過去最高、過去最高の城西大、箱根は?
城西大は今シーズン、出雲、全日本でともに過去最高の8位に食い込んだ。箱根でも過去最高の6位を上回れるかに注目が集まる。12月15日に城西大学坂戸キャンパスであった箱根駅伝の合同取材。2001年の創部からチームを見てきた櫛部静二監督は「最低でも5位はいけると考えてます」と力強く語った。
エースの座を争うように成長
城西大は前回、1区で出遅れた。「1区で30秒前にいれば5位圏内で戦えたはずだ」と櫛部監督は考えている。今回は1~4区は5位以内で走り、5区は前回も山を登った主将の服部潤哉(4年、中京大中京)でジャンプアップを狙う。城西大は山が鬼門だった。前回のレースが終わった直後、櫛部監督は服部に「来年も5区だから。今度は区間賞をとるんだよ」と声をかけた。服部に早いうちから山登りをイメージさせ、1年かけて育ててきた。
櫛部監督は昨年、「絶対的なエースがいない」と話していた。その真意を尋ねると、「もっと個性を出して、自分が一番強いんだってアピールするぐらいの選手が出てきてもいいんじゃないか、と鼓舞させる発言ではありました」と語った。櫛部監督の思いが通じたのか、今年は状況が一変した。「監督としては、誰をエースと言えばいいんだろうって思ってます。一人をエースと言ってしまうと『なんで俺じゃないんだ』ってなりますから」。確かに城西大の選手たちは今シーズン、争うように成長してきた。
とくに、全日本では初めてシード権を獲得した。1区の西嶋雄伸(3年、名古屋経大高蔵)が15位と出遅れたが、2区の荻久保寛也(3年、三郷工技)が区間賞の走りで5位に浮上。7、8区はともに4年生の鈴木勝彦(二本松工)と金子元気(坂戸西)が区間5位の走りを続けて順位を押し上げた。全日本のあと、金子は上尾ハーフで日本人学生2位の1時間2分16秒。大幅に自己ベストを更新すると同時に、城西大学記録をも塗り替えた。金子の躍進もチームに勢いをもたらしている。金子は最後の箱根に向け、「この4年間で一番いい成績が残せるようなチーム状況じゃないかなって思ってます」と話した。
金子は1年生だったとき、いまのような勢いのあるチームになるイメージは持てなかったという。その年度、城西大は箱根にシード枠で出場したが、総合12位。2年生のときは予選会を突破できなかった。「城西は毎年箱根に出てたイメージがあったので、出られないなんて最悪だと思いました」と金子は振り返る。前回は当時の4年生を中心に意識改革に取り組み、予選会8位から本戦7位と躍進した。このとき金子も初めて城西大チームとして箱根を走った。
金子は今シーズン、けがで思うように練習を継続できず、5000mは春に一度出ただけ。10000mも全日本に向けての練習の一環でしかなかった。その中で上尾ハーフでの大幅自己ベストは自信となった。長い距離の方が自信が持てると話す金子は、その先にマラソンを見据えている。「後半、みんなが落ちてくるところで自分は粘れます。どんなレースでも最初はすごい苦しいなって思うんですけど、いま苦しいのを我慢してれば、どこかでほかの選手が苦しくなって、苦しさが逆転するって思ってます」。金子はレース前、不安を感じがちだというが、追い込まれたときはいい方に考えるように意識している。
ラーメン好きの“埼玉県人会”
埼玉出身の金子にとって、同じ埼玉県人の荻久保には特別な思いがある。城西大は埼玉の大学ではあるものの全国から強豪選手が集まるため、埼玉出身者は非常に少ないという。金子は荻久保が高校生だったときから知っており、城西大にも勧誘した。「自分としては『金子先輩に誘われて城西大に入りました』って全面的に言ってほしいんですけど」と笑った。
いまは一緒に温泉に行く仲で、お互いにおいしいもの、とくにラーメンが大好き。全日本が終わったあとにはラーメンを食べに行った。「箱根が終わったらどうします? 」と金子に尋ねたら「まだいまは考えられないけど、おいしいものを食べに行きたいです。やっぱりラーメンですかね」と答えた。
荻久保は今シーズン、5000mで13分台をマークし、全日本では区間賞を獲得するなど、めきめきと頭角を現した。金子には荻久保の活躍がいい刺激になっている。「一緒にいて競技力が高まる選手とそうでない選手がいる中で、荻久保は競技をやる上でも自分を高めてくれる選手です。今シーズン、自分は安定してなかったけど、彼はけがを乗り越えて継続的に練習ができてて、それが結果にも出てます。負けちゃだめだなって。『もっと頑張らないとだめだよ』って言われているような感じがしてます」
その荻久保は「1区を走って、全員抜いて区間賞をとりたいです」と言う一方で、「今回は主役じゃなくて『立役者』ぐらいでいいです。4年生やみんなを引き立てられるような流れをつくりたい」と話す。4年生と走る最後のレースでは、4年生が笑顔で締めくくれるように力を注ぐ。そのあとに金子と食べるラーメンは、最高のおいしさなのだろう。