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特集:ジャパンラグビートップリーグ

NTTドコモのTJ・ペレナラ、開幕戦で逆転サヨナラ劇を呼んだ本物の実力

NTTドコモを引っ張るTJ・ペレナラ(撮影・全て朝日新聞社)

最後のラグビー・トップリーグ(TL)が始まりました。全国規模のリーグとして2003年に生まれて18シーズン目、来季からは発展的に新リーグへ移行します。5月23日のプレーオフ決勝まで続くリーグの主役たちを紹介します。

オールブラックスのスクラムハーフ

世界からかつてないほど一流選手が集結した最後のTL。開幕節で最も勝利に貢献した外国選手を挙げるならNTTドコモレッドハリケーンズのTJ・ペレナラ(29)だろう。キヤノンイーグルス戦で26-24の「逆転サヨナラ勝ち」へ導いた立役者となった。

ファーストスクラムの際、キヤノンの田中史朗とあいさつを交わした

ニュージーランド(NZ)代表69キャップを持つSH(スクラムハーフ)は、スーパーラグビー(SR)のハリケーンズで主力として長く活躍してきた。この日の相手キヤノンの日本代表SH田中史朗(ふみあき、36)とは旧知の間柄だった。2015年のSRで田中が所属していたNZのハイランダーズが初優勝、田中は日本選手初のSR優勝メンバーとなった。プレーオフ決勝で出番はなかったが、相手がハリケーンズだった。そのハリケーンズは翌16年に初優勝、19年に来日した際、サンウルブズの田中と対戦したペレナラは「フミとは元々何回か試合したことがあり、面識があった。今、日本語を勉強しているので、『家族はどう』、『出身はどこですか』と聞いた」と言い、日本語で話しかける場面もあった。

チーム初トライ

キヤノンとの開幕戦は8点を追う後半18分、相手ゴール前で抜け出した交代出場のロック杉下暢(28)を好フォローし、パスを受けると右中間へ飛び込みチーム初トライを挙げた。4点差にされた26分にはPKから速攻を仕掛けて、フランカー李智栄(26)の一時逆転となるトライにつなげた。ペレナラは「ペナルティーからラックを作って攻めたてるのは難しいと思ったので、あそこで思い切ってクイックタップした。そこに李選手がうまくついてきてくれたのでああいう形になった。トライが取れたのは、9番はボールの近くに常にいるのが仕事の一つなのでそれに徹しただけ」と振り返った。

自ら持ち出し突破をはかる

この後、再びキヤノンにリードを奪われたが、そこからのペネラナの心構えは一流の証しだった。「現場では、結構落ち着いてた。(ローレンス・エラスマス)キャプテンが率先して選手をゴール下に集め、明確に指示してくれたのでやりやすかった」。1点を追う最後の攻撃で、PKを得てSO川向瑛(26)の逆転サヨナラPGにつなげた。ヨハン・アッカーマンHCは「素晴らしい経験値を持っており、他のチームメートにもいい影響を与えてほしい。今日のプレーは、コントロールするべきところでしっかりコントロールしてくれていた。落ち着かせたいところで落ち着かせてくれたし、チャンスがあるところはしっかりやって、いい結果を得てくれた」と話した。

19年W杯でもハカのリーダーを務めた

ハカのリーダー

トーマス・ジュニアの愛称TJは、NZ代表としてワールドカップは優勝した15年イングランド大会と19年日本大会に出場。キックオフ前に披露する儀式「ハカ」のリーダーでもある。NZ先住民マオリの伝統の踊りについて、19年大会前に「その土地とつながり、エネルギーを得るため。感謝と敬意を示すためでもある」などと話していた。身長184cmとSHとしては大きく、スクラムにボールを投入する際はぐっと身をかがめる。バックスならどのポジションでもできる器用さがあり、19年大会ナミビア戦での芸術的なトライは話題になった。

キヤノンに逆転サヨナラ勝ちしチームメートと喜ぶ

過去のTLでNTTドコモは2014年度の11位が最高成績で2ケタ順位が続いている。開幕戦で敗れたキヤノンの沢木敬介新監督は「自分たちの自滅です。前半、4トライぐらい取れるチャンスあったし、そこでしっかりフィニッシュできなかった」と悔やんだが、一時退場者を出しながら、厳しい防御を続けられたNTTドコモの粘りの裏返しでもあった。

銀髪に染めた攻撃的なSHは、開幕戦を欠場した南アフリカの19年W杯優勝メンバーのWTBマカゾレ・マピンピ(30)とともに、勤勉だが地味で殻を破れなかったチームに変革をもたらすかもしれない。

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