ラグビー

天理大学は活動休止の苦難乗り越え目指すリーグ5連覇、関西大学ラグビーが開幕

開幕戦で独走する天理大学のCTBフィフィタ(撮影・すべて佐藤祐生)

関西大学ラグビーAリーグ第1節第1日

11月7日@天理親里
▽Odd(奇数)組
関西学院大(1勝)28-14近大(1敗)
天理大(1勝)64-0摂南大(1敗)

関西大学ラグビーが開幕した。今季は例年の8校によるリーグ戦ではなく、昨季の成績をもとに4校ずつが奇数と偶数の二つの組に分かれて戦う変則日程になった。両組の同じ順位同士が対戦して最終順位を決め、3位までが全国大学選手権への出場権を手にする。8月に新型コロナウイルスの集団感染が発生し、約1カ月の活動休止に追い込まれた天理大学は、苦難を乗り越えて目指すリーグ5連覇になる。

地元での開幕戦に入場する天理大の選手

11月7日の地元での初戦はCTBシオサイア・フィフィタ(4年、日本航空石川)の先制トライにはじまり計10トライの猛攻で摂南大学を圧倒した。「ミスもあったが、無失点は一つの成果」と小松節夫監督。フィフィタは「大きな困難と壁があったが、いろんな方々に支えられこの場に立つことができた」と口にした。

8月に集団感染、寮は閉鎖で夏合宿も中止

天理大は8月12日、部内で新型コロナの感染が確認され、その後部員168人のうち、62人にまで感染が広がった。全国的な自粛期間が明け、6月に練習を再開して約2カ月が経った時期。強度を上げ、実戦練習を増やしていこうという矢先に活動休止となり、寮は閉鎖され、夏合宿は中止になった。部員らは病院やホテルなどで散り散りに過ごすことになった。

集団感染の影響は部内にとどまらなかった。部員ではない学生たちが教育実習の受け入れ先やアルバイト先から不当な差別的扱いを受けた。「感染を防げなかった責任があるのでは」と大学や天理市には批判や謝罪を求める電話やメールが相次いだ。一方で部員たちのもとには、ファンやラグビースクールの子どもらから応援メッセージや動画が多く届いた。主将のフランカー松岡大和(4年、甲南)は「『何してんねん』『どうなってんねん』という声もあったが、これだけ応援してもらっているんだということを実感した。頑張っていける原動力になった」と振り返る。

活動休止は約1カ月に及んだ。松岡は神戸市内の実家で自重トレーニングをしたり、自宅前の坂道を走ったり、南半球最高峰リーグ・スーパーラグビー(SR)の動画を見たり。「試合がなくなるんじゃないか」「練習だけで終わるのでは」。そんな不安をぬぐえない部員もいたが、各自で工夫して備えた。

開幕戦でトライを決める天理大のロック中鹿

寮の相部屋の人数削減や消毒の徹底など感染対策を改め、練習が再開できたのは9月10日だった。小松監督は当時、「思っていたよりも体力は落ちていなかった。一人ひとりが限られた中で努力していたと感じた」と話した。

「恩返しの日本一を」

十分に練習が積めていない天理大などを考慮して、リーグ戦の開幕は約1カ月遅らされた。代わって10月には交流試合があり、天理大は3戦全勝だった。ただ、反則やミスが目立ち、小松監督は「万全の準備ができたとは言い切れない。ゲームをしながら仕上げていく」と話していた。

試合後に取材を受ける天理大の小松監督(左)とフィフィタ

調整不足とはいえ、スーパーラグビーのサンウルブズに参加したフィフィタや2年生ながら強力なNo.8山村勝悟(2年、天理)らがいる。全国大学選手権は前々回大会準優勝、前回は4強。松岡主将は「つらい日々を過ごした中でも、サポート、応援してくださった方々がいた。恩返しのために必ず日本一を勝ち取る」と誓っている。

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