陸上・駅伝

城西大・菊地駿弥 「一番」にこだわる有言実行のキャプテン、箱根で集大成を見せる

日本人1位となり、ガッツポーズでゴールする菊地(すべて撮影・藤井みさ)

八王子ロングディスタンス2020

11月21日@東京・八王子市柚木陸上競技場
7組5位(日本人1位)菊地駿弥(城西大)28分08秒25

2年ぶりに箱根路に戻ってくる城西大学。そのキャプテンとして、エースとしてチームを引っ張っているのは菊地駿弥(4年、作新学院)だ。「一番」を目指して走っているという菊地のラストイヤーにかける思いを聞いた。

冷静にペースを刻み笑顔の自己ベスト

11月21日の八王子ロングディスタンス、菊地は実力ある実業団選手や海外勢の選手に混じって走った。昼頃には強風が吹いていたがほぼおさまり、コンディションが整ってきた中でスタート。直後に一色恭志(GMOアスリーツ)が飛び出し、400m63秒というハイペースで入った。その後1km2分48秒と落ち着き、菊地ははじめ集団の後方にいたが次第に前へ。

5000mを過ぎて海外勢のペースが上がると次第に集団は割れ、ケニア勢ランナーの先頭集団の後ろに野中優志(大阪ガス)、次いで一色、菊地、栃木渡(日立物流)、中村高洋(京セラ鹿児島)、細谷恭平(黒崎播磨)の6人の集団となった。その後野中と中村が落ち、4人で競うように。菊地はペースを落とさず刻み続け、ラストの直線で一色、栃木、細谷の3人をかわし、日本人1位の28分08秒25でゴール。思わず笑顔とガッツポーズが出た。

イーブンペースを刻むことを心がけ、自分に落ち着けと言い聞かせて走った

レース後のインタビューで「自己評価お願いします」と言われたのを「自己紹介」と勘違いし「城西大学4年の……」と話し始めるおちゃめな面も見せた菊地。今回が学生最後のトラックレースだということもあり、全日本大学駅伝での疲労も取れ、準備をしっかり積み重ねてこのレースに臨んだ。「今まで一番を取れたことがなかったので、確実にいけてホッとしているのと、良かったなっていう気持ちが初めて出てきました。嬉しいなって気持ちが一番です」と笑顔を見せた。

「一番」にこだわって

菊地は今年、「一番」にこだわってやってきた。10月の箱根駅伝予選会で日本人トップを狙うも、最後のスパートで順天堂大の三浦龍司(1年、洛南)らにかわされて4秒差の日本人4位に。11月1日の全日本大学駅伝では、昨年走って12位と悔しい思いをした2区にリベンジし、区間2位。驚異の17人抜きをした皇學館大の川瀬翔矢(4年、近大高専)に区間賞は譲ったが、前を行く順天堂大の伊豫田達弥(2年、舟入)を抜いて先頭を走り「気持ちよかった」と口にした。そして今回の日本人トップ。櫛部静二監督とも「一番を取ろう」と約束していた通りの結果を出した。

櫛部監督と笑顔で言葉をかわす菊地

日本人トップもさることながら、28分一桁台のタイムもすごいですね、と問われると「本当は学生で一番のタイムで行きたかった」という。現在の10000mの学生1位のタイムを持っているのは、東洋大の西山和弥(4年、東農大二)の28分03秒94だ。「監督からは『27分台の可能性もゼロじゃないぞ』と言われていました。20秒を確実に切るのは目標にしていて、このタイムでも嬉しいのは嬉しいんだけど、上には上がいるというのも感じるので、卒業してからも『一番』にこだわってやっていきたいと思います」

20秒を切る練習はできていたという菊地。櫛部監督からも「イーブンペースでいけばタイムは出せる」と言われていたので、他の選手が出てもあわてない、焦らないと決めていた。「ちょっと(間隔が)空いても落ち着け、落ち着けと自分に声をかけるようにしてました」と冷静にレースを進められたと語った。

同じ組には東京国際大のルカ・ムセンビ(2年)や拓殖大のジョセフ・ラジニ(2年)などの留学生もいた。しかし練習ができていた自信もあり、「引いちゃだめだ」と思って強気でいけたことも結果につながった。昨年箱根駅伝で2区を走ったラジニの前でゴールできたことは「本当に自信になった」という。「後ろから見てもきつそうだったので。相手の状況を判断して走れるようにもなりました」

強い先輩の背中を追い「どうしたらもっと強くなれるか」を考えた

今年菊地は城西大を引っ張るキャプテンとして、言葉と走りで引っ張ることをずっと心がけてきた。チームスローガンは「一人の力をみんなの力に」。21日のこのレース、22日の関東インカレ、23日の10000m記録挑戦競技会とレースが続き、城西大の他のメンバーも出場した。メンバーには「今日絶対刺激入れっから」と言って来たといい、有言実行の結果になった。そして23日には砂岡拓磨(3年、聖望学園)が今までのベストを40秒以上更新する28分24秒48で走り、チームにいい流れをもたらした。

いまは「頼もしい」という言葉がぴったりくる菊地だが、ずっとこうだったわけではない。1年生の時は「人の話もろくに聞けてなかった、言ってることとやってることが違う選手だった」と振り返る。練習で「こうしたらいいよ」というアドバイスをもらっても実際はやらなかったという。それが2年のときにけがをして、どうやったらもっと強くなれるのかを考えて変わってきた。

チーム全体で強くなり、箱根で結果を出すために。走りと言葉で最後までチームを引っ張る

強い先輩たちはどうやっているのか。OBの村山紘太(現・旭化成)などが監督や周りの人たちの話を聞いて、吸収していくのを見て、自分もやっていこうと思ったという。「今もそんなには直ってないんですけど」と笑いながら話す。

菊地は箱根駅伝では2区を走る、とすでに公言している。「1番、区間賞」は変わらず目指していきたいという。「そのためにも1カ月弱、監督とチームメイトみんなで準備していきたい」と明るく語った。「チームみんなで強くなっていきたい」と笑顔で語るキャプテンは、学生最後の舞台に向けて着々と準備を進めていく。

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