ボート

好発進の慶應義塾大学端艇部 ライバルを「打倒」し頂点へ

第90回早慶レガッタ勝利で喜びに湧く慶応義塾大学のクルー

2021年、慶應義塾大学端艇部が新たなスローガンとして掲げたのは「打倒」。全てのライバルを打ち倒すという強い決意が表れた言葉だ。4月の早慶レガッタでは2016年以来となる勝利を挙げ、「打倒」早稲田を成し遂げるなど、チームはすでに好調な滑り出しを見せている。

「変化」の2020年

昨シーズンは、「変化」の1年だった。全国大会での優勝から遠ざかっている状況を打破しようと、チームは革新をもたらすべく日々新たなことに挑戦してきた。集大成となる全日本大学選手権では、優勝には届かなかったものの、7種目入賞、うち2種目でメダルを獲得する成績を残し、成長の証を見せつけた。

昨年のチームについて、今年度の端艇部を主将として率いる朝日捷太(4年、慶應義塾)は、上級生の「ボートを最大限楽しもうとする姿」が印象的だったと話す。彼らの熱は周囲へと伝わり、部全体で「ボートへの欲求が刺激され、団結力が高まった」。「究極のチームスポーツ」と呼ばれ、息の合ったこぎが求められるボート競技において、この団結力というのは、昨年の結果を生み出した要因の一つだろう。

勝ちにこだわる貪欲さ

昨シーズンの好成績に続く4月の早慶レガッタ勝利は、彼らの進化を周囲に強く印象付けた。徐々に頭角を現してきている慶應をさらに勢いづかせる一戦であったといえる。目標の「日本一」に挑む彼らだが、その一番の特徴は、「とにかく全員が勝ちに貪欲」であること。「下級生をはじめ、常に真面目に、前向きに。勝つことだけに集中して、きつい練習に取り組んでいる」と朝日は話す。この姿勢こそ、一人ひとりの成長、そして端艇部の飛躍につながっているのではないだろうか。

「最強の慶應」へ、特に注目選手はこの3人

チーム全員が躍動する今年度の端艇部。その中でも、特に注目すべきは3人の選手だ。

まずはCOXを務める梅津貴大(4年、慶應志木)。このポジションに就いたのが大学からということもあり、「最初はひどかった」と、同期である朝日主将は当時を振り返った。しかしその一方で、「見えない所でコツコツと努力している」と尊敬の思いを口にする。磨き続けた舵取り技術は、早慶レガッタでも遺憾なく発揮された。チームの大きな戦力として欠かせない選手である。

主将・朝日(2列目右から3番目)を中心に精鋭揃う端艇部(梅津は1列目右、大下は2列目左、石田は2列目左から3番目)

また、U19日本代表経験者である大下陽士(3年、慶應義塾)の存在も大きい。2019年の全日本大学選手権では、男子シングルスカルで5位入賞、さらにその翌年の同大会には男子エイトで出場し、全体8位の結果に貢献した。この2年間で着実な成長を見せている。「ボート愛が強く、一番上昇志向のある選手」だといわれる大下の今後の活躍には十分期待できるだろう。

最後に、いま最も勢いのある選手として名前が挙がったのは石田新之介(3年、慶應義塾)だ。大下とともに昨年の男子エイトを支えた選手の一人であり、今年8月に開催予定だったワールドユニバーシティゲームズ(延期)の日本代表内定を勝ち取っている。日本トップレベルのエルゴ数値を誇る石田を、「とにかくパワーがずば抜けている」と朝日主将は高く評価した。全国区の大会を戦う中で、鍵を握る選手となることは間違いない。

次の舞台である全日本大学選手権まで4カ月。「『一艇ありて一人なし』を忘れず、チームの士気を高め、インカレに向けて頑張っていきたい」と話す主将の姿は頼もしかった。主将だけでなく、それぞれのポジションで役者は揃っている。「最強の慶應」が実現する日は、案外近いのかもしれない。

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