなげたい」。昨季は入れ替え戦も含め戦った7試合は全敗。内容に満足はしてなかったが、久々に勝利の味をかみしめた。そして、試合後のハドルが始まると、全員の前で言った。「あとは任せたぞ」

「来年、再来年につなげられるシーズンに」と千代主将(撮影・朝日新聞社)

実は体育教師を目指す千代は、11月から都立高校での教育実習に入った。期間内の2試合は出られず、試合に戻るのは12月のAブロック同順位との最後の1試合になる予定。例年、教育実習は春シーズン後に行うが、今年は新型コロナウイルス感染拡大で、受け入れがこの時期へずれた。影響はこんなところにも及んでいる。日体大は初戦も教育実習で主力2人を欠いていた。それでも、千代は「戻ってきて、チームが『こんな変わったんだ』ぐらいがうれしいですね」と前向きだった。

一枚岩になる4年生

玉ノ井康昌ヘッドコーチは「一番の目標がなくなったが、今年の4年生は一枚岩になって乗り越えようとしている。そこは素晴らしい」。主務でグラウンドでも活躍するDL菅哲平(4年、駿台学園)が教えてくれた。「この代は2年の時から学年ミーティングを行う習慣があった。だから、オンライン会議でも意見が出ないということはなかった」。コロナ禍で集まれない時期も、同学年のつながりは保てた。

日体大のDL菅哲平主務(本人提供)

昨年は力強い主将一人にみんながついていくようなチームだった。自律を掲げた今年は、主将に加え5人の幹部がはたからみたら誰がリーダーかわからないぐらいで、各ユニット単位に活動してきた。初戦後も千代はしばらく練習に顔を出していたが、グラウンドの仕切りは他の幹部に任せていた。菅によると、「千代がよく言う言葉は『お前らのことを信じているから、俺を信じて、仲間を信じよう』ですから」。

目標達成だけが自分たちの価値じゃない

今季の結果で昇格がないことが正式に決まったのは9月。千代は言っていた。「何回も話を重ね、目標達成するだけが自分たちの価値じゃない。後輩に伝えていくこともその一つだと。4年生全体で納得いく形にして、最後は上がれないにしろ、来年、再来年につなげられるシーズンにしようという感じになった」

5年前の秋、市営立川球場で高校野球の両校主将は本塁を挟みあいさつした。秋季東京大会2回戦、駿台学園が2-1で日野を下した。その時の駿台の菅主将は日体大の世田谷キャンパスでたまたま見たアメフトの練習が格好良く入部した。肩を壊して別の競技を探していた日野の千代主将は未経験者も多いフットボールを選んだ。入部後に、「あの時の……」と顔を見合わせ再び交わった2人が、異例のラストシーズンを戦う日体大を支えている。

in Additionあわせて読みたい