ラグビー

特集:ジャパンラグビートップリーグ

三菱重工相模原の細田隼都、スクラムを支え続け離れられなかった楕円球の世界

三菱重工相模原のPR細田隼都。充実の2年目を戦っている(撮影・全て朝日新聞社)

ラグビーのトップリーグ(TL)はリーグ戦の後半に入った。TL18年の歴史で、通算3季目の三菱重工相模原ダイナボアーズはここまで1勝2敗1分け。健闘といえるチームのスクラムを支えるのは、身長173cm、体重100kgの「小さなプロップ」細田隼都(はやと、25)だ。ケガもあり回り道をしたが、2年目は全試合に先発出場と充実のシーズンを送っている。

実直なプレーで派手なデビュー

今季はチームに5人いるリーダーグループの一人を任された。「今までキャプテンなどの経験がない中、一プレーヤーとしてはもちろんですが、リーダーとしてどうやってチームにいい影響を与えられるかを意識しています」。若手代表格で引っ張ることを期待される。

走力があり、骨惜しみしないフィールドプレーは持ち味


ルーキーだった昨シーズンは、リーグ2試合目で初先発の機会を得た。「それまで、カップ戦なども出場できず、いきなりキヤノン戦でデビューを飾らせてもらった」。2020年1月18日、慶應義塾大学の時から何度も戦った秩父宮ラグビー場はみぞれ交じりの天気だった。前半20分の相手陣深く、前年のワールドカップ(W杯)で名を挙げた日本代表SO田村優(32)のキックを出足鋭くチャージ、こぼれ球を自分で拾ってそのままトライを挙げた。「あれはたまたまですね。派手なプレーヤーではないと思っています。少しでも相手にプレッシャーかけることが自分の仕事と思うので、たまたま、功を奏した感じです。周りからは結構、いじられましたけど」。実直に振り返る。コロナ禍、リーグ戦は6試合で打ちきりとなったが、5試合に出場し存在感を示した。

スクラム最前線一筋

小学校から慶應義塾に通った。幼稚舎では5年生からクラブ活動が始まる。「そのタイミングで、小学校の部活動としてラグビーを始めました。特にきっかけもなく、それまで水泳や柔道をやっていましたが、そういう部活がなくて。運動神経がいいやつがいくような部活動という感じで、単純に興味です。ルールも全く知らず始めました」。その時からずっとスクラムを支えてきた。最初は最前列の中央に位置するフッカー(HO)で、大学2年から今の左プロップ(1番)を組むようになった。

FWの中でひときわ小柄だ

慶大では3年生からレギュラーになった。ラグビーの中でもプロップは専門職で、大学の一線級で活躍すればTL各チームから熱い視線を浴びる。細田にも数チームから誘いはあったが、「社会人になってガツガツとラグビーをやりたいと思わなかった」そうで、トップレベルではなく、ラグビー部がある企業への就職を目指した。ところが、うまくいかなかった。大学最後のシーズンをラグビーにかけたいと、就職留年することにした。
4年生の2017年度、慶大は関東対抗戦2位から大学日本一を目指した。細田は全国大学選手権3回戦で首を痛めてしまった。チームも次の準々決勝で大東文化大学に敗れた。「首をケガしたので、もうラグビーをすることはないなと。きっちり引退できた、という思いがありました」

引退のはずが、離れられず

大学5年目の春、就職活動を再開していたら、小学生の時から一緒にラグビーをやっていた辻雄康(たかやす=現サントリー)らを中心にラグビー部に戻ってきてほしい、と相談を受けた。「結局、ラグビーから離れられないのかなー」。同じころ、まだ、下部リーグだった三菱重工相模原から誘いがあった。楕円球(だえんきゅう)の世界に戻ることを決め、痛めた首の手術を受けた。リハビリに予想以上時間がかかり、本当の学生最後のシーズンで復帰できたのは11月の早慶戦からだった。この年、三菱重工も12季ぶりのTL復帰を決めた。

日本代表経験もあるHO安江祥光。三菱FWをまとめる

ダイナボアーズのフロントローには安江祥光(よしみつ=36)と川俣直樹(35)の日本代表を経験したベテランがいる。「プレー中にリードしてもらっているのは(HO)安江さんです。川俣さんは同じポジションで、相手とどうスクラム組んだらいいかなど教えて頂いてます。W杯(2011年)など僕よりはるかに経験されている方なので、盗めるところは今のうちに盗みたいと思っています」。若い細田にはスクラム強化など取り組む課題も多い。
トップレベルの戦いが続く中、慶大時代の仲間との再戦も楽しみの一つだ。「どっちを同期というのかわかりませんが、NTTコム戦では、大学4年生の時のキャプテン佐藤大樹(25)と戦った。開幕戦では辻とはじめて敵になりました」と笑顔がこぼれた。

チーム史刻む2勝目へ

三菱重工はTLに初昇格した2007年度、リーグ全敗に終わり1シーズンで降格した。昨季、待望の初勝利を挙げたが、リーグは不成立だった。「13年前、トップリーグに上がった時に1勝もできなかった、という話はよく耳にしていました。まずは1勝ということで、去年、NECさんに勝てた(21-14)。ラッキーパンチではないということをこの前のサニックス戦(2月27日、30-23)でみんな感じ、すごく雰囲気はよくなっている」。最後となるTLで、チーム史に刻む2勝目を目指す戦いが続く。

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