陸上・駅伝

東海大の新主将・本間敬大 自信をつけてチームを引っ張り、「強い東海」をつくる

本間は今年の箱根駅伝で7区を走った(代表撮影)

箱根駅伝優勝を目指して臨んだものの、今年は5位となった東海大学。新チームの主将を務めるのは本間敬大(3年、佐久長聖)だ。チームとして目指すもの、そして個人としての目標を聞いた。

「チームを引っ張っていかないと」芽生えた自覚

本間が主将になることは、昨年12月の新4年生内のミーティングで決まった。「みんなで話し合った結果、僕がやったほうがいいんじゃないかということになりました。両角(速)先生も納得してくれました」

いままで本間は学年リーダーなどを務めていたわけではなかった。2年生までは故障などもあり、練習はできているときも試合では結果が出ない状態が続いていた。昨年は新型コロナウイルスの影響で試合が中止や延期となったが、その分練習を積む時間が増え、試合に対する準備がしっかりできるようになったという。その結果、全日本大学駅伝、箱根駅伝と開催された2つの駅伝のメンバーにも選ばれた。その過程の中で、本間には「チームを引っ張っていかないといけない」という自覚が芽生え、最終学年でキャプテンを務めることもある程度意識していた。

本間は高校3年の冬に全国高校駅伝4区を走り区間賞。佐久長聖高校の優勝に貢献した。11月の全日本大学駅伝はその時以来の駅伝となり、「緊張した」とも言うが、しっかり準備でき、ある程度自信を持ってレースを迎えられたという。6位で受け取った襷(たすき)。5区を走り、駒澤大の酒井亮太(2年、西脇工)にかわされたが、トップとの差を1分19秒から43秒に詰める区間4位の好走だった。だがチームは準優勝に終わり、「チームの目標も優勝だったので。個人としてももうちょっと上の順位で走りたかったなという思いもありました。駅伝を走れたことはよかったけど、結果としては悔しいものになってしまいました」

箱根駅伝は一番の目標にしていた舞台だった。緊張もしたがワクワクも大きかった(撮影・朝日新聞社)

そしてキャプテンになることが決まってから迎えた箱根駅伝。本間は復路の7区を走り、区間6位だった。箱根駅伝は本間にとって一番の目標としていた舞台でもあったので、いつも以上に緊張したと振り返る。「でも、夢の舞台ということもあって、走れる喜びを感じて緊張とワクワクが入り混じったような感じでした」。走り出してすぐ、後ろから追いついてきた東洋大の西山和弥(4年、東農大二)と並走になったが、その後西山が離れて単独走に。後半に失速してしまったことが反省点といい、「新シーズンに向けての課題」と口にした。

「今までのままではだめ」危機感を持って

前キャプテンの塩澤稀夕(伊賀白鳳)は、エースとして、チームを引っ張る大きな存在感を発揮した。本間も塩澤について「チームのエースで、自然とついていけるような感じの方でした」という。「僕はでも、エースではないので。塩澤さんは練習で、背中で引っ張るタイプだったと思いますが、僕は生活面などからしっかりチームをまとめていきたいと思っています」

新チームになるにあたって、どういう方向性を目指していくべきか本間は両角監督と話をした。2019年度は「黄金世代」と呼ばれた選手たちがおり、20年度は塩澤、名取燎太(佐久長聖)、西田壮志(九州学院)の「3本柱」がいて、いずれも選手層は厚かった。「今回、強い4年生が抜けてしまったことで、他大学からは『東海大の戦力は落ちるのでは』と言われています。自分たちも、今のままでは戦えないという危機感があります。去年の取り組みのままではだめなので、練習メニューなどを変えていかないと、という話をしています」。素質のある選手はどんな取り組みでもある程度は走れてしまう。だが自分たちはそうではない、ということを自覚し、地道なトレーニングをしっかり積んでいくつもりだと話してくれた。

塩澤(左)の存在はチームにとって大きかった(去年の夏合宿にて、撮影・藤井みさ)

具体的には、昨年度は本間に限らず、チーム全体的にレースの後半で失速したという反省点があった。それを改善していくためにも早速2月の富津の合宿で3部練習を取り入れ、今までは各自で行っていたジョグを集団で行うなどして、練習の質を高めている。今は土台作りが中心となる時期のため、走り込みの量も増やした。

チームを引っ張るためにももっと自信をつけたい

キャプテンとして、東海大学をどんなチームにしていきたいですか? とたずねると、「しっかりと3大駅伝で他の大学と勝負したい」という言葉が返ってきた。「総合力で戦っていかないといけないと思います。しっかりと全員の力を合わせたいです」

個人としては「トラックにはそこまでこだわりはなくて、3大駅伝で活躍したい」と目標を語る。「3年生で駅伝を経験できたので、最終学年こそは区間賞争いをするような結果を残したいです」。それでは区間賞争いをするような選手になるうえで、今本間に足りないものとはなんだろうか。「練習で一歩引いてしまうんです。レースでも守りに入ってしまい、それなりの結果しか出せないのが自分の課題だと思います。4年生として、チームに勢いをつけられるような走りをしたいと思っています」

全員にチャンスがあるチーム。地道な取り組みで「強い東海」をつくっていく(撮影・北川直樹)

レース前には失敗したらどうしよう、と思ってしまい、プラス思考になれなかった。それを克服するためにも、たくさん練習して自信をつけていきたいという本間。「キャプテンとしてチームを支えていかないといけないので、弱気になったらみんながついてきてくれないと思うので。自信を持って引っ張っていきたいです」

今のチームはルーキーの石原翔太郎(倉敷)が全日本大学駅伝、箱根駅伝ともに区間賞を獲得するなど、下級生の活躍も目立った。本間も石原について「練習からひときわ強いし、常に先頭でゴールしようという強い気持ちが感じられます」と後輩を評価する。それは今の彼に足りない点でもある。「後輩だけど、学ぶことはたくさんあります」と謙虚だ。「下級生に主力が多いですが、チーム全体で刺激し合いながら、誰にでもチャンスがあると思ってやっていきたいと思っています。強い東海大学を作っていくためにも、しっかり時間をかけてチームの新しい方針を決めて、やり方を確立していきたいと思います」

本間は現在、3月14日の学生ハーフマラソンに向けてトレーニングを積んでいる。学生ハーフマラソンに出られないメンバーは3月21日開催の新潟ハーフマラソンに出場し、チーム全員がハーフのレースを経験するつもりだ。地に足をつけた取り組みで、新生東海大学はどんな結果を見せてくれるだろうか。

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