ラグビー

特集:ジャパンラグビートップリーグ

サントリー新主将の中村亮土、TL最多優勝と世界一のセンターを目指して

6度目の優勝を狙うサントリーの新主将になった中村亮土(撮影・斉藤健仁)

最後のラグビー・トップリーグ(TL)が始まりました。全国規模のリーグとして2003年に生まれて18シーズン目、来季からは発展的に新リーグへ移行します。5月23日のプレーオフ決勝まで続くリーグの主役たちを紹介します。

王座奪還へ11トライの快勝発進

開幕戦(2月21日)で75-7と三菱重工相模原ダイナボアーズに快勝したのが王座奪還を狙う、優勝5度の強豪サントリーサンゴリアスだ。そのサンゴリアスの新キャプテンに就任したのが日本代表のCTB(センター)として2019年ワールドカップ(W杯)でベスト8進出に貢献した中村亮土(りょうと、29)だ。

12番をつけて先発した中村は、武器としているタックルで存在感を示すだけでなく、試合中にニュージーランド代表88キャップのSO(スタンドオフ)ボーデン・バレット(29)、元オーストラリア代表CTBサム・ケレビ(27)と積極的にコミュニケーションを取る姿が目立った。

SOバレット(左)らとも積極的にコミュニケーション(撮影・斉藤健仁)

前半5分にはバレットが抜け出したところで、中村はすぐに反応してオフロードパスをもらい、さらに日本代表SH(スクラムハーフ)流大(28)にラストパスをつなげてトライを演出するなど、キャプテンとしてチームを引っ張りつつ、勝利に貢献した。

16、17年の世界最優秀選手に輝いているバレットの日本デビュー戦となったため、開幕戦は国内外から注目された。中村は公式戦で初めてバレットと試合に出た感想を聞かれて「ボーディー(=バレット)は10番としてしっかりゲームをコントロールしてくれるというのと、ランナーとして非常に優秀なので、プレッシャーがかかると思いますが、サポートしながらやっていきたい」と自信をのぞかせた。

ただ11トライの快勝にも1試合が終わったばかりのため、中村は「チームとしてはいいスタートが切れた。毎週、いい準備をしていい積み重ねができたらと思います」と気を引き締めた。

コロナ禍を乗り越え

実はTLは本来であれば、1月16、17日に始まる予定だった。しかし、サントリーを含めて複数のチームから新型コロナウイルスPCR検査の陽性者が出てしまい、1カ月ほど開幕が延期。サントリーも一時、練習を中断せざるを得なかった。

チームメート以外との食事を完全に遮断するなどさらにガイドラインを徹底した。また2週間の隔離期間は、選手たちはコンディションを維持することに集中しながら、選手が孤立しないようにオンライン会議システムでのミーティングを行っていたという。

中村は「難しい状況でありましたが、チームの中で対策を取って、次、同じようなことがないように準備することと、試合に向けて隔離の期間の中でもやるべきことをやって、地道なことを忍耐強くチームみんなでやっていこうと話をしていました」と振り返る。

父親の勧めで鹿児島実高からラグビーを始めて、帝京大学を経て、サントリーで7年目を迎えた中村は、昨年、社員選手からプロ選手になり、よりラグビーに集中する環境に身を置いている。そして、今年、帝京大学時代(13年度、全国大学選手権5連覇)以来のキャプテンに就任した。

帝京大で学んだ「すべての行動に意志と意味を」 サントリーCTB中村亮土
帝京大主将として5年連続大学日本一に(撮影・朝日新聞社)

中村は「日本代表でもリーダー中心に引っ張っていた」ので、11人に及ぶリーダー制を導入し、リーダー主体のチーム作りを進めている。副将のフッカー堀越康介(25)とロックのトム・サベッジ(31)の2人はもちろんのこと、プロップのセミセ・タラカイ(29)、フランカー/NO.8ツイヘンドリック(33)、NO.8ショーン・マクマーン(26)、流、新人のSH齋藤直人(早稲田大、23)、バレット、SO田村熙(27)、FB(フルバック)尾﨑晟也(25)をリーダーに指名した。

計11人のリーダー陣とチーム作り

「外国人選手もポジションごとにバランスを取って、若手、ベテランもいるし、いろんな角度から見られるメンバーを選びました。影響力のある堀越、齋藤をリーダーに置くことで若手を引っ張ってほしい。日本代表のリーダー陣に入っていろんなことを経験したことと同じで、若手にはいろんな経験をさせることが大事です」(中村)

さらに相手の脅威になるような選手を目指す(撮影・斉藤健仁)

プロ選手となり、さらにキャプテンとなったことで中村は、東京・府中にあるクラブハウスでスタッフや選手とのコミュニケーションを取る時間が以前よりも増えたという。「僕がやることはスタッフとリーダー陣をコネクションすること。ひとりではなくみんなでやることで、リーダー主導でいい方向にチームを導けていると思います」と手応えを感じている。

もちろん、中村は日本代表として23年W杯フランス大会でも活躍が期待されている選手のひとりだ。29歳となった薩摩隼人(さつまはやと)は「(2019年)W杯が終わって、もう一度、自分を見つめ直して『世界一のCTBになりたい』とスタッフと話しました。個人としては、スキルが高い選手になりたいと思い、それにプラスしてフィジカル的にも相手に脅威になる選手を目指しています」と先を見据えた。

3季ぶりの優勝へタレント軍団を引っ張る(撮影・斉藤健仁)

もちろん、その前に、TLのラストシーズン、スキッパーとしてサンゴリアスを単独最多となる6度目の優勝に導くことが目標である。中村は「結果として優勝を目指しています。その中で、みんながサンゴリアスを誇りに思えるチームを目指していきたい。優勝を目指す過程、プロセスを大事にして、いいコミュニケーションを取ってやっていきたい」と語気を強めた。

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