国際武道大主将・早坂宇朗、急きょ決まったインカレで後輩に見せた闘争心
第73回 全日本大学男子選手権 3回戦
12月2日
国際武道大学 0(16-25.22-25.14-25)3 日本体育大学
強烈なサーブやスパイクにも、ひるんだら負け。元々、全日本インカレの場に立てること自体、諦めかけていたのだから弱気のプレーをしたって面白くない。関東2部リーグに属する国際武道大学の主将、早坂宇朗(4年、雄物川)は燃えていた。
日体大ルーキー高橋藍に対しても「ビビることねーぞ!」
前日の2回戦では、関東1部の青山学院大学をフルセットの末に打破。2回戦で対峙した日本体育大学も同じく関東1部リーグに属し、個の力だけでなく主将の西村信(4年、高川学園)を中心に組織力も高い。さらに今年度の日本代表候補選手にも選出された1年生の高橋藍(東山)もいる。早坂とリベロの池田河輝(4年、九産大付九産)を除けばコートに入るのは1、2年生ばかりの国武大のコートは、第1セット序盤に高橋のサーブで連続得点されると、弱気の表情が見て取れた。だから、早坂は何度も檄(げき)を飛ばした。
「相手は格上で、日本代表もひとりいるチームかもしれない。でも、同じ大学生で同じ1年生。ビビることねーぞ!」
開幕9日前に出場の連絡、積み重ねてきた練習の成果を今
新型コロナウイルスの感染拡大により、今年度、最初で最後の公式戦となったインカレは全体の試合数、出場校が削減された。当初は出場権がなかった国武大だが、大会直前に感染状況など様々な現状を踏まえた大学側の事情により、富山大学など複数の学校が出場を辞退した。大会開催が直前に迫っていたことから、移動リスクなどを鑑みて関東2部の大学に出場権が与えられることとなり、国武大の出場も急きょ決定。秋季リーグの代替大会を終え、「これでバレーボールも終わり」と実家に帰省していた早坂の元に、「インカレへ出られることになった」と連絡が入ったのは11月21日だった。
「何があるか分からないので、もしもの可能性を考えて代替試合が終わってからも練習はしていました。でもそうはいってもこれで終わりだろうと思っていたので、またみんなと試合ができるのはうれしかったです」
本来ならば、最終学年の今年は2部リーグで優勝して入替戦に勝利し、1部リーグに上がることを目標にしていた。だが春、秋ともにリーグ戦が中止になり、残念ながらかなえることはできなかったが、最後の最後に得たインカレ出場のチャンスだ。日頃から積み重ねてきたレシーブでつなぎ、ラリーに持ち込んで決める。粘りとしぶとさを前面に打ち出した練習の成果は、勝利した青学大との試合はもちろん、日体大戦でもいかんなく発揮された。
中でも、早坂が「今日の試合で一番のプレー」と挙げたのが第2セット、12-13の場面で放ったバックアタックだ。ブロックが振られ、スパイカーとレシーバーが1対1の状況から放たれた日体大の強打をリベロの池田がレシーブし、つないだボールに早坂がバックセンターから飛び込み放った会心の1本。このプレーがチームを勢いづけ、持ち前のディフェンスから流れをつくるプレーが次々つながり、15-13と一時は逆転に成功。最後は自力に勝る日体大が西村、高橋の攻撃を軸にブレイクを重ね、第1セットに続いて第2セットは22-25、第3セットは14-25。0-3で試合には敗れたが、早坂は悔しさや後悔よりも「やるべきことはやれた」と達成感に満ちた笑顔を見せた。
嫌いだったがレシーブが面白いと思えるようになった
雄物川高校(秋田)では高いトスを打ち切るエースとして活躍。厳しいレシーブ練習も重ねてきたが、高校時代は「嫌いだった」と振り返るレシーブの面白さを知ったのは大学に入ってからだ。何本も立て続けに打たれるボールを上げるだけでなく、レシーブの形や姿勢、一つひとつを紐解いて「こうすれば上がる」と教えられる中、実際に試合で実践すると本当にボールがきれいにつながる。スパイクほど派手なプレーではないが、国武大の伝統として大切につないでいってほしい。早坂はそう言う。
「僕は大学生になってから、初めてレシーブができるようになる楽しさ、喜びを知りました。後輩にも同じように感じてほしいし、例え相手がどれほど格上だろうと『もっとやってやる』ぐらいの闘争心を持ってほしい。主力メンバーも残るので、来年こそ、練習でしっかり落とし込んで、1部に昇格してほしいです」
どんな相手にだって、ビビらず戦えばいい。4年生が見せた闘志は、きっとこれからのチームに受け継がれていくはずだ。