陸上・駅伝

東洋大主将・大森龍之介 ラストシーズンは「どんな場所でも最高の役割を果たす」

レースを終え、悔しそうに天を仰ぐ大森(すべて撮影・藤井みさ)

第99回関東学生陸上競技対校選手権大会

11月22日@神奈川・相模原ギオンスタジアム
男子1部5000m8位 大森龍之介(東洋大学)15分27秒72

11月22日の関東インカレ男子5000mに、東洋大学陸上部長距離の主将を務める大森龍之介(4年、佐野日大)が出場した。ラストイヤーにチームを率いる立場としての思い、そして個人としての思いを聞いた。

徐々に集団から離れ、苦しい走りに

新型コロナウイルスの影響により、例年の5月開催からこの時期に移動した関東インカレ。箱根駅伝前ということもあり、エントリー選手も少なかった。当初は1部と2・3部のレースは別の予定だったが、出場選手が減ったことにより1~3部すべて、21人の選手が同じレースを走ることになった。

スタート直後は全体が大きな集団に。大森は集団の後方についた。1000mの通過は2分55秒、2000mは2分52秒。2000mを過ぎると大森は前の集団と離れ、次第に単独走となった。その後もペースが上がらず苦しい表情。結果的に全体の最後から2番目、15分27秒72でフィニッシュした。

足に不安を抱えながらの出場だった(5番が大森)

佐野日大高校時代に5000m13分台を出し、東洋大の主力となるべく入学した大森。しかし入学後はずっとけがとの戦いで、学生3大駅伝への出場はなし。大きな大会は1年春の関東インカレ5000m以来の出場だった。9月末にオンラインで取材した際には、「手応えを感じている」と答えてくれた大森。10月11日のトラックゲームズinTOKOROZAWAで14分26秒20、同24日の平成国際大学記録会で14分16秒54と調子を上げているように思われた。だがこの日は苦しい走りになった。

キャプテンとして諦めず取り組む姿を見せたかった

レース後、大森は「結果は全く出ていなくて、不甲斐なさは痛感してます」。キャプテンとして、「厳しい戦いになるかもしれないけど、そこに向かっていく姿を見せることだけだと思って走りました。今回、結果は出なかったですけど、そこに向かうにあたって取り組むべき姿は最低限見せられたかな、という気持ちと、もうちょっとやれたのかな、という気持ちです」と率直な気持ちを口にした。走る前から足に不安を抱えており、不安が的中してしまった。けががうまく治らず、練習もうまく積めないままここまできてしまったのだという。

だが、欠場するという選択肢は大森にはなかった。「4年生として最後だし、そういうことを言っている場合ではないなと。箱根前の大事なシーズンですし、『逃げる』という選択肢を取るのはチームにとってプラスではないかなと思ったんで、そこは逃げずにやるしかないということで取り組みました」。そしてこのけがの経験も後輩たちに伝えて、少しでも苦しい気持ちや悔しい気持ちを減らせれば、という。どこまでもチームのことを考えているキャプテンだ。

ラストシーズン、「感謝」を胸に

大森は1年生のときから学年主任を務めてきた。年始の箱根駅伝で10位に終わり、「チームを1から作り直す」という思いで酒井俊幸監督から主将に任命された。このコロナ禍でチームはいったん全員帰省となり、物理的にはバラバラに。だがLINEやzoomなどを使い、コミュニケーションを密に取るようにと常に心がけてきた。4年生でエースの西山和弥(東農大二)も「大森がチームの雰囲気を良くしてくれている」とチーム内で彼への信頼は厚い。

全日本大学駅伝で西山が本来の走りをできなかったときには、「エースなんだからしっかり走らないと」と大森は西山に厳しめに言葉をかけたという。「最初は落ち込んでましたが、しっかり切り替えて今は『任せとけ』って感じになっているので、そこに関しては大丈夫だと思います」と同級生への気遣いも見せる。

キャプテンとしてアスリートとして、最後まで諦めない姿勢を見せたい。その思いで走った

チームスローガンは「回帰と挑戦」。「回帰」、そもそもなぜ陸上をやっているのか? と後輩たちに投げかけ、今年改めてチームみんなで考えるようになったのだという。そう後輩たちに問いかけるときに、自分でも同じように考えていたかとたずねてみた。「4年間うまくいかなくて、自問自答の日々でやってきました。陸上はこのままでいいのか、なんでこの状態なのか。そういうところも非常に考えさせられました」。そして大森がたどりついたのは「感謝」だった。「こういう状況でも応援してくださる方たちがいると改めて感じることができたので、そういった方たちへの恩返しも含めてやっていかないといけないな、と思っています」

どこに配置されても最高の役割を

箱根駅伝のエントリーメンバーが発表されるのは12月10日。まだメンバー入りは諦めていませんよね? そう聞くと「自分自身最後ということで、走れないのは悔しいので。チャンスがある以上、アスリートとして最後まで諦めないでやる姿勢を見せていかなきゃいけないなと思います」という。そしてもしメンバーに入れず、サポートに回ったとしても、自分自身で最高の役割を果たす、と言葉に力をこめた。

どこに配置されても最高の準備を。4年間の集大成はもうすぐだ

大森が常々チームに向けて言っているのは「走る選手と周りの選手、お互いが支え合ってこそチーム」ということだ。チーム状態は全体的に上がってきているので、ミスをしなければ必ず上位に食い込めると手応えを見せた。大森は最後までキャプテンとして、言葉で、心で東洋大陸上部を引っ張り続ける。

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