ラグビー

特集:第57回全国大学ラグビー選手権

早稲田大学は連覇ならず、決勝最多失点に小林賢太ら4トライ及ばず

早大は3人がかりで天理大のCTBフィフィタにタックルにいくが、ボールをつながれる(撮影・全て朝日新聞社)

第57回全国大学選手権大会

1月11日@東京・国立競技場
▽決勝
天理大学(関西1位)55-28(前半29-7)早稲田大学(関東対抗戦2位)

ラグビーの第57回全国大学選手権決勝(1月11日)で連覇を狙った早稲田大学は天理大学に8トライを奪われて完敗した。28-55と決勝史上最多失点を喫し、流れを止められなかった。トロフィーを掲げて歓喜に沸く天理大の選手をみつめながら、23人のメンバーで3年生以下が17人残る若いチームは巻き返しを誓った。

天理大学が悲願の初優勝、平尾誠二さんの同志社大学以来、関西勢は36大会ぶり

開始直後、ボールをもらったプロップ小林賢太(3年、東福岡)が突破を図った。早大の強みの一つだが、天理大のフッカー佐藤康(3年、天理)に下にタックルに入られた後、プロップ小鍛冶悠太(4年、大阪産大附)にボールを奪われた。小林は「正直想定外だった。あそこまでボールにプレッシャーをかけてくるとは。セカンドタックラーにうまくボールに入られた」と振り返った。

前半20分、トライを決める早大のプロップ小林

早大は相手が蹴ってきたボールを蹴り返さずに、FB河瀬諒介(3年、東海大仰星)を中心にカウンターアタックを仕掛けた。継続して攻める中で相手の防御のほころびをつくゲームプランだったが、天理大の粘り強い防御に根負けして逆にピンチを招いた。相良南海夫監督は「用意したことをやり続けたことがあだになった」と言った。

ディフェンスで受けて後手に

今季の早大は守りを軸にチーム作りを進めていた。No.8の丸尾崇真主将(4年、早稲田実)は「たち返るのはディフェンス」と言い続けた。その防御でも受けに回った。FB河瀬は「前に出てディフェンスするところで上体が起きてしまった。胸でタックルしてしまう場面が多かった」と悔やんだ。複数でタックルにいったが、ロックのアシペリ・モアラ(3年、日本航空石川)には前進を許し、CTBシオサイア・フィフィタ(4年、日本航空石川)にはオフロードパスをつながれた。CTB市川敬太(4年、日新)の瞬時のスピードや素早いフラットパスに翻弄(ほんろう)された。前半3分に許した先制トライは、自陣ゴール前で天理大が密集サイドにこだわらず、フッカー佐藤が右へ素早いパスを出したのに対応できなかった。

ハイバントを捕って攻め込む早大FB河瀬

天理大学の小松節夫監督は「過去の決勝に出たチームと比べると経験値が高かった。1年生の時から3回悔しい思いをした今年の4年生が数多くいた。決勝にかける思いが過去2回に比べて強かった」と言った。SH藤原忍(4年、日本航空石川)、SO松永拓朗(4年、大阪産大附)、CTBフィフィタは1年生からレギュラーとして活躍してきた。2大会前の決勝は明大に惜敗した。自らのミスもあったフィフィタはそのビデオを今でも見ないという。

「この悔しさを忘れるな」

この日の早大はSH小西泰聖(桐蔭学園)のパスがぶれたり、SO吉村紘(東福岡)がキックをミスしたりと2年生ハーフ団が相当な圧力を受けた。昨季、大学日本一になった齋藤直人(サントリー)と岸岡智樹(クボタ)のコンビの後を受け、今季は安定した試合運びをみせていたが、天理のハーフ団に一日の長があった。

若いチームはそれでも後半に三つ返すなど4トライを挙げて追いすがった。関東大学対抗戦の明治大学戦(2020年12月6日)の完敗(14-34)から立て直し、2年連続の国立競技場までたどり着いた。試合後、初優勝の喜びに浸る天理大の選手を見届けながら、FB河瀬は4年生のWTB古賀由教(東福岡)から声をかけられた。

「しっかりこれを見て。この悔しさを忘れずに頑張ったら日本一になれるから」

天理大の記念撮影を見守る早大の選手たち

早大の相良監督 
「天理大学が本当に素晴らしいラグビーをした。天理大の圧力に自分たちの力を出させてもらえなかった。この悔しさを来年以降につなげてまた頑張りたい。(コロナ禍で)いろんなところとゲームできず、選手というより我々(指導陣)の引き出しが少なかった」

早大を引っ張った早大のNo.8丸尾主将

早大の丸尾主将 
「マイボールのラインアウトに関してミスがあり、修正しなければいけなかった。ブレイクダウン、接点の部分で想定より上回られた。スカウティングではわかりきれない部分で、そこの準備が足りなかった。天理の激しい強さとテンポの速さが自分たちのディフェンスを上回った」

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