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壁を壊し、新しい価値観の扉を開く 学生らの団体「Knockü」の取り組み

中学生の前でシュートを披露する車いすバスケットボール諸岡晋之助(撮影・ともに岩本修弥)

スポーツの力で「障害者」という言葉のいらない世界をつくる――。こんな目標を掲げて学生たちが立ち上げた団体「Knockü(のっきゅー)」が、神奈川県内の小、中学校で障害者スポーツの出前授業に取り組んでいる。団体名には、障害の有無などによる壁を壊し(ノックアウト)、新しい価値観の扉を開く(ノックする)との思いが込められている。

障害の有無にかかわらずスポーツを楽しむ

のっきゅーは、横浜市金沢区出身で早稲田大院博士課程に在学する岡田美優さん(26)が、2020年4月に立ち上げた。大学院でスポーツビジネスを研究する傍ら、修士課程の時には車いすバスケットボールの社会人チームでマネージャーをしていた岡田さん。車いすバスケを中心に、これまで横須賀市立大矢部中学校など4校で出前授業を開催した。

障害者スポーツに興味を持ったきっかけは、大学時代のドイツ留学にあるという。「障害の有る無しに関係なく、地域全体が車いすバスケを楽しんでいた。日本でもできるんじゃないかと思った」

車いすバスケ選手が出前授業

スポーツの楽しさを知ってもらうため、出前授業は体験と講義を合わせて展開する。実業団で活躍する選手が学校を訪問し、生徒と一緒にプレー。その後は選手が自身の経験を語る講演会を開くという仕組みだ。

2021年3月4日には、横浜市鶴見区の末吉中学校で、3年生を対象に授業をした。8クラス280人の生徒を半分に分け、計2時間で開催。講師には、車いすバスケの社会人チームで活躍する三元大輔(31)と諸岡晋之助(26)が登場した。

講演会で自身の体験を語る三元大輔

「車いすバスケを見たことがある人?」と諸岡が生徒に尋ねるが、手が上がらない。そこで、諸岡と三元は試合さながらのドリブルやシュートを披露。激しいせめぎ合いに歓声が響いた。

その後、生徒たちが車いすバスケを体験した。シュートを放った土田旅人さん(3年)は「脚が使えない分、ボールが投げにくい。想像以上に楽しかった」と笑顔だった。

体験会が終わると、三元がこれまでの人生を講演した。高2の時に小児ガンにかかり車いす生活が始まったこと、バスケを始めたきっかけなどを語った。三元は「みんなに自分の話をすることで、こっちも励みになる。次のパラでは代表選手になりたいと改めて思った」と話した。

「つながりの輪を広げたい」

のっきゅーに授業を依頼した同校の吉積由紀子教諭は「こんな道もあるんだ、ということを生徒に知ってもらえたら。今年度は行事が次々に中止になった中、楽しい授業に感謝です」と歓迎した。

今後は、車いすバスケ以外の障害者スポーツにも力を入れ、地域で出前授業を実施することを目指しているのっきゅー。岡田さんは「みんなで楽しめる障害者スポーツの魅力を知ってもらい、つながりの輪を広げていきたい」と願う。

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