学生主催エキシビション「明治×法政 ON ICE」 コロナ禍、感謝のスケート
明治大学と法政大学で引退するフィギュアスケート選手らが出演するエキシビション「明治×法政 ON ICE」が3月15日、東京都西東京市のダイドードリンコアイスアリーナで開かれた。学生主催の演技会で、今年で3回目。新型コロナウイルスの緊急事態宣言で延期していたが無観客で開催にこぎつけた。選手たちは演技できる喜びをかみしめながらプログラムを披露し、ともに過ごした仲間たち、支えてくれた家族や指導者に感謝の思いを伝えた。
延期乗り越え開催「奇跡のよう」
緊急事態宣言の中、一度延期していた演技会。一般の観客は入れず、家族やスケート部の関係者だけが見守る中で始まった。演技会の様子はYouTubeを通して配信された。選手紹介のアナウンスは、明治大2年で2018年世界選手権銀メダルの樋口新葉(明治大学/ノエビア)ら3人が務めた。明治、法政の両校の現役選手5人が演技でもり立て、12人の卒業生につないだ。最後に引退選手があいさつし、卒業後の進路を報告した。
明治大の大矢里佳はフィギュアスケート名門の愛知・中京大中京高から明治大に進学。最終学年は主将を任された。「総合主将の森千夏選手をはじめ、4年生のみんなで協力してやってきた。試合が本当に少なくなってしまった年だったが、演技会が開催できるのが奇跡のようで最後の最後にうれしい出来事です」と話した。「タイタニック」を優雅に舞い、感謝の気持ちを届けた。大好きなスケートを続けるための道を模索している。
明治大からは大矢と同じく愛知出身で全日本選手権を経験した森千夏や、北海道から上京しスケートを続けた土橋亜海、インカレを目標に練習に励んだ「リケジョ」の伊藤百花(ももか)も思いを込めて滑った。
法政大「W小林」は別々の道へ
法政大の「W小林」の愛称で知られ、ラストシーズンの全日本選手権にそろって出場した小林諒真と小林建斗は持ち前の技術と表現力で魅了した。
主将としてスケート部を引っ張ってきた小林諒は「Fix You」の音楽にのり、冒頭で4回転トーループに挑戦。その後も次々とジャンプを跳び、伸びやかなステップで見せた。卒業後は埼玉県上尾市の埼玉アイスアリーナでコーチになる。在学中、冬季限定のスケート教室でアルバイトを経験、スケートを教える楽しさを知ったのがきっかけだった。「佐藤信夫、久美子コーチのもと、伸び伸びと毎日楽しくできるスケートをさせてもらえた。コーチになったら見る楽しさだけではなくスケートをする楽しさも伝えていきたい。コーチとして全日本に戻りたいです」
小林建は法政大の先輩、服部瑛貴さん(えいき、2016年卒)に憧れて入学。今シーズンのプログラムも服部さんに振り付けてもらった。今回は映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」などで構成した「小林建斗メドレー」を披露した。在学中、全日本選手権に3度出場。羽生結弦(ANA)や宇野昌磨(トヨタ自動車)と同じグループになった昨年末のショートプログラム(SP)がとくに印象に残っている。「羽生選手は練習から次元が違っていました。宇野選手はいつ見てもうまいですね。圧倒されつつも、自分の演技に集中することができました」。卒業後は幼少期から好きだった動物の飼育員を目指し専門学校に通う。
同期では大学でスケートを再開した林夕稀や、周りから刺激を受けながら成長した阿部芙弓奈(ふゆな)も精いっぱい滑った。
本田太一や永井優香も出演
両校以外の引退選手として、国際大会で表彰台を経験した永井優香(早稲田大学)、本田太一(関西大学)、唐川常人(日本大学)、河西萌音(もね、山梨学院大学)も出演した。本田にとって明治大は3歳下の妹、真凜が通う大学でもある。4月から東京で働くといい、「これからはファンとして後輩を見守っていきたい」と語った。また。永井も「私にとっては本当に最後の演技。応援してくださるたくさんの方々に支えられながら、いま幸せな気持ちでここに立っていられます」と表情は晴れやかだった。
新型コロナウイルスの影響で異例のラストシーズンを過ごした卒業生たち。構内で顔を合わせる機会が減り、リンクの練習時間も限られた。大学同士で競うインカレも中止になった。その中で迎えたこの舞台は選手たちにとってかけがえのない時間になった、演技会後のリンクには記念撮影をする姿が見られ、楽しげなひとときが流れていた。