陸上・駅伝

東洋大ルーキー・松山和希、5000mでまた自己ベスト 「堅実」を重ねて強くなる

トラックゲームズ in TOKOROZAWA

10月11日@早稲田大学・織田幹雄記念陸上競技場
男子5000m
2位 松山和希(東洋大1年) 13分48秒80

10月11日に行われた「トラックゲームズin TOKOROZAWA」は、松山和希(東洋大1年、学法石川)にとって東洋大学の正ユニフォームを着て走る初めてのレースだった。9月21日に行われた平成国際大学秋季競技会5000mで13分50秒56の自己ベストをマーク。今大会では1年生ながら5000m2位となり、記録も13分48秒80とさらに伸ばしている。ともにWA規格外シューズでの記録ではあるが、学生3大駅伝を前にしてその力を見せつけた。

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ラスト1000mで勝負

今大会は早稲田大学、東洋大学、明治大学、創価大学の4校による対校戦で、5000mには各校から4人の選手が対校戦レースとして出走した。初めて着る憧(あこが)れのユニフォームは素直にうれしく、感動したという。

その一方でレースでは、常に2~3番手から先頭をうかがう積極的な走りを見せた。1000m2分47秒前後のペースでレースが進み、3400m地点で小袖英人(4年、八戸学院光星)がトップに出ると先頭集団は5人にしぼられた。松山はすぐ小袖の後ろにつき、ラスト1000mでしかけてトップに立つ。そのまま松山と小袖の一騎打ちになり、松山が先頭のままラスト1周の鐘が鳴る。しかし最後は小袖が意地を見せ、ラスト300mで松山を抜き去るとそのままゴール。2位でゴールした松山はしゃがみ込み、同じレースに出走した先輩の蝦夷森章太(東洋大3年、愛知)からは頭をなでられながら健闘をたたえられた。

レース後、先輩の蝦夷森が松山を労った(撮影・朝日新聞社)

レースを振り返り、「勝つという意味でも、あそこ(ラスト1000m)でしかけるのが自分にとってもベストだったんですけどしっかり勝ち切れず、そこはまだ自分の弱いところなので、これからしっかりつめていけたらと思っています」と松山。それでも連続で自己ベストを更新できたことは自信となり、今後に対しても「東洋大学のユニフォームを着て恥ずかしくないレースをしていきたい」と意欲をのぞかせた。

相澤晃先輩と同じく学法石川から東洋大へ

松山は昨年の全国高校駅伝(都大路)で各チームのエースが集う1区を走り、トップだった八千代松陰高校の佐藤一世(現・青山学院大1年)と2秒差での区間2位。今年1月の都道府県対抗男子駅伝では5区で14人抜きをなし遂げ、区間記録タイの23分55秒で区間賞を獲得している。その都道府県対抗男子駅伝で福島チームの襷(たすき)をつないだ相澤晃(現・旭化成)は学法石川の先輩であり、東洋大の先輩でもある。「(駅伝の)レース前とか相澤さんがよく声をかけてくださって、それで楽に走れた部分があります」。高校も大学もすれ違いではあるが、今年の箱根駅伝2区区間新を樹立した先輩の走りは今も深く記憶している。

昨年の全国高校駅伝での松山(中央7番)。右隣12番が佐藤一世(撮影・藤井みさ)

新型コロナウイルスの影響で東洋大陸上競技部は3月末から自宅待機となり、チームでの練習ができなくなった。時を同じくして松山は右足のくるぶしをけがしてしまったため、その間はフィジカルを鍛えるトレーニングを実施。7~8月になってやっとジョグができるようになり、その8月にはチーム練習も再開できるようになった。

松山自身は自宅待機の期間もマイナスには捉えていなかったが、走れなかったことで心肺機能がかなり落ちていることを実感したという。当初は速いペースで追い込む練習についていくのが精いっぱいだった。しかし次第に余裕を持てるようになり、そうした練習を継続することで自信をつけることができたという。チームのトップ選手と参加した夏合宿でも最初は自分の弱いところを痛感させられたが、25kmの距離走など距離を踏むことで少しずつ自分の成長を感じられたと振り返る。

三浦や吉居、ルーキーたちの活躍は刺激になるも

今年の出雲駅伝は中止になったが、今後の成長のためにも1年目から経験することが大事だと考えている。全日本大学駅伝でしっかりメンバーに入りをして区間上位を狙えるようなレースをし、そこで得た自信をもって、ずっと夢見てきた箱根駅伝に挑みたい。2年目からは全日本と箱根での経験を踏まえ、最低限の確実なタイムでしっかりと走る「堅実なレース」と、区間賞・区間新を狙って走る「挑戦的なレース」をともに体現していく。

松山の同世代には、大学初戦で3000m障害(SC)日本歴代2位となる8分19秒37をマークした三浦龍司(順天堂大1年、洛南)や、5000mでU20日本新記録となる13分28秒31をたたき出した吉居大和(中央大1年、仙台育英)など、早くも目覚ましい活躍を見せている選手もいる。それでも「多少刺激は受けますけど、焦ったりはせず、自分なりにマイペースに、結果を出していけばいいかな」と松山。堅実的という印象を受けるが、レースに対しては「自分はどちらかというと、レースプランを立てるよりは感覚で、今日はこんな感じだな、と自分で感覚をつかんで走ることが多い」と話す。

今年の箱根駅伝で東洋大は10位となり、初優勝した2009年から11年続いた3位以内が途切れた。その箱根駅伝をテレビで見ていた松山は悔しさをもって受け止め、東洋大にやってきた。「自分はまだ1年生なので、経験を積んでこれからステップアップしていけたら」と言いつつも、自分が加わることで下からチームを盛り上げていきたいという思いはある。東洋大学の誇りを胸に、松山は初めての学生駅伝に挑む。

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